私とアスカは女子更衣室から出た

私とレイは女子更衣室から出た

僕は男子更衣室から出た

 

・・・そこには、加持さんがいた・・・

 


心の隙間                                                        

第三話 復活する記憶1


「よう」

俺は軽く手を挙げて声をかけた

「加持さん・・・」

「いったいどうしたんだ?今日は?」

アスカたちは顔を見合わせる

「・・・レイ・・・何かが流れ込んできた?」

「・・・うん・・・」

「僕もだよ・・・」

アスカたちは話し合いを始めた。流れ込んできたというのは・・・どういうことなんだろうか?

「なにやら、複雑そうだな・・・おごるから食堂でも行かないか?そこでゆっくり話を聞かせてくれ」

アスカたちは頷く。そして俺たちは食堂に向かった

いつものアスカなら、こういうことにはすごくはしゃぎながら来るはずなんだが・・・・やはりさっきのEVAの事故が効いてるんだろう。心持ちうつむきながら、とぼとぼと歩いてきている

レイちゃんは今までは付いてきたことも無かったが・・・まあ、こちらも静かだ

カヲル君も静かだ・・・彼は彼の雰囲気には合わない、難しそうな顔をしている

・・・よっぽど何かショッキングな出来事があったんだろうか?

 

 

「さて・・・何があったんだ?」

俺は単刀直入に聞いてみた

アスカはオレンジジュース、レイちゃんはアップルジュース、カヲル君はトマトジュースを頼んだ。彼らの目の前には今はそれがある

俺の問いかけに・・・アスカがゆっくりと答えた

「・・・私の記憶にない・・・いえ、過去の出来事が少し変えられた形で私の頭の中にイメージとして流れてきたんです」

「・・・それはどういうことだ?」

俺にはいまいちよく理解できなかった

「例えば・・・私がここ・・・日本に初めて来たときのこと・・・覚えてます?加持さん?」

「ああ・・・第六使徒のやつだな・・・」

「あの時・・・迎えに来たのはミサト、鈴原、相田、カヲルのはずなのに、カヲルがいなくて替わりに黒髪の顔も分からないやつがいたのよ」

「・・・・他には?」

静かにアスカに聞く

「第七使徒の時・・・私とユニゾンしていたのはカヲル、じゃなくてその黒髪のやつとか・・・第八使徒戦でケーブルが切られたとき、助けてくれたのがカヲルじゃなくて、やっぱり黒髪のやつなの・・」

「私も・・・お兄ちゃんが、多分アスカの言っている人と同じ人とすり替わっているの・・・」

「・・・・」

間違いなく、シンジ君の記憶だろう・・・しかし、何故EVAから・・・?

「・・・僕は違いましたね」

「えっ?」

「・・・お兄ちゃん・・・」

「どういう風に違ったんだ?」

カヲル君は少し、考えたような表情になってそしてゆっくりと答えた

「アスカちゃんやレイは過去にあった出来事が少し変えられた形で・・・と言いましたが、ぼくの場合は完全に記憶に無い出来事が頭の中に流れ込んできたんです」

「ほう・・・どんなのが流れ込んできたんだい?」

「・・・最初はどこかの湖にいましたね・・・そこで僕は歌を口ずさんでいる・・・そこにはもう一人・・・多分、アスカちゃんやレイの言っていた人がいるんですよ」

「・・・」

「次は・・・僕とその人が一緒にお風呂に入ってて・・・一緒の部屋で寝てて・・・」

「・・・・」

「ここで場面が変わったんです。穴を落ちてて・・・僕がA.Tフィールドを使えて・・・さっきの彼は初号機に乗ってて・・・一緒にヘブンズドアーの中に入ったんですよ。そこで僕は握りつぶされました。」

