6月6日。
本日の天気は、雨。
☆☆シンジ君お誕生日記念SS☆☆
『意地っ張りな空模様』
「もう、なんだっていうのよ。天気予報のウソツキ〜〜〜」
グチをこぼしながら、アタシは手早く髪を梳く。
湿気を吸って、上手くまとまらない。
「せっかく昨日、気合入れてヘアトリートメントしたのにぃ〜〜〜〜」
今日は、特別な日。
あなたに会いに行かなくちゃ。
少し背伸びして、大人っぽいワンピース。
桃色のルージュ。
キレイだよ。
そう、褒めてくれるかな?
花の香を首筋に。
いい匂いだね。
前にそう言ってくれたから。
ねぇ、不思議。
すごくドキドキする。
こんな気持ち、はじめて。
6月6日。特別な日。
あなたに会いに行かなくちゃ。
赤いブーツ、赤いレインコート。
真っ赤な傘。
どこにいたって、すぐにわかるはず。
あなたに見つけてほしいから。
「ああん、はやくはやくぅ〜〜」
こういう時の信号待ち。
すっごいイライラする。
はやくあなたに会いたい。
毎日会っているのに。
それなのに、全然足りない。
いつもあなたを見ていたい。
いつもアタシを見てほしい。
わがままかな?
でも、だって、あなたのことが好きなんだもん。
その時いたずらな風が、アタシの手から、
お気に入りの、真っ赤な傘を奪い取った。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
アスファルトに叩きつけられて、ホネが不自然に歪む。
とてもじゃないが、もうさす事はできない。
「高かったのに・・・・・・・・・」
そんな事言っている場合じゃナイ。
惜しみつつも、ゴミ箱に入れて、
アタシは走り出す。
青い包みを胸にしっかり抱きしめて。
びしょぬれになろうと関係ない。
今すぐあなたに会いたいから。
家に近づくにつれ、今までの雨がウソみたいに、
空は青く晴れ渡る。
髪はぐしゃぐしゃ。
お化粧も落ちちゃったかもしれない。
いじわるな天気。
こんな日くらい、気をきかしてくれてもいいのにね?
しっかり抱きしめていたから、青い包みはあまり濡れていない。
よかった。
大切な、あなたへのプレゼント。
はやくあなたに会いたい。
ピンポーン。
来客を知らせるコール。
ドキドキする。
もうすぐ、あなたに会える。
足音と、カチャリと鍵を開ける音。
扉の向こうには、大好きなあなたがいる。
「・・・・・・アスカ」
大好きな声。
シンジ、シンジだぁ・・・・・・・・・
ゆるむ涙腺を必死に引き締めて、
アタシは包みをシンジに押し付ける。
「アスカ、覚えていてくれたんだ・・・・・・・・」
5月のはじめから、指折り数えて待っていたわよっ!!
「こ、これでも幼なじみだからよ!勘違いしないでよね」
シンジを目の前にすると、素直になれないアタシ。
全然かわいくない。
「・・・・・・・・・・・・」
黙っちゃった。
どうしよう・・・・・・アタシ、嫌われちゃった?
うつむいたアタシの頭に、バスタオルがかけられる。
前にアタシがあげた、赤い色のバスタオル。
顔を上げると、シンジと目が合った。
カアッと頬が熱くなる。
どうしよう。
はずかしい。
『好き』が止まらないよ。
あれ・・・・・・?
シンジ、笑ってる。
どうして?
アタシ、どこかヘン?
考える間もなく、アタシはシンジに、
ぎゅう〜〜〜〜〜〜〜っと抱きしめられた。
あたたかい・・・・・・じゃなくてっ!!!
「シ、シシシシシシ、シンジぃ〜〜〜〜!!??」
きっとアタシは身体中、真っ赤っ赤になっているんだろうな、と、ふと思った。
濡れてしまうことなんかお構いなしに、シンジはアタシをキツク抱きしめている。
どうしよう。
泣きたくなってしまう。
こんな、不意打ちなんて、ヒドイよシンジ。
でも、アタシがシンジの腕の中にいる現実。
ウソみたい。夢みたい。
シンジの胸は、意外にも広くて、あたたかい。
ヤだな。
離れられなくなっちゃうよ。
「アスカ・・・・・・・・・」
「・・・・・・なによ」
つい、ぶっきらぼうな言いかたになっちゃう。
こんな日くらい、素直な自分になれたらいいのに。
「アスカのこと、僕みんな知ってるよ。こんなにびしょぬれになってまで・・・・・・・・・意地っ張りなアスカ」
「バカ・・・・・・」
シンジには、もうみんなお見通し。
それがちょっと悔しい。
「・・・・・・バカシンジ」
外は青空。
雨のち晴れ。
・・・・・・・・・来年は、もっと素直なアタシになれますように。
END
あとがき
Shinkyoさんの『Shinkyo’s room』に投稿した作品。
LRSな人にLASを贈ってしまった(核爆発)
とある事情でお蔵入りする予定だったが、Shinkyoさんに押し付けてしまった。
状況変化により、こちらでもアップ。
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