あの時をもう一度

 

第三話 「碇君…間違えたんじゃないの?(綾波レイ調)」


 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

突然の驚きの声がこの広い空間内を埋め尽くす。

そう、埋め尽くすほどにその声は大きかった。

いつも手を口元においている髭…もとい碇ゲンドウ司令ですらその手を耳にあてシンジの声から逃れていた。

「ほ、本当なの?」

先ほど聞いたことが事実なのかを今一度確かめようとシンジはゲンドウへ問いかけた。

「あ、ああ。そんな人物は知らん」

「わ、私もその名前は聞いたことないな」

ゲンドウとその隣にいる冬月が答えた。

「ア、アスカがいないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」

再びあたりに響くシンジの絶叫。

―――シ、シンジ君。耳元で叫ばないでくれないか………

耳があるのかは不明だがカヲルはそう言って意識を消失した。

元第十七使徒の意識を失わせるほどシンジの声は大きかった…

 

 

 

一時間前

 

「ちょっとこっちへ来て」

エントリープラグから出ていきなり掛けられた声にシンジはびっくりした。

「リ、リツコさん」

「さあ、こっちへいらっしゃい」

その時シンジは見た。

金髪の悪魔がシンジを手招きしているのを…

「え、えっと〜、と、父さんは?ぼ、僕、父さんと話があるんだ」

なんとかこの場から逃げ出そうとするシンジ。

「そんなこと気にしなくていいわ、シンジ君、貴方はいまから私と一緒に私の部屋まで来るのよ」

「ど、どうして…」

「どうしてですって。尋問よ」

「なぜ?」

「はっきり言って貴方怪しすぎるのよ。」

「僕が怪しい?どこが?」

「初搭乗でシンクロ率100%、プラグ内から通信をカット、使徒をATフィールドごと一撃で殲滅。

そして……司令に全く似てない。これが一番重要ね…どうしてあんな髭からこんな可愛い子供が…ぶつぶつ

これを聞いてシンジは深く考える…

―――リ、リツコさんってこんな人だったっけ?

―――シンジ君、もしかして間違えたんじゃないのかい?

―――それはないよ、だって僕の心が…僕の中の人類がすべて一致していると言っているから

―――そうなのかい

―――そうだよ。

―――だが、僕達の存在はこの世界にあって良いものではない。それがこの世界に影響を与えているとしたら?

―――カ、カヲル君、脅かさないでよ…って言うか、そんなことよりカヲル君、今は代わって

―――い、いきなりだね。まあいいさ

「さあ、行くわよ」

「お断りします。君たちにシンジ君を触らせるわけにはいけませんからね…それにシンジ君に触って良いのは僕だけさ

突如シンジの口調が変化する。

「!!」

「どうかしましたか。赤木リツコ博士?」

「あ、あなた誰」

「やはり聡明な方だ、すぐにわかったみたいだね」

「あなた誰」

再度聞き返すリツコ

「おやおや、あなたのお嫌いな綾波レイそっくりな言い方ですね」

「!!……?」

「どうかしましたか?」

「なぜ、レイを知っているの………まあ、良いわ聞いたところで教えてくれるつもりはないんでしょう」

「さて、それはシンジ君次第ですね」

「そう。ところで何で私がレイを嫌いなの?私、レイは嫌いじゃないわよ」

「??」

「今だって一緒に暮らしてるのよ」

「??」

―――シンジ君。どうやら完全に違うような気がするけど

―――そ、そんなことないよ。僕の中の皆はここが正しいと言ってるよ

―――シンジ君、いいかげん自分の非は認めたほうがいいと思うよ

「それで、あなた誰なの?」

「失礼、僕はカヲル、渚カヲル、シンジ君の中にいるもう一つの魂」

シンジ…カヲルは彼独特のアルカイックスマイルを見せる、シンジの顔で…

「渚…カオル…たしか…」

険しい顔をしながら一人思い悩むリツコ

「どうかしましたか?」

「いえ」

「そうですか、ではこれで」

そう言ってカヲルは歩いて行った。

「渚カオル…たしかセカンドチルドレンの名前がそうだったわね」

残された形になったリツコが呟いた。

 

 

三十分前

 