「・・・後は?」

「ここで僕に流れ込んできたイメージは終わりです」

「そうか・・・」

俺は目を閉じた。外界からの情報をシャットダウンして自分の思考に入り込む

アスカとレイちゃんが言ってるのは多分、シンジ君のことだろう・・・

彼女たちは過去にあった出来事が変えられていると言っているが・・・俺にとってはそっちの方が真なる記憶だ・・・

カヲル君の言っていた少年・・・これも多分シンジ君だと思う・・・

そしてカヲル君がA.Tフィールドを使ったって言うことは・・・・彼は使徒だ

いや・・・使徒だったと言うべきかもしれない・・・

しかし・・・使徒と一緒に風呂に入ったり、一緒に寝たりしたのか?シンジ君は・・・

まあ、その辺はいいとして・・・何故、EVAからの精神汚染で・・・いや、精神汚染じゃなかったな・・・まあ、今はこれでいいか・・・真の記憶が流れ込んできたか?

・・・俺が考えつく可能性としては・・・

一つは・・・EVAからの精神汚染がきっかけで眠っていた真の記憶が思い出された場合と・・・

もう一つは・・・EVAのコアの中にいるのが真の記憶を持っている人物ってことだ・・・

「・・・さん・・・」

そちらの可能性が高いか・・・流れ込んでくると言っているから後者か?

