紅葉は散りゆく葉の花道



 植物は地面から吸い上げた水と、空気中からとりこんだ二酸化炭素を太陽の光のエネルギーを使って糖と酸素にかえる光合成をおこなっている。
 できた糖は植物自身の体のあちこちに送られて体をささえ成長させる栄養分となり、またそれを食べていきている動物の栄養分となる。
 そして食べた動物がした排出物が植物の肥料となり、呼吸して出した二酸化炭素を使ってまた植物が光合成をおこなうというわけだ。
 夏の間の木はそのようにして青々とした葉を茂らせている。
 ところが冬になると太陽の光も弱くなり、気温も下がってくるので自分の体を保つための栄養分を確保するのがむずかしくなる。
 そこでだんだん寒くなってくると、葉っぱを切り落として冬を乗り切るための準備を始めるのである。
 うまいことに秋になると葉っぱと枝をつなぐ部分に外側から切れ込みができて、それによって木本体をを傷つけることなくスムーズに葉っぱを落とすことが出来る。
 そしてこの外側の切れ込みが葉が赤くなる理由なのである。

 光合成に使われる水は茎の内側(道管)を通って葉に送られ、光合成でできた栄養分(糖)は茎の外側(師管)を通って全身に送られている。
 だから外側に切れ込みが入るとできた糖は葉の中にたまっていって、それが赤く見える物質に変化するのである。
 切れ込みがはいっていなくても茎の外側を削り取る実験を行うと葉が紅葉するのを見ることができる。
 葉が、その最後の栄養分を自分だけのために使って紅葉する、というのは切り取った木からの餞別のようにも思える。
 思い切りきれいに紅葉した葉はやがてはらはら散ってゆき、長い冬をすごした後、そこからは新しい葉が出てまた栄養を木に与えてゆく。
 ちなみに黄色くなる葉っぱというのは光合成を行っている葉緑体を来年に備えて分解して木側に回収するからで、これは葉をアルコールで脱色する実験によっても確認されている。
(もうすぐ紅葉の十和田湖 遊覧船より撮影)


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