紅い海

黒い空

異常なまでに白い砂浜

人類補完計画は発動したらしい・・・


心の隙間                                                               

序章 世界再構築


僕は膝を抱えて座っていた

隣ではアスカが・・・死んだように眠っている

いや・・・もう死んでいるのかもしれない・・・

僕は目の前の光景が嫌で・・・

顔を下に向けた

昔からやって来た・・・自分の殻に閉じこもる方法・・・

そう、僕はまだ逃げているんだ・・・

けど・・・別に逃げても良いと思う・・・

誰だってこんな光景・・・嫌だと思う・・・

それに・・・こんな世界だったら・・・

 

 

逃げなくても一緒だと思った

 

 

 

僕は光を感じた

この世界で光?

太陽はまだあるのかな・・・

僕が顔を上げると・・・光が集まっていた

そして・・・その光は人の形になり

綾波になった

「綾波・・・・」

僕の目の前の綾波・・・本来なら驚くべきかもしれない・・・

けど・・・綾波の持っている・・・包み込むような、優しい雰囲気に・・・

僕は何も言えなかった

「何を望むの?」

唐突に・・・綾波が僕にそんなことを聞いてきた

「・・・」

僕は何を望むのだろう?僕の幸せ?

僕の幸せか・・・父さんに捨てられてから・・・僕はなにも幸せだとは思わなかった

叔父さんは・・・僕を邪魔者扱いした

あっちで通っていた学校でも・・・いじめられてばかりだった

けど・・・こっちに来てからは少し違った

ミサトさん・・・ミサトさんとは最後の方は・・・ぎくしゃくとした関係だったな・・・けど最初、僕と一緒に住もうと言ってくれて・・・とても嬉しかった

けど・・・彼女はもういない・・・

リツコさん・・・彼女はとても弱い人だったんだ・・・いつも冷静ぶって・・・頭脳明晰で・・・冷徹な一面も見せる・・・けど・・本当は弱い人・・・あの時見せた涙は本物だと思う・・・

けど・・・彼女ももういない・・・

加持さん・・・ミサトさんの恋人・・・だったんだろうな・・・いつもへらへらしているような気がするけど・・・けど・・・自分の信念を持ち・・・僕にもう一度EVAに乗る決意をさせた人・・・今考えると・・・お兄ちゃんって感じだったな・・・

けど・・・彼ももういない・・・

トウジにケンスケ・・・彼等は僕と友達になってくれた・・・弱虫で臆病でずるくて卑屈で・・・そんな僕と友達になってくれた

けど・・・彼等ももういない・・・

洞木さん・・・そういえば・・・トウジのお見舞いに行っていたとか聞いたような気がする・・・もしかして・・・好きなのかな?・・・そうだとしたら・・・悪いことをしたな・・・

けど・・・彼女ももういない・・・

カヲル君・・・彼はいつも笑っていた・・・そう、僕がこの手で彼を殺すときも・・・カヲル君・・・僕をはじめて・・・好きって言ってくれた人・・・彼は死すべき存在じゃなかったんだ・・・

けど・・・その彼ももういない・・・

アスカ・・・アスカも本当は凄く弱い人・・・いつも見せている活発な仕草・・・乱暴とも言える口使い・・・口よりも先に手が出る・・・けど、そう言う風な凶暴な面は・・・本当の彼女を隠す・・・殻だったんだ・・・

彼女は・・・隣にいる・・・

綾波・・・最初、無愛想で嫌われているのかと思った・・・けど違ったんだ・・・綾波は誰も嫌ったりしない・・・そう・・・感情の出し方を知らなかっただけ・・・僕らチルドレンの中で・・・おそらく一番かわいそうな子・・・彼女は自分が不幸だとは思っていない・・・そこがまた・・・かわいそうだ・・・そういや・・・笑ったときの綾波の顔・・・すごく可愛かった・・・照れている綾波も見た・・・また・・・見たいな・・・

その彼女は・・・目の前にいる・・・

父さん・・・最後まで・・・父さんとは・・・まともに話せなかったな・・・家族なんだから・・・ちゃんと話解くべきだったかな・・・

その父さんも・・・もういない

 

 

 

みんな・・・いないんだ・・・

 

 

 

「何を望むの?」

綾波が再び聞いてきた・・・僕の望みは・・・決まっていた・・・

しかし・・・綾波は何でこんな事を聞いて来るんだろう・・・

「みんなに会いたい。トウジ、ケンスケ、洞木さん、カヲル君、ミサトさん、リツコさん、加持さん、そして・・・・父さん」

「・・・それがあなたの願いなの?」

「・・・」

僕は返事の代わりに首を縦に動かした・・・

綾波は・・・目をつぶって何か考えているようだった

やがて・・・綾波の目が開いた・・・

「あなたにリリスの力をあげるわ。この力があれば、世界を再構築できる」

「・・・・」

僕には言っている意味がよく分からない

リリス?力?再構築?