「・・・持さん・・・」

いや・・・ただ流れ込んでいると勘違いしているという可能性もあるし・・・

「・・・加持さん・・・」

俺がEVAに乗れるわけでは無いしな・・・

「加持さん!!」

俺は目を開けた。アスカたちが俺の方を見ている

「どうしたんですか?さっきからずっと目をつぶっているし・・・呼んでも返事しないし・・・」

カヲル君が聞いてくる

「いや、すまない・・・考え事をしていたものでね・・・」

俺は頭をかいた

「何を考えていたんですか?」

「・・・さっきの話のことだよ」

「・・・何か心当たりがあるんですか?」

カヲル君は心持ち静かに、それでいてはっきりとした声で聞いてきた

「・・・う〜ん・・・まあ・・・俺の知っていることを全部話してやるよ」

話していいものかどうか・・・迷ったが、俺は話すことにした。何故だか知らないが、この世界にはゼーレはもういない

だったら、別に話しても危険は無いだろうと踏んだんだ

碇指令が全ての原因と言う可能性もあるが・・・それも低いと思う

碇指令がこんなことをするメリットが無いからだ。少なくとも俺には思いつかない

俺は自分の勘を信じて、話すことにしたんだ

「なになに?何を知っているの?」

「・・・教えて・・・」

「聞かせてください」

アスカたちは一斉に身を乗り出して俺の方に寄る。みんな、気になっているんだろう

「・・・最初に言っておくが・・・俺が今から言うことはすべて真実だ。俺は嘘は言わない。だが信じてくれとは言わない。信じるかどうかは自分で決めるんだ。いいか?」

アスカたちは一斉に頷いた

俺はそれを確認してゆっくりと話し始めた

「まず・・・どこから話すかな・・・」

「結論、そして過程でどうでしょうか?」

「・・・それもいいか・・・」

カヲル君の意見を俺は聞き受けた

そういや・・・煙草があったな・・・

俺は懐から煙草とライターを出し、煙草に火をつけた

白い煙が俺の口から出ていく

「結論か・・・君達の頭の中に流れ込んできたイメージは・・・真の記憶だ」

「真の記憶?」

「どういうことですか?」

不思議そうな顔をしている・・・いや、よく分からない顔と言った方が適切かもしれないな・・・

「真の記憶が流れ込んできたというなら、今の僕らのこの記憶は何なんですか?」

カヲル君がさらに身を乗り出して一気に質問してきた

「おいおい、ちょっと落ち着いてくれ。俺だって全部が分かっているわけではないんだから・・・全て推論だ」

「・・・・」

カヲル君は身を引っ込めた

俺はそれを確認して話を続けることにした

「君達に流れ込んできたイメージ・・・それが俺の中の記憶として残っているんだよ」

「?意味が分かりませんが・・・」

「例えば・・・アスカを迎えに来たのは俺の記憶では葛城、鈴原君、相田君、そして碇シンジ君だ」

「・・・誰なの?その碇シンジって?」

「確か、発令所でも葛城さんにそう言ってましたね・・・」

「・・・碇シンジ君か・・・彼が多分、鍵なんだろうな・・・」

俺は天井を見上げる。白い、何の変哲もない天井だ

「加持さん?」

「ん、ああ、すまない。話を続けるか」

俺は椅子に座り直して話を進めていく

「シンジ君はサードチルドレン、初号機のパイロット、葛城とアスカと同居・・・」

「ちょっと待った!何で私がミサトや、そのシンジってやつと同居してんのよ!」

いきなりのアスカの大声。俺は特に驚きもしない

「・・・ユニゾンを君達の記憶ではアスカとカヲル君がしたことになっているようだが・・・俺の記憶ではアスカとシンジ君がしていた。その時に、ユニゾンの作戦上、同居をしてそのまま成り行きみたいな感じでな・・・」

「・・・私が・・・男と同居・・・」

ちょっとショック気味のアスカ

「話を続けるぞ・・・名字から察していると思うが、シンジ君は碇指令の子供・・・ついでに言うなら家事全般をこなす、すごい少年だ・・・」

「まあ、葛城さんとアスカちゃんが同居しているんだからねえ・・・」

「うるさい!」

鋭い目でアスカはカヲル君を黙らせた。大したものだ・・・

「加持さん・・・」

珍しくレイちゃんが口を開いた

「・・・私は・・・あなたの記憶の中でも『碇レイ』なんですか?」

「・・・いや、俺の記憶の中では君は『碇レイ』では無くて、『綾波レイ』だった」

「綾波・・・」

レイちゃんは少し顔をうつむいて、その名前をかみしめているようであった

・・・もしかして・・・

「思い出しかけているのか?レイちゃん?」

「・・・何となく・・・まだ・・・頭に霞がかかったような状態です・・・」

思い出しかけている!・・・ここは綾波レイに関することで思い出させてやる

「・・・綾波レイ・・・マルドゥック機関の選んだファーストチルドレン。その経歴は抹消済み」

「・・・綾波・・・レイ・・・」

「え〜と・・・後は・・・」

困ったな・・・俺、レイちゃんのこと全然知らないんだ・・・知っていることと言えば・・・性格・・・か・・・

「性格はきわめて冷静。しかし、無感情、無関心、無口という性格で・・・・ある人に言わせれば、人形みたいだと・・・」

「・・・人形・・・」

アスカが人形という単語に反応した。だが、今はレイちゃんが先決だ。他にレイちゃんが反応しそうな単語・・・

「・・・碇シンジ・・・」

シンジ君・・・君しかいないじゃないか・・・

「・・・碇シンジ・・・」

少し、反応があった・・・

「思い出せ!今までの記憶を!そしてシンジ君のことを!」

「・・・今までの記憶・・・シンジ・・・碇・・・・シンジ・・・」

「笑顔のすてきな男の子だ。君が一緒に八島作戦を実行したのもその子だ!」

「・・・笑顔・・・」

笑顔と言う単語に何故か反応した・・・何でだろう?

ちなみにアスカは何かを考え込んでいるようで、何も言わない

カヲル君もこの雰囲気の中で何か言うことは場違いだと思っているのか、何も言わない

レイちゃんは頭を抱え、俯せになって考え始めた

「・・・笑顔・・・笑うこと・・・」

 

 

