「シンジ君」

「碇君…」

カヲル君と綾波が僕の心配をしてくれている。

確かに今からやることは心配されるようなことではあるけど

でも、僕は決めたんだ、僕自身の意思で僕が決めたんだ。

前に加持さんが言ってたんだ

「シンジ君、俺はここで水をまくことしか出来ない、

だが君には君にしかできない君にならできることがあるはずだ、

誰も君に強要はしない

自分で考え、自分できめろ。自分が今なにをすべきなのか、

ま、後悔のないようにな」

って、だから僕は後悔しないように僕にしかできない僕になら出来ることをするんだ。

皆を救うために僕がやる…

そう、第18番目の使徒になった僕になら出来ることを…

 

 

 


あの時をもう一度

 

第0話 「悠久の時を超えて、今始まりの時へ」


 

 

全ての人がLCLに還った時、僕はその人たちの意識に触れた。

父さんの意識にも触れたんだ、父さん、母さんに会いたかったんだね。

それに、僕のことも考えてくれてた。

うれしかった。

でも、許されないことをしたのは間違いないんだ。

たとえ母さんに会いたいからってサードインパクトを起こすなんて。

それは人類を滅ぼすことと変わりはない。

あと他にもいろいろなことが解った。

セカンドインパクトのこと

エヴァのこと

使徒のこと

ゼ―レのこと

などなど

そして、この世界は終ったことを。

もう、他人が他人の存在を今一度望んでもだめなんだ。

だって人の心は寂しすぎるから

この感覚、一つになるという感覚。この感覚を一度味わったから、

一つになるということが寂しさを忘れさせてくれるから。

元の世界には戻りたくないと願う。

でも、僕はこんな世界は嫌なんだ、傷つけられてもいい

一緒に笑いたいんだ。一緒に暮らしたいんだ

だけど、僕が他人の存在を望んでも、僕だけが

その中からいなくなるだけのこと

これからの世界を僕一人で生きていかなければいけないということ

それはとても寂しいこと

そんなことは僕も嫌だ、だから…

 