色々考えていると・・・綾波から光が出てきて・・・僕に吸い込まれていったんだ・・・

その瞬間・・・僕の脳には・・・様々な情報が駆けめぐっていった・・・

ゼーレ・・・アダム・・・カヲル君・・・父さんの思い・・・

・・・僕は・・・使徒進行から今まで全ての知識が入ったようだ・・・

父さん・・・父さんも本当は弱い人だったんだね・・・

感慨に吹けていると・・・目の前に綾波がいないのに気付いた

「綾波!どこ!?」

僕は立ち上がり、綾波を捜す

そんなとき・・・綾波の声が聞こえたんだ・・・

「碇君・・・」

「綾波!」

「私はこの力がないとこれ以上存在できない」

この力・・・リリスの力のことか・・・

「だからこれまで」

「この力を返すよ!だから消えないで!」

僕は涙を流しながらそう言った・・・涙?・・・僕は涙を流しているのか・・・

「もう無理よ・・・さようなら・・・碇君・・・」

綾波はいなくなった・・・理屈とかじゃない・・・感覚で分かるんだ・・・

「うわあああああああああああああああああ!!」

僕は倒れ込んだ・・・そして・・・泣き始めた・・・

悲しかった

悲しかった

悲しかった

 

 

 

・・・ひとしきり泣いて・・・僕は残されたこの力をどうするか考えはじめた

「綾波が・・・命をとして僕にくれた力・・・無駄にするわけにはいかない・・・けど・・・僕は・・・僕がサードインパクトを起こしたようなものだ・・・僕はみんなに会う資格があるのか?いや・・それ以前に僕はこの罪の意識を背負いながら生きているのか?」

僕は目を閉じた

「なら・・・このまま死んでいった方が・・・けど・・・僕にはそれが出来ない・・・綾波が死んでまで僕にくれた力・・・無駄には出来ない」

そして・・・僕は一つの結論に至ったんだ

僕はゆっくりと目を開けた

「一度世界を再構築して・・・そして僕はいなくなれば良いんだ。みんなからも僕の記憶を消して・・・カヲル君も・・・」

僕は立ち上がった

「綾波・・・ありがとう。僕にこの力をくれて・・・僕はみんなのことをひっそり見守るよ・・・」

僕の脳裏には楽しかった思い出が・・・出て来るんだ

アスカに殴られたこと

綾波にお母さんみたいだといって照れた綾波を見たこと

トウジにアスカと喧嘩してたことを夫婦喧嘩と言ってからかわれたこと

ケンスケにエヴァに乗せてくれと頼まれたこと

トウジとケンスケとミサトさんでアスカを迎えに行ったこと

ミサトさんにからかわれたこと

リツコさんとミサトさんの漫才みたいな喧嘩を見てたこと

加持さんに父さんのことを聞いたこと

父さんに褒められたこと

次々によみがえってくる、楽しい思い出・・・

そう、僕は・・・

 

「僕は!みんなの幸せを願う!!」

世界は光に包まれた・・・・・・・・・・・・・

 

(でも・・・もし・・・僕も・・・・自分で自分を許せるんだったら・・・)

 

 

(いや、やめとこう・・・)

 

 

それは、シンジの最後の迷いだったのだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は自分の部屋で目が覚めた

「あたし・・・どうしたんだっけ?」

私は上体を起こした。頭を振って頭をしゃきっとさせようとするが、どうもぼんやりしている

「私は・・・えと・・・ゼーレが攻めてきて・・・レイとカヲルと・・・撃退・・・したのよね!」

私は昨日のことを思いだした

「うん!そうだ!ゼーレの白いエヴァを全て撃破!私たちネルフの勝利!」

私は再び寝転がった。けど私の中で釈然としない想いが広がっていく

「・・・本当にそうだった?」

 

 

