あの時をもう一度

 

第四話 「しまった〜リツコさんが…」


 

「と、言うわけで。父さん、僕に権限頂戴」

ようやくレイの質問ぜめが終わり、話をもとにもどし笑顔でゲンドウに語りかけるシンジ。

「権限と簡単に言ってもな…」

考えこむゲンドウ、だがその顔はこれから起こる事への期待に満ち溢れていた。

全てを投げ出しただひたすらにユイと会うためだけに生きてきた。

そのためには自分の息子すら犠牲にしようとしていたのだ。

それがもう少しで叶うのだ。

期待に満ち溢れていてもおかしくはない。

「…う〜ん…技術部特別顧問とか適当に作ってくれれば良いから。

別に何処かの軍隊みたいな階級が欲しいわけじゃないし」

「技術部特別顧問…シンジ君、それはさすがに無理があるぞ…」

渋い顔で言う冬月。

いきなり来てしかも見た目は中学生のこの少年が実力もなしに技術部へ、

しかも特別顧問となるのは許されるわけがない。

冬月の言いたいことがシンジは理解できた。

だから笑顔でこう答えた。

「あ、大丈夫だよ。世界中の人間全員の知識を足し合わせても僕にはかなわない。

そうだね僕を100とすればネルフの技術部全員あわせても1にも満たないよ」

笑顔でさらっとすごいことを言うシンジ。

それを聞きまわりにいた人物は驚いて声もない。

レイもその内に入っている。

レイ自身長年シンジと一緒にいてシンジの頭のよさを知っていたがそこまでとは思っていなかったらしい。

シンジは『そんなにすごいこと言ったかな』と思いつつあることを考えていた。

そのあることを実行するために今だ驚いて動きを止めているゲンドウに近づく。

ゲンドウはシンジが近づいてくることを認識できていなかった。

あまりのシンジの言い分に目が正常に機能していないのだ。

だからシンジが目の前に来たことにも気がついていなかった。

いつもなら『何をしている』とでも言う所だろう。

シンジはそっとばれないように手をゲンドウの顔へもっていく。

それが掛けてあるサングラス(?)に触れたと同時にいっきに外す。

「おお!似てない」

そう、シンジの思いついたこととはゲンドウのサングラスを外すことなのだ。

シンジがサングラスを外してすぐに言った言葉は自分に対してである。

はっきり言ってシンジとゲンドウは似ていない。

「シンジ、何をしている」

ようやく気がついたゲンドウがシンジに向かって言う。

「別に…で、認めてくれる?技術部顧問の事」

「実力があるのならば問題ない…シンジ、メガネを返せ」

ゲンドウのサングラスが気に入ったのかシンジはサングラスを渋々返しシンジは元いた位置へ戻る。

本当は返したくなかったようだ。

「…そうだ、僕の…僕達の住む所、ネルフ本部内にしといてね。その方が都合良いから、

あと、僕、学校行かないからそのつもりで」

「シンジ君なぜ学校に行かないのかね…」

「行っても意味ないし…それに僕に関わって誰かが傷つくのは嫌だからね…まあ、やりたいこともあるからね

もしミサトさんが何か行ってきたら、『司令の命令だ』とか言っておいてくれないかな

じゃ、そういうことで。僕は今から母さんを取り戻してくるから」

「問題ない、好きにしろ。しかし、シンジ、そんなに簡単にユイを取り戻せることが出来るのか?」

「出来るよ〜、ただMAGIを使わなくちゃいけないからね。だから僕が実験する所…なんて言ったっけ?