今、カヲル君と、綾波が僕の前にいる。

「君は何を願うんだい?」

「何を願うの」

僕の願い…それは、もう一度はじめからやり直す事

今がだめなら、過去に戻ればいい。

かなりの時間を使い、導いたのはこの答えだった。

「過去に戻って、もう一度やりなおすんだ。サードインパクトなんか起こさせない。

ここには、こんな僕にも優しくしてくれた人がいたんだ。だから、みんなを助けるんだ

僕の願いは、過去に帰ること、最初に第三新東京市に来たときに」

僕の答えにカヲル君と綾波が暗い顔をして俯いた。

「どうしたの、僕の願いかなえてくれないの。どうして?」

………

……

長い沈黙の後、カヲル君が下げていた顔を上げ言った。

「シンジ君、僕も君の願いをかなえてあげたいよ。

サードインパクトの依代(よりしろ)となった者の願い。

それがこの世界のこれからを決める事が出来るんだ。

たとえば、シンジ君が他人を望んだなら今一度ATフィールドが君達の

心をわかつだろう。でも、シンジ君は分かっているんだね。

一つとなったリリンが今一度分かれることは難しい

寂しさを無くした者が再び寂しさを覚えることは、

その人を壊してしまうということを。

やさしいね、シンジ君はだからそれを望まない。

好意に値するよ。

しかしシンジ君、願いはこれからのことに対してだけなんだ。

サードインパクトより前に関することは願えない、

だから、過去に、時間を遡ることはできないんだ

ごめん、シンジ君」

再び俯くカヲル君。その姿はとても悲しそうだった。

それを見て僕はカヲル君が本当にすまなそうにしているのが良く分かった。

これ以上カヲル君を僕は悲しませたくなかった

「いいよ、カヲル君。なんかカヲル君にはいつも無理ばっかりいってるね。

でも、カヲル君、これから先に関してはどんなことを願っても大丈夫なんだよね」

「そうだよ、シンジ君。これから先の事に関してならどんなことでも」

そう言いながら僕はある決心をしていた。

みんなの意識に触れた時に分かったことがある、それは

「さっき、といってもここに時間の概念なんか在るか分からないけれど、

みんなの意識に触れた時知ったんだけど。

この世界…いや、この宇宙は可能性の数だけ存在する、ということを。

たとえば、僕が女の子である世界、綾波が元気な子という世界、アスカがおとなしい子という世界

そんな世界もこの宇宙には存在するはずなんだ。

そこには僕達と同じ姿で同じことが起こっている世界もあると思うんだ。

だから、僕はその世界を探す、そして、今度はその世界ではサードインパクトを起こさせない

たとえ、その世界が僕の世界でなくても、そこには綾波やアスカやトウジやケンスケもいるはずだから」

「い、碇君!!それは…」

綾波とは思えないほどの大きさの声で言った。

こんな声もだせるんだ、と僕はこんな時だけど考えていた。

「シ、シンジ君、例えそんな世界があったとしても、その可能性がどれぐらいの確率か

わかっているのかい、もしかしたらその世界がないという可能性もあるんだよ。

それに、そこまで行くのには膨大なんて言葉が儚いほどの時間がかかるんだよ。

たとえ願いをかなえるといっても僕らの力じゃ光速が限度だ。

そのためには君は肉体を捨てなければいけなくなる。

人の体はそんなに生きてはいけないからね。

君の精神もその道のりの長さにおかしくなるかもしれない。

それがわかって言っているのかい、シンジ君」

カヲル君は少し怒っている感じで言った。当然だね。

そう、カヲル君の言う通りなんだ、これは賭けなんだ。

しかし、可能性が在るだけ存在するのなら何時か、賭けに勝てることは分かっている。

だから、僕はやる。

「わかっているよ、カヲル君。

それに僕も使徒だからね大丈夫だよ。まあ、体は仕方ないけどね」

「い、碇君、そ、そんな」

また、綾波が驚いている、不謹慎だけど楽しい。

「うん、第18使徒リリンは群体だったけど、サードインパクトにより完全に一つとなった。

そして、僕はその全ての人と触れ合ったんだ、そしてその全てを受け入れた

すべての人の心を手に入れた僕は、一人の人間でありながら全ての人となった、

それはリリンと同じなんだ、僕とリリンの違いはATフィールドを持っているか、持っていないか…

ともう一つあるんだけど説明が難しいんだ。」

そう、僕は使徒になった。

しかもちょっと特殊だ、それは追々説明するとして。

「どうして、シンジ君はそこまでしてこの世界を

救いたいんだい。君を傷つけてきたこの世界を」

「そうだね、たくさん傷つけられたよ、でも僕はこの世界が、そしてそこに住んでいる人たちが好きなんだ

わかってくれるかな、」

「そこまで言うなら仕方ないね。」

「いや」

一瞬僕は呆けてしまった。

「あ、綾波どうして?」

寂しい…だから、いや

ぼそっと言う綾波、とっても恥ずかしそうだ。

その答えに僕はかなり大声で笑った、

「そ、そんなことか。だったら一緒においでよ、綾波もカヲル君もたぶん君達はこの空間から出られないだろうから

僕の中に入っておいで、そして心だけでも一緒に行こうよ」

「い、碇君、いいの?」

「そんなこと出来るのかい?それなら僕もついて行きたいね」

カヲル君でも驚いている、まあ仕方ないよね。

これは僕の特権だからね。

「いいよ、でもこれから僕の体も無くなるからね。ちょっと不思議な感じになると思うよ

僕の中にいるんじゃなくて、僕と同一でありながらしかし違う存在って感じかな?

行った世界でそこの碇シンジの中に入ればその頭の中に三人いるって感じになると思うよ。」

あ、余計なこと言ってしまった。

「シンジ君、その時そこのシンジ君はどうなるの」

やっぱりねカヲル君なら聞いてくると思った。

「消えてもらうよ、今の僕なら造作も無いことだから、でも仕方ないんだ

そうしなければ、もう一人僕と同じような人が出来ることになるから

こんな役目は僕一人で十分だから…仕方ないですまされることではないけど」

「君の気持ちはわかったよ」

「碇君…」

さあ、もう行こうか。

あ、忘れてた、母さんどうしようか?

一人じゃ寂しいだろうからな。

眠らせてから心をつれて行って、あっちの初号機のコアに入れよう、

同じ人間なら同化できるだろうから。

「さあ、行こうか。綾波、カヲル君。僕の肉体を捨てる、そして世界を探しに

行くには君達の力が必要だ。お願いするよ」

「君が願うのはこれだね」

「これを願うのね」

「ああ」

そう言うとすぐに

僕の体を形成する物質がなくなり僕は心だけの存在となった

「願いはこの世界と同じ世界へ行くこと、その願いをかなえてくれ

綾波、カヲル君、手を…」

今の僕に目があるかどうかはわからないが

宇宙が見える、先ほどまでいた空間ではない

僕の下に地球がそして目の前には初号機のコア

僕はコアに触れるようにイメージした、そして母さんを眠りにつかせ

引きずり出す。

「ちょっとの間眠っていてね、母さん」

そういって僕の意識の中に母さんの心を入れる

―――碇君

―――シンジ君、

二つの心が僕を心配してくれている

「さあ、行こうか。今一度この世界を救いに」

そして僕の心…精神体は光の速さで飛んで行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………………………………………

……………………………………………………

…………………………………………

……………………………

どれだけ、どれだけ、どれだけ、どれだけ、この時を、この場所を、この世界を

待ち望んだことだろう、

あれから、どれほどの時間が経ったのだろう。

一瞬でもあり、永遠でもあったのかもしれない

ただひたすらに、ここを探していた。

だけど、寂しくなかった

一人だったら耐えられなかったかもしれないけれど

だけど、レイがいた、カヲル君がいた、

眠っていたけど母さんもいた。

そして、僕は今ここにいる………

 

 

第三新東京市についたばかりの碇シンジの中に…

 

 

 

続く

 


琥珀の破壊されたコメント

わ〜お!!

なんと、なんと素晴らしい小説なのでしょう!!

逆行物っぽい設定でありながら、ただの逆行物ではない・・・・・・

違う世界、すなわちパラレルワールドってやつですね☆

私が考えもしなかった深い設定。

まさしく、脱帽です。

あああ、続きがとても気になりますぅ〜

はやく続きをっ(爆)


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