私は自分の部屋で目が覚めた

「・・・・・」

私は低血圧である。起きるといつもぼんやりしているの

ガラッ

いきなり私の部屋のドアが開いた

「やあ、レイ。起きたかい?」

入ってきたのは・・・銀髪で紅い目の少年だった

「・・・あなた・・・誰?」

「相変わらずの寝ぼけようだね。僕は碇カヲル。君、碇レイの実兄」

「・・・・・」

そう言われても・・・まだぼんやりしている・・・記憶がはっきりしない・・・

「まだ寝ぼけてるのかい?両親は碇ゲンドウと碇ユイ。それぞれネルフの総司令と技術部部長補佐」

「・・・・」

碇ユイ・・・碇ゲンドウ・・・徐々に頭がはっきりしてくる

「隣には惣流親子が住んでいる。そして昨日僕たちは・・・」

「・・・ゼーレの侵略行為を撃退した・・・」

惣流・・・アスカ・・・私の親友・・・そう、私はお兄ちゃんとアスカと一緒にゼーレエヴァを撃破したの

「そこまで思いだせば充分。さあ、顔でも洗っておいで」

私はお兄ちゃんの指示で洗面所へ向かった

お兄ちゃんは朝食の準備をしに、食堂に向かう

私は鏡に映った、私の顔を見ながら少し考える

「・・・何かが・・・違う・・・いえ、足りないのかしら?」

 

 

あたしとリツコはまだネルフで処理に負われていた

「はあ〜。めんどくさいわね〜」

「仕方ないでしょ」

あたしが弱音を吐くとリツコは冷たく言い放つ。何でも言い合えるっていうのも親友の証かしら?

「何か朝から頭の中がすっきりしないって言うのに・・・」

「何?また二日酔い?」

「そんなんじゃないわよ!だいたいお酒を飲む暇なんて無かったじゃない!」

「冗談よ。で、すっきりしない事って?」

リツコが冗談を言うのは珍しい・・・ってそんなことを感心するんじゃなくて

「う〜んと、説明しにくいんだけど・・・あの・・・なんていうかな〜。心に穴が空いてるような感じなのよ」

あたしは曖昧な説明しか言えない

「・・・・」

リツコは黙ってそれを聞く

「あのなんていうかさ。心の隙間に入るピースが足りないって言うかさ・・・」

こんな説明だったら、リツコに即座に返されてしまうのよね〜「なに言ってんのよ!」って

けど・・・リツコが口にしたのはあたしの予想を大きく裏切るものだった

「いつもなら・・・何を馬鹿なことを・・・とか言ってるんでしょうけど。奇遇ねミサト。私もいまそんな気持ちよ」

「リツコも?」

「そうよ。何かが違うのよね〜」

そういってリツコは天を仰いだ

「昨日、ゼーレが攻めてきて・・・零号機を操るファーストチルドレン碇レイ、弐号機を操るセカンドチルドレン惣流・アスカ・ラングレー、そして初号機を操るサードチルドレン碇カヲルによって撃退・・・」

「その事実は何も変わりない・・・けど何かが違うような気がする」

「けどそれが何かは分からない」

「嫌な気持ちだわ・・・」

あたしとリツコは同時にため息を付いた

ホント、変なとこで親友しているわね

 

 

 

 

自分は何か忘れているのではないか?この違和感はネルフ内の誰もが思っていた・・・

 

こうして碇シンジは人々の記憶から抹消された・・・たった1人の男を除いて・・・

 


後書き

ども!シモンです

二本目の連載・・・何とかとぎれないように頑張りたいと思いますが・・・やっぱりとぎれるんでしょうね。

琥珀さん、そしてコレを読んでいるかもしれない読者の皆さん、ど〜か末永く見守ってやって下さい


琥珀の腐れコメント

あああああああああっ!!

ホントに、ホントに投稿してくださったんですねぇ〜?

もう、琥珀カンゲキーーーーー☆

おねだりしたかいがありましたわ(はぁと)

感想としては、シンジくーんカムバァックーーといったところでしょうか(笑)

せつないです。

自分がいなくなればすべていいんだと思い、願ったシンジ君・・・・・・

なんというか、胸がキューンとなります。

優しすぎるが故の選択。

それはあまりにも悲しい生きかたではないでしょうか?

たった1人の男って誰だ?可能性としては・・・・・・

はっ!妙な詮索はやめて、次回に期待しよう<たった1人の男の正体

明日もキュン出来ますよーに♪(核爆)


モドル   ツヅク