まあ、良いや。そこに着くまでに僕が技術部顧問だということをみんなに伝えておいて。それじゃあ、レイ行こうか」

隣にいるレイに声を掛け司令室から出て行こうとしていた。

恐らく、ゲンドウ、冬月、共にシンジが最後にレイへ声をかけなければ気がつかなかっただろう。

「シンジちょっと待て」

あと一歩で扉というところでシンジはゲンドウに声を掛けられた。

「なに?父さん?」

扉の前で後ろへとふりかえるシンジ。

「シンジ、この世界にも綾波レイが居る。そしてシンジの隣にも綾波レイがいる。

これの意味する所がわかるか?」

ゲンドウのよく解らない説明でもシンジには理解できたようだ。

同じ顔。同じ体型。同じ名前。

それらを区別するものは存在しない。

「ああ、そうだね。区別がつかなくなるね…どうしよう…」

先の三つの中で容易に変更できるのはただ一つ。

「そうだ、名前変えよう。うん、それが良い。レイも良いだろ?」

隣に居るレイへ問う。

「ええ、かまわないわ。…変えるのなら私の方ね」

「どうして?」

「だって、レイって言う名前飽きたもの。新鮮さがないわ」

それを聞いたゲンドウのサングラスが心なしかずれたのをシンジは見た。

自分で考えた名前を飽きられたのはかなりショックだったようだがゲンドウは持ち前のしぶとさでなんとか耐えた。

「じゃあ、どうする?」

「碇君が決めて」

「う〜ん……………………!!」

その瞬間シンジの頭上に光った電球が出てきたように見えた。

しかし、見えた同時にその電球らしきものは消えていた。

「い、碇君…その電球は…」

一瞬のことだったがレイには見えたようだ。

人の頭の上に電球が出てくるものなのかと考えながらもレイはシンジに問う。

「電球?なんのこと?…それは良いとして。思いついたよ。『綾波アイ』でどう?」

「碇君が決めたのならそれで良いわ…それで、その根拠は?」

実際レイはシンジが決まるものならばどんなものでも良かった。

しかし、一応理由ぐらいは聞いてみたいと思いシンジに問いかけたのだ。

「電波」

「で、電波…ま、まあ良いわ。…それじゃあ私は今から綾波アイね」

「じゃ、今度こそ行くね」

そう言ってシンジはゲンドウ達に背を向け扉に向かう。

その瞬間扉が開く。

自動ドアなため当然なのだが、シンジが居る所はまだ自動ドアの感知するところではない。

ではなぜ開いたのか。それは…

「ふっふっふ。見つけたわよシンジ君」

その声に驚き声を掛けてきた人物の方を見る。

その途端シンジの動きが止まる。

「リ、リツコさん…どうして…」

『ここに』と続くはずの言葉は次の言葉によって消された。

「さあ、行くわよ。シンジ君。」

有無をいわせせずシンジを連れて行こうとシンジの腕を捕まえ引っ張っていこうとする。

「だめ」

「?」

どうやらシンジ以外目に入っていなかったのかレイもといアイがシンジの隣にいたことに気がついていなかった。

「?レイ?…どうしてここに?」

今現在、レイは先の零号機の起動実験のため怪我をしていてまだ病院にいるはずだ。

それが今目の前にいる。リツコならずとも疑問に思うのは当然だ。

「違うわ、私は綾波レイじゃない、アイよ」

「何言っているのレイ?」

リツコはアイの言っていることが解らず困惑する。

レイがこんなわけの解らないことを言うはずがない。

何かあったのだろうか、そうリツコは思っていた。

そのリツコの考えに思わぬところから答えが与えられた。

「赤木リツコ博士。彼女は綾波アイだ。レイではない。」

「し、司令、どうして?」

そう、ゲンドウだ。ゲンドウがリツコに答えを与えたのだ。

しかし、リツコにはゲンドウがなぜここにいるのかわからなかった。

先ほどからリツコはシンジを探すのに片っ端から全ての場所を調べていた。

その際自分を少々見失っていたため、自分が今何処に居るかがわかっていなかった。

「どうしたのかね赤木君。」

冬月がリツコの様子を訝しげに思い声をかける。

「あの、もしかして…ここは司令室ですか?」

「そうだが」

「し、失礼しました。司令、副指令」

「いや、かまわんよ」

「ありがとうございます。…それで、アイというのは?」

「それは後で私が説明しよう、それと、シンジはこれから君の上司になる。

だからシンジを解剖しないように」

珍しくゲンドウがシンジを気遣う。

だがその真意はシンジがいなくなるとユイが戻ってこれなくなるということだ。

別にシンジが大切でないというわけではない、

ゲンドウにとってはユイが一番大切なのだ。

「じょ、上司…どういうことですか、碇司令」

「言葉通りだ」

「じゃ、じゃあ。ぼ、僕は行くね父さん」

「ああ、シンジ頼んだぞ」

この場は父にまかせて脱兎のごとく去っていくシンジ。

今シンジの心の中は恐怖に満ち溢れていた。

ゲンドウはシンジにこれからリツコの上司としてやっていけ、といっている。

シンジとしては簡単にMAGIを使用できる権限が欲しかっただけなのだ。

それがまさかあの赤木リツコ博士を部下にするなどとシンジは思っても見なかった。

「失敗したな…リツコさんが部下になるなんて……」

逃げながら呟くシンジの言葉を聞いたものは誰もいなかった。

 

 

 

 

 

―――カヲル君、起きて!!!

―――…………やあ、シンジ君、もう朝なのか、ということはシンジ君との二人だけの夜はもう終わりなのかい?

―――寝ぼけないでよカヲル君。しかも言ってることが怪しいし

―――はっはっは、気にしちゃいけないよ。…ところでいつのまにここへ?

―――カヲル君が気を失っている間。…そうだ、レイの名前がアイになったから

―――かなり唐突だねシンジ君。そうか、綾波レイが綾波アイにね〜…一文字しか違ってないね

―――カヲル君、それは言っちゃいけないんだよ

―――そうか…お約束という奴だね

―――そうそう

「いいかげんにしてくれない?」

先ほどからカヲルと二人で話しているシンジに向かってアイが言う。

その顔は怒っているようにしか見えない。

アイはカヲルにシンジをとられたことが気に食わないのだ。

「わかったよ、だから怒らないでね。アイ」

アイに向かって極上の笑顔を見せる。

その綺麗なシンジの笑顔に、アイの怒っていた顔がいっきに紅潮した。

「も、問題ないわ」

どこぞの髭と同じ事を口にするアイ。

「さ〜て。始めるとするか、母さんのサルベージを」

―――これから行うことがサルベージと言うのならば…

―――似たようなものだよカヲル君

―――確かにそうだね

「それじゃ、いくよ…」

 

 


ちょっと一言

話の展開の進む速度が遅いような…


琥珀のコメント

んふふふふ・・・・・・いいですねぇ、いいですねぇ。

どこかずれたカヲル君が(爆)

「綾波アイ」・・・ぷりち〜♪

イニシャルがA,Aになっちゃったわ。

これはこれで珍しい名前かも。

この世界の「綾波レイ」の出番が無いっすねぇ・・・ミサトさんも最近(笑)

「渚カオル」の出番は次回かな?

自分のことは「ボク」って言って欲しいなぁ・・・(あくまで希望)

んで、「ボクは君に会うために生まれてきたのかもしれない・・・」

って・・・きゃあ〜♪いいかも(爆)

レイもといアイちゃんとカヲル君はそれに嫉妬とか・・・いいわ〜(はぁと)

 


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