『赤』
赤い空が落ちてきて、
あたしを押しつぶすの。
ねぇ、ここから出して。
あたしを見つけだして。
誰も来てくれないの。
ねぇ、お願い。
ここから出して。
誰もいない。
ねぇ、あたしのそばにいて。
ここはとても暗いの。
一人にしないで。
もう、誰もいない。
誰かの足が落ちている。
ごろりと転がって。
真っ赤な血が流れ出し、視界を侵食するの。
どこかで何かが壊れてる。
月が血を吸って、
禍禍しくあたしを照らす。
赤いね。
空が。
海が。
あの子はどんな目をしていたっけ。
あたしを見たあの瞳。
どんな色をしていたかしら。
視界を染める、赤い色。
どんな色をしていたかしら。
ぽたりぽたりと赤い水。
あたしの目から流れ出す。
もう、壊れてしまうのね。
誰もいないこの場所で、
あたしは一人、壊れてる。
ごとりと音がなって、
腕が落ちた。
イタイよ。
たくさん、たくさん血が。
あたしの中から。
クルシイよ。
壊れる。
あたしが。
ゆっくり、じわじわと、
あたしが壊れていく。
あの子の色は、何色だった?
もう、思い出せないの。
まっすぐあたしを射抜いたあの瞳。
それはきっと赤い色。
だって、あんなに血の匂い。
ここはとてもクルシイの。
皮膚がはがれ、目がかすむ。
もう、おしまいなのね。
あたしは人形。
あたしは人形。
お人形。
もう、誰にも見てもらえない。
棄てられるの。
燃やされて。
もう、誰も見てくれないから。
もう、いらないモノだから。
炎はあかい。赤い色。
喉が焼けつく。
ひりひりと。
あの子の色は、何色だった?