田舎暮しを始めて、十年を越す。その歳月の殆どを、自分の敷地内だけで過ごしてきた。

自宅以外の場所としては、山の上にある人も滅多にこないブドウ畑、そして深閑とした山の奥、に心の安らぎと親しみを感じる。

私は都会から来た奇異な新種、いわゆる「よそ者」の一人。在来種は、長年の努力によって、彼らに適した生存システムを確立してきた。そのような在来種から見れば、新種は、実に目障りで、忌々しいくらい邪魔な存在であろう。

弱肉強食の自然界においては、在来種と新種、異種生物間、そして同一種族間においても、血みどろの戦いの歴史がある。これこそが、自然の実体なのである。

私は、そのような自然の一部として生を受け、それを当然のこととして、七十年を生きてきた。人生締めくくりの時において、「自然の実体」が、身近に存在することを鮮明に感じ、肝に銘じた。

「自然の実体」を友とし、「隷属することなき、個性豊かな新種」確立のための祖となりたいものである。不器用な私が到達した「私の極意」であり、また「自然が友」の由来でもあります。

長年月にわたる緊張と不快な生活環境を通して、吹けば飛ぶような”よそ者”は、敵愾心に満ち溢れた新種へと変貌した。好ましいことではないが、これこそが自然の実体なのである。


国民はすべての基本的人権の享有を妨げられない:日本国憲法第11条。