「・・・笑顔・・・笑うこと・・・」

頭が痛い・・・私の頭の中に・・・少しずつ・・・イメージが・・・流れ込んでくる・・・いえ・・・思い出しているのね・・・

・・・八島作戦・・・・が終わった・・・時・・・私は・・・零号機の・・・エントリープラグの中に・・・いた

熱くて・・・気絶・・・していて・・・そしたら・・・誰かが・・・プラグの中に・・・入って・・・来た・・・

その人の顔は・・・思い出せない・・・もう少しなのに・・・

私は少しずつ、少しずつ、思い出していく・・・

その人は・・・・エントリー・・・プラグの中に入って・・・泣き・・・出した・・・

何故・・・泣いて・・・いるの?・・・・

ごめん・・・なさい・・・こんな時・・・どういう顔をすればいいか・・・分からないの・・・

私は・・・この言葉を・・・しゃべったんだわ・・・

その人は・・・私の方を見た・・・泣き笑いの・・・表情で・・・

・・・笑えば・・・いいと思うよ・・・・

声が聞こえた・・・初めて・・・聞こえた・・・

それと同時に色んな言葉が私の頭の中に流れ込んでくる

『笑えばいいと思うよ』

『自分には・・・何も無いなんて・・・悲しいこと言うなよ・・・別れ際に・・・さよならなんて寂しいこと言うなよ・・・』

『お母さんって感じがする・・・』

『父さんってどんな人?』

『ありがとう・・・助けてくれて・・・』

『綾波』

『あやなみ』

『綾波』

『綾波・・・』

『綾波!』

『綾波』

「・・・この声は・・・碇君!」

私は全てを思い出した。碇君のことも、自分のことも全て・・・

 

 

「・・・この声は・・・碇君!」

いきなりレイちゃんが叫んだ

なんか、急に頭を押さえて俯せになったと思ったら・・・急に大声出したからな・・・普段の彼女を知っているだけに、これには驚いた

アスカちゃんも、カヲル君も目を丸くしている

「・・・加持さん・・・私・・・全て思い出しました・・・」

それでいきなり俺に向かってそんなことを言うもんだから・・・俺はさらに驚いた

「レイ・・・思い出したって・・・何を何を思い出したんだい?」

「・・・フィフス・・・」

「フィフス?」

「・・・あなたのことよ・・・」

「・・・・どういうことだい?」

・・・なんか・・・これは喧嘩しているのか?・・・ちょっと違うような気がするが・・・

とりあえず、険悪なムードだ

「ちょっと!レイ!何を思い出したのよ!」

「弐号機パイロット・・・」

「はあ?なんて呼び方すんのよ!あんたは!」

「・・・あなたは私のことをファーストと呼んでいた・・・」

「・・・私はそんなこと、呼んだ覚えはないわよ・・・」

今度はアスカとレイちゃんの喧嘩か?

「・・・付いてきなさい・・・」

レイちゃんはそう言ってどこかに歩き出した・・・

どこに行こうというのだろう?

だが・・・俺はここにいてもしょうがないので付いていく

「・・・分かった・・・」

カヲル君は一瞬考えた後、付いてきた

「ちょっと!待ちなさいよ!」

アスカもみんなが来ているようなので来た

「どこに行こうというのよ!」

アスカがレイちゃんに聞く

「・・・あなた達の記憶が思い出せる場所へ・・・」

その声は静かだったが、俺たちの耳にはしっかり聞こえた


後書き

はう・・・短い・・・

みなさん、すいません。短めです

題名が今回一番迷った。レイが思い出すことを題名に素直に書いていいものかどうか・・・そんなことを迷ってました


琥珀のコメント

・・・・・・・・・シンジ君のことを最初に思い出すの、カヲル君って言ったじゃないかぁっ!!←(言ってない)

これは、予想外の展開だーーーーーー

てっきり、カヲル君だと思っていたのにぃ(泣)

次は絶対カヲル君だ!カヲル君をよろしくです(はぁと)

ううう、カヲル君・・・・・・出遅れちゃいけないよぉ(爆)

思い出したとたん、カヲル君に険悪む〜どな綾波さん。

「フィフス」呼ばわりしているねぇ。

少し前までは「お兄ちゃん」だったのに。

アスカにも、そうだし・・・・・・

くっ、引き際も見事です。

気になって気になって・・・・・・いったいレイちゃんはどこに行くんだぁ〜〜!!


モドル   ツヅク