「さあて、父さん。話聞いてくれるかな?」

この時はカヲルではなくシンジにもどっている。

今、彼はゲンドウと対峙していた。

「何のようだ、さっさと話せ、さもなければ帰れ」

「相変わらずだね、父さんは」

実際シンジはゲンドウの事を良く覚えていない。

ただなんとなくそう思っただけだ。

「早くしろ、私は忙しい。」

「どこから話そうかな〜、………そうだ、父さん、母さんに会いたい?」

何から話すべきか思い悩みとりあえず母親のことを話した。

「おまえの母、ユイは既に死んだ。その質問になんの意味がある」

「そんなこと聞いてるわけじゃないよ、会いたい?会いたくない?どっち。YESかNOか」

有無を言わせないシンジの問いかけにさすがのゲンドウも折れた。

「YES」

すこし俯きながら答えるゲンドウ。

――シンジ君といったか、なかなか楽しませてくれる……長生きはするものだな

冬月はゲンドウの姿を見てそう思った。

「そうか〜じゃ、後一時間くらい待っててね」

「何を言っている」

「気にしない。父さん、一つたのみがあるんだけど…地下のどこだったか忘れたけど

水槽みたいな所にある綾波レイの体一つくれない?」

「!!…なんのことだ」

「!!」

そう言いながらゲンドウは懐にいれてある拳銃を取り出そうと手を動かす。

冬月は言葉もなくただ絶句している。

ゲンドウの行動を見たシンジは

「おっと撃たないでよね、そんな事したら母さんに会えなくなるよ」

と言った。

「先ほどからおまえは何を言っている。」

「だって、父さん、母さんに会いたいから人類補完計画なんてつまん無いものを手伝ってるんでしょ?」

「!!なぜそこまで知っている、きさま何者だ」

先ほどから手をいれていた懐から拳銃を取り出す。

そして拳銃が出た。

なんの躊躇もなく引き金を引くゲンドウ。

その瞬間、シンジの髪の色、瞳の色が変化する。

それと同時に目の前が紅く光る。

「ま、まさかATフィールド」

「!!」

「そう、君達リリンはそう呼んでるね、何人にも侵されざる聖なる領域、心の光」

―――ぼ、僕の台詞を取らないでくれないかシンジ君

「ちぇ」

「??」

「まあ、いいけど…とりあえず話聞いてくれるかな?父さん」

「あ、ああ」

「よかった。でもこんど僕を撃ち殺そうなんて思ったら父さんでもただじゃおかないからね」

極上の笑みを浮かべながらさらっと脅しをかけるシンジ。

「さてどこから話そうかな〜」

なにから話そうか悩んでいるシンジに声が掛かった。

―――ところでシンジ君、彼女はまだなのかい?

―――さあ?

 

 

そのころ話題の中心の綾波レイ嬢はというと…

「わた〜しにか〜えりな〜さい〜うまれるまえに〜あなたがすごした〜だいちへ〜と〜」

歌っていた。

「あ、見つけた」

そう言ってなぜか目の前にあった白衣に腕を通す。

なぜ白衣を着る手があるかというと…

魂の無い綾波レイの体をもらったからである。

「これでよし、さて碇君の所に行うかな」

 

 

 

五分前

 

