指からの卒業
4+5=9、8−3=5などは指を使うだけでもなんとかなってしまいます。
でも小学校1年生も2学期になって、8+6というようなものが出てくるとなかなかそうはいきません。となりの子の指を借りてきたり(?)靴下を脱いで足の指まで使ったりしてみてもなかなかうまくはいきません。
小学校1年生が初めてぶつかる算数の大きな関門。それは10進法の考え方をしっかり理解するということです。
教科書などではおはじきや数え棒、折り紙などを使って10になったものはまとめて10の束をつくるようなやり方が一般的ですか、そこで問題になるのがなぜおはじきを10でまとめるのかということです。
10年ほど前にどうしても繰り上がりがわからない子がいて(その子は1年生ではなかったのですが)、あの手この手を試した挙げ句ふと思いついてコンビニで両替して一円玉をたくさんもらってきてやってみたらこれがとてもしっくりいくのです。
10で繰り上がる。これはまさしくお金です。。
授業で本物のお金を使うのはやはり抵抗があるし、いつもそんなにたくさんの1円玉があるわけではないのでどうしたものかと思っていたところ、おもちゃ屋でプラスチックのお金のセットを見つけて「やった、これだ!」と思いました。
それ以来ずっと愛用しているのですが、なくなったりもするのでだいぶ1円玉が減ってきてしまいました。またどこかで見つけて買わなくては。
例えば8+6の場合。
一円玉で8枚と6枚。合わせていくら?
とやるととりあえずは全部数えてみて
「・・・9、10、11、12、13、14えんー」
と答がでます。
でも1円玉ばかりだとじゃらじゃらしてたいへんなので10枚になった分を10円玉1枚と交換します。はじめは全部ごちゃっとまぜて「1、2、3・・・」でもよいのですがちょっと慣れてきたら8円と6円を別々にしておいて「10円にするには6円の方からなん枚持ってきたらいいかな・・・」というようにして考えてみます。そして1円玉が10枚になったところで10円玉と交換。
この時に「ぱんぱかぱーん」とか「ブー」(まちがえて9枚だったりした時)などの効果音をいれてみてもよいでしょう。
こうしたことを何回もやっていると、14枚の1円玉と10円1枚1円4枚が同じだということが感覚的につかめてきます。
紙の上の計算をやるときでもただ繰り上がってひとつ上の位に1を書くというのではなく下の位の1が10こ集まって上の1(10)になっているということがわかってきます。
算数や数学がきらいになったりわからなくなったりする原因の第一は計算と現実レベルの数の考え方がはなれてしまって、ただやり方を覚えて練習するだけの記号になってしまうことです。
だからどうということのないようなことですが、学校で習っている算数をふだん使っているお金の数え方と同じに考えることができるというのは実はとても大切なことのように思えます。
ひきざんになるとこの方法はより威力を発揮します。
13−8のような問題ではもうこれは指だけに頼っていてはどうしようもありません。
「はい、それじゃあ箱の中から13円とってみよう」
1円玉で13円とっちゃう子もいるけれどそれはそれでよいのです。8円はらって残りは5円。答がわかったところでもう一度10円1枚と1円3枚からやり直しです。
「へい、いらっしゃい。このえんぴつは8円だよ」
「1、2、3・・・」と1円玉を出しても足りません。
「それじゃあ売れないねえ」
そこで10円玉ではらうことになります。
「はい、10円ね。おつりはいくらあげればいいかな?」
おつりの2円と手の中にある3円を合わせて5円。
何度かやってみて慣れてきたらおつりをなかなか渡さなかったり隠してみたりしてちょっと意地悪してみます。
その位からひけない時は上の位から借りてきて10からひいて、もともとあった数とたして数字を書く。
たしかにやり方はそうですが上の学年の子でもなぜそうやっているのかわからないでやっている場合がけっこう多いもので、これは実際に「なんで?」と聞いてみるとほんとに多いことにびっくりしてしまうくらいです。
(「借りてくる」という定番の言い方もほんとうはおかしいですよね。「くずす」あるいは「細かくする」が正しいように思います)
はじめの段階でしっかり体で覚えておくと、これが百になっても千になっても同じようにして考えることができる、というわけです。
さて、中学校の方程式、連立方程式などの文章題では2けたや3けたの数字を式で表す問題が出てきます。
十の位の数字がx、一の位の数字がyとするとその数は
10x+y
で表せます。
これは例えば26なら10円が2枚に1円6枚だから
I×2+6
というように考えるということです。
十の位の数字と一の位の数字を入れ替えると62で10円6枚と1円2枚になるから
I×6+2
式では
10y+x
となります。
こういう考え方がしっくりいくようになっているかどうかはやはりその前の段階で数というものをどのように考えているかということにおおいに関係があるわけです。
小学校1年生と中学生。
書き方は違っているしちょっとむずかしくはなっているけれど位どりや数の考え方は同じです。
中学生諸君。小学1年生の勉強をあなどってはいけないよ。
(あれれ、いつの間にか中学生向けになってしましました)
次へ
小学生のページへもどる
はじめのページへもどる