あの時をもう一度

 

第二話 「サキエル殲滅」


 

エントリープラグ内がLCLで満たされていく

シンジはこれに少しも驚かなかった。

「彼、驚かないわね」

プラグ内のシンジを見ながらリツコが言う。

「そうね」

他に言葉を持たないのか、リツコの問いかけに簡潔に答えるミサト

シンジが驚かない理由は二つある。

一つは前の世界でエヴァに乗っていたから。

もう一つは今やることがあるため、LCLが入ってきたことに気がついていないだけである。

そのやる事とは、碇ユイを初号機、そしてコアの中にいるこの世界の碇ユイとを同化させること。

それに神経を集中しているため、周りの情報が入ってこないのであった。

―――母さん、もうしばらく待っていてね。サキエルを倒したら取り出してあげるから。

そう心の中で言い、自分の中に眠っていたユイの心、いや魂をコアに移す。

 

そのころ、第一発令所では。

「主電源接続」

「全回路動力伝達」

「第2次コンタクト開始」

「A10神経接続異常なし」

「初期コンタクト全て異常なし」

「双方向回線開きます」

「え!」

「どうしたの、マヤ続けなさい」

「はい…あ、あの…シンクロ率 400%…と」

シンクロ率400%の意味を知っている人たちはそれに慌てた。

「これではシナリオが」

「碇、(もう少し自分の息子を心配できんのか)」

「また、繰り返すというの」

それぞれ思い思いの事を考えている時、

400%の意味を知らないミサトは飄々として言った。

「マ〜ヤちゃん、「と」ってな〜に」

「その…シンクロ率400%と0%です。」

しばらく呆然としていたリツコが自分を取り戻して言った。

「マヤ、どう言うこと」

「は、はい先輩、シンクロ率が二つ存在するんです。」

「なんですって、詳しく報告しなさい」

「まるで二つの意識が同時にシンクロしているような状態なんです。」

「いったいどういうことなのかしら。マヤ!データ取っといて」

リツコがそう言った瞬間

「まだですか?」

シンジの声が発令所に響き渡る。

「せ、先輩、シンクロ率400%の方、消失しました。」

「なんですって」

「シンクロ率0の方上昇して行きます、10…20…30…40…50…60…まだ上昇して行きます」

その後もシンクロ率は上昇していった。

「シ、シンクロ率100%で安定しました。ハーモニクス全て正常値、暴走ありません」

「訓練もなしに、初搭乗でいきなり100%……やるわね彼」

その報告を聞いたミサトがいった。

「そんな、ありえないわ」

呆然としているリツコ、しかしどこか嬉しそうな顔をしている。

(良い実験材料が手に入ったわ。後で調べてあげるわよ、碇シンジ君)

嬉しい原因はこれである。

「早くしましょう、相手は待っていてくれないんですから」

再び発令所に響きわたるシンジの声。

その顔、そして声には何の感情も見出すことはできない。

良く言えば冷静、悪く言えば無表情。それが今の彼の顔だった。

たとえ今、目の前で世界が終ったとしても、その表情を変えることは出来ないだろう。

「かまいませんね」

発令所の最上段にいるゲンドウへとミサトが問い掛ける。

「かまわん、使徒を倒さん限りわれわれに未来はない」

「碇、本当にこれで良いんだな」

ゲンドウの言葉に冬月が問う。

それには答えずゲンドウは口元をニヤリとゆがめた。

「発進」

射出孔に移された初号機がリフトに乗って地上へと送られる。

(シンジ君、死なないでよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあて、どうしようかな」

エントリープラグ内のシンジの呟き。

「う〜ん」

目の前にいるのは第三使徒サキエル

そのわりにはのほほ〜んとしているシンジ。

「何言ってるのシンジ君?」

そのシンジの独り言に気がついたミサトはそう言った。

「いえ」

「いいわね」

「はい」

「最終安全装置解除、エヴァンゲリオン初号機リフトオフ」

肩付近にある安全装置が外される。

「シンジ君、今は歩くことだけ考えて。貴方のシンクロ率なら十分できるわ」

そうリツコが言った直後シンジから通信が入る

「そうですか」

シンジの通信が終ったその刹那マヤから報告が入る。

「パイロットとの連絡が取れません」

「なんですって!」

リツコが叫ぶ。

「内部モニター切られました」

メガネを掛けた人が言う。

「どういうこと!」

今度はミサトが叫ぶ。

「「むこう側から回線(モニター)が閉ざされました(切られました)」」

二人同時に同じような事を言う。

「何勝手に行動してるのよあの子は!リツコどうにかならないの!」

その声には怒気が含まれていた。

父の敵(かたき)と思っている使徒を直接的という訳ではないが、

指揮という形で間接的にでも復讐できる機会をやっと手にいれたのだ。

それを今来たばかりの、しかも中学生が勝手に行動している…自分の指示なしに!

せっかくのチャンスをこの少年一人にとられる、その思いがミサトの中にあった。

普通は初めて戦闘に出る相手に思うことではない。

(あらあら、ミサトにも困ったものね、勝手にって言っても貴方なにも指示出してないじゃない。

普通ならもっと前に出すわね。間違い無く貴方が悪いのよ、ミサト)

しかしそんな単純なことが今のミサトには分からない。

復讐という名の業火に囚われているミサトには…

「マヤ!」

そうリツコに言われたマヤはほとんどでたらめのようなスピードでキーボードを打つ

しばらくして

「せ、先輩。通信回路、モニター、共につながりません」

その報告にリツコは

(おもしろいわねあの子、後でたっぷり聞かせてもらうわよ。待ってなさい)

なぜかこの状況を楽しんでいた。

このとき、初めて初号機に乗ったシンジがなぜその回線を切れるのかなど誰の頭にも無かった。

 

発令所でそんなことが起こっているとき初号機内のシンジはというと。

「さて、これでよし。」

エントリープラグ内部の回線を切り終わって一息つくシンジ。

目の前にはサキエルがいるがそれには何も気にしていない様子。

―――何をしたんだい、シンジ君?