「と、言うわけで、今僕はここにいるんだ。理解できた?」

「あ、ああ」

あまりに突拍子も無い展開にゲンドウはついて行っていなかった。

しかもシンジ自信よく覚えていないのであまりうまく説明でき無かった。

「それでは、シンジ君。この世界に元からいたシンジ君はどうしたんだね」

冬月が好奇心剥き出しで聞いてきた。

「ああ、彼ね、僕の中の世界で暮らしてるよ。

まあ、暮らしているって言っても僕の世界はLCLの海のようなものだからね

LCLの海に溶けていると言った方がいいかな。」

実際これもシンジはよく解っていない、勝手に『そうだ』と勝手に思いこんでいるだけだ。

「いっかりく〜ん」

かなり明るい声がシンジ達のいる部屋に響いた。

「レイ、やっと来たんだね。もう大体話は終わったよ」

「そうなの?」

「シ、シンジ、彼女はお前の言っていたレイか…」

あからさまに明るいレイを見て驚くゲンドウ。

「しかし、いったいどうやって入ってきたのだ

ゲンドウとは別のことに驚いている冬月。

「そうだよ、前に僕がいた世界の綾波レイだよ。」

「そうか……ふっ、問題ない。シナリオ通りだ」

―――な、父さんのシナリオってなんなんだ〜

―――ゲンドウ君、君が何を言っているのか解らないよ。ゲンドウ君

―――さすが髭ね。わけがわからないわ

「それで、シンジ。お前は何を望む」

そう言われ一転して真剣な顔をするシンジ。

「それは神ではない僕にとって傲慢でしかないのかもしれない。

だけど、僕はこの世界を…かつてすごした世界と同じこの世界を救いたい。

そして、全ての生命を幸せに…。

そのために僕は永遠とも言える旅をしてきたんだから」

「そうか……それはそうとさきほどユイがどうとか言っていたな」

「ああ、それね。あとで母さんを初号機から取り出そうかなと思ってね」

「な!なんだと。そんなことが出来るのか!!」

「まあ、ちょっと僕に権限をくれたらね。さすがに肉体の再構成は僕だけじゃできないからね」

「そ、そんなことで良いのか、すぐに、すぐに頼む。お願いだシンジ」

なにやらシンジと会話する前とした後では性格がかなり変わっている。

先ほどまでのゲンドウはいわば仮面。

ユイを助けるためだけに作った彼の心の仮面

それがシンジとの会話の末に取れた。

「まあ、ちょっとまってよ。……とりあえず母さん助けたら僕に協力してくれる?」

「ああ、もちろんだ。ユイが戻れば人類補完計画など必要無い。」

「碇、少し待て。シンジ君、初号機はどうするのかね。コアに魂が無ければ動かせなくなる」

さきほどから静かになっていた冬月がシンジに問いかける。

そうなのだ、普通なら起動しなくなり使徒が来た時どうすれば良いのか。

せっかくユイが戻ってきても世界が終われば意味はない。

「気にしなくて良いよ、僕ならできるさ。なにせ使徒モドキだからね」

「そうなのか」

「そうだよ、冬月先生」

「そ、それならかまわんよ、私もユイ君には会いたいからね」

シンジの説明よりも『冬月先生』が効いたらしい。

「母さんは後で、とりあえず今すぐドイツにいるアスカを呼んでよ。彼女も僕が救いたい人の一人だからね。」

「それなんだがシンジ君」

「なに?」

「アスカとは誰のことなんだい?先ほどの説明の時にも思ったのだが、話の途中だったのでね」

「はい?」

「そうだ、シンジ。そんな人物、我々は知らんぞ」

 

 

五分後

 

「そ、それじゃあ。セカンドチルドレンはいないの。もしかして僕がセカンドチルドレン?」

少し落ち着きを取り戻したのかシンジはゲンドウ達に問い掛けた。

「いや、いる。名前はたしか…渚…渚カオル」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇカヲル君が〜」

「君?たしか女の子だったはずだが…」

「はぇ?」

「どうした、シンジ」

「どうしたんだねシンジ君?」

「…碇君…もしかして、間違えたの?」

レイの冷たい目線がシンジに突き刺さる。

レイは先ほどのシンジの絶叫に耐えぬいたのだ。

もし未だにシンジの中にいたのならカヲル同様気を失っていただろう。

「カヲル君にも言ったけど、それはないよ。間違いなくね

なぜなら、僕は前の世界と同質なんだよ。その僕がこの世界は同じだと感じたんだよ。

前に別の世界に行ったときは違うと感じたよ。

それに今更別の世界に行くにしても僕の魂はもう限界だからね。」

わざと聞えないように言ったのだろう、最後の呟きは誰の耳にも届かなかった。

「それならなぜセカンドはいないの」

「いや、冷静に考えてみて思ったんだけど

多分アスカと言う人物は存在してると思う。

ただセカンドチルドレンではないだけ、だと思う。

それなら、そのアスカでも良い。

僕はセカンドチルドレンと言う名の人物を助けるわけじゃない。

アスカ、という名の女の子を救うために来たんだよ。

と、言ってもアスカだけと言うわけじゃないよ。

皆を、この世界のみんなを救いたいんだ」

「それなら渚カオルという女の子は?」

「それはわからないよ。」

「そう………」

その後もレイの質問攻めが続いた。

 

 


ちょっと一言

べ、別にアスカが嫌いなわけじゃないです…

久しぶりに書いたので皆さんの口調が変です…許して


琥珀のコメント

うにょぉぉぉ〜〜〜〜〜〜!!

あしゅか、あしゅかがいないぃ?

かむば〜っく!!アスカァ〜〜

『渚 カオル』とはいったい?

しかも女の子?

ああ、カヲル君女の子バージョンで出てくるのかしら?

出てくるんですよね?(決め付け)

うふふふふ・・・・・・(壊れ気味)

さて、壊れ気味といえばリツコさん。今回もほどよい壊れ具合(笑)

ふと思うと、ミサトさんが出ていないような?

レイちゃんの性格が・・・変わっていますねぇ。

これはやはりシンジ君の教育?なーんて。

 


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