「ああ、ちょっとね、モニターと通信回路切っただけだよ」

そう言ってシンジは目を閉じた。

シンジが目を閉じてしばらくするとシンジの髪の色が変化した。

そう、白銀へと。

その後シンジが目を開くとそこには紅い瞳があった。

そう、燃えるような紅い瞳が…

「さあ、行くよ、兄弟」

サキエルに向かって突進する初号機。

それに気がついたサキエルはATフィールドを展開しそして光線を放つ。

しかし、シンジの操る初号機はATフィールドを気にせず右手を腰のあたりで構えながら突進を続ける、

サキエルの光線をよけながら。

初号機がATフィールドにぶつかる瞬間その拳をATフィールドに突き出す。

その拳はサキエルの展開したATフィールドをものともせず突き破りそのままコアの部分に向かって行った。

ATフィールドを突き破った威力そのままでコアに叩き込む。

その威力に耐えかねたコアは背中を抜けて体の後ろへと出て行った。初号機の腕と共に…

初号機の手にはサキエルのコアがあった。

シンジは腕をサキエルから引き抜く。

抜き終わったと同時にサキエルは断末魔の叫びのごとく初号機にからみつく。

次の瞬間サキエルは自爆した、初号機を巻き添えにしながら。

 

「初号機からATフィールドの発生を確認、使徒による爆発を上空に逃がして行きます」

発令所に響く伊吹マヤの声

 

初号機はサキエルにからみつかれる一瞬前に後退してサキエルをよけた

そしてATフィールドでサキエルを包み込みそのまま上空へと爆発を逃がしたのである。

 

 

「いったいなんなのあの子は」

発令所にはそう呟く声があった。

 

「碇、おまえの息子は異常ではないか?」

「問題無い、使徒を倒せればそれで良い」

 

(今すぐ検査よ、解剖よ)

ひとり間違ったことを考えている人もそこにはいた。

もちろん白衣を着た金髪黒眉である。

 

 

「さて、これどうしようかな」

―――シンジ君、それはなんだい?

シンジの手には小さいオレンジ色をした球体が握られていた。

「ああ、これね、コアだよ、サキエルの」

―――え!!

シンジの答えにカヲルが驚いている。

エントリープラグ内にいるシンジがなぜコアを持っているか、そしてなぜ手に収まるほどになったのか

カヲルはそれを今考えていた。

そのカヲルの考えが分かりきっているかのごとくシンジは答える

「ひ・み・つ」

―――シ、シンジ君

そのシンジの答え方の可愛さにカヲルはちょっとあせる。

顔があれば、間違い無く赤くなっていたことだろう。

そう言いながらシンジはそのサキエルのコアを口に放り込んだ。

―――!!

そのわけの分からない行為にカヲルはまたしても驚く。

「これでサキエルも…ぐはっ」

話している途中でシンジの口から鮮血が飛び散る。

と言ってもLCLの中であるため、その血は飛び散ったというより流れ出したと言ったほうが的を射ている。

―――シンジ君!

三たび驚くカヲル、冷静沈着と言えるカヲルを驚かせることが可能なのはシンジとレイくらいであろう。

「レイがここにいなくてよかったよ、居たらいろいろとうるさいからね…カヲル君黙っていてもらえるかな。」

その言葉でカヲルは一つのことに気がついた。

レイにそのことを言ってはいけない理由はないのだ。それをあえて隠す。その意味は…

―――僕らに話したこと以外に、まだ何かしようとしているのかい

シンジ達はこの世界を見つけるまでに数億年の時を旅してきていた。

その間にこれからシンジの行うこと、その方法、などを綿密に話していた。

それ以外の時間は三人で話をしていたり、レイを教育していたり、眠っていたりしていた。

或る理由で別の世界に寄ったこともあった。

「今はまだ教えられないよ、いつか、いつか話すから…それまでは」

―――分かったよ、シンジ君。でも、いつかは

「わかっているよ、カヲル君」

戦闘前に目を閉じたように、今一度目を閉じるシンジ

目を閉じるとすぐに髪の毛の色が白銀から黒へと戻る。

髪の色が全て元に戻ったのが解ったようにシンジは目を開ける。

そこにはいつもの瞳があった。

 

「ミサトさん、終りました。どうやって戻れば良いんですか?」

回線を全てオープンしたシンジがぼけっとしているミサトに問いかける。

「え、ああ。日向君、お願い」

あそこまでエヴァを乗りこなしていてこんなことが分からないのかというような顔をして言うミサト。

「了解」

 


ちょっと一言

リツコさんが変なキャラクターになっていく…


琥珀の煩悩爆裂コメント

ぎゃぁぁああああああ!!!

>「ひ・み・つ」

>―――シ、シンジ君

>そのシンジの答え方の可愛さにカヲルはちょっとあせる。

>顔があれば、間違い無く赤くなっていたことだろう。

素晴らしい!!ここだけ私は、違う目で見てしまいました(核爆)

さぁ、シンジ君に振りまわされるカヲル君。

このままLKSならぬLSKに突入??

あうあう、ごめんなさい。暴走気味ですぅ〜

これはやはり沖縄の暑さが悪いということで・・・・・・(笑)

 


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