09.肝臓で強力な変異原に変化する多環芳香族炭化水素: 多環芳香族炭化水素には、強い発ガン性をもつ分子が多くあり、たとえばベンズピレン、ベンズアントラセン、アフラトキシンなどが知られている。自動車・オートバイ・船舶・航空機などの排気ガス、焼却施設の排ガス、発電施設の排ガス、暖房用燃料の燃焼ガス、野焼きの煙、焼魚、焼き肉、タバコの煙など、物を燃やせば多環芳香族炭化水素が不可避的に発生する厄介な分子でもある。 ベンズピレン、ベンズアントラセン、アフラトキシン(ピーナッツやピスタオナッツに付着しているカビ)などは体内に取込まれた後、肝臓内の酵素で極めて強い変異原物質(エポキシド類)に変化する。また、発ガン性の面においても、変化前より遥かに恐ろしくなるそうだから驚きである。 強化された変異原物質は、DNAの構造を化学的に変化させ、DNA骨格の切断などかなり大きな影響を与えるらしい。 ベンズピレンの変化過程を図に示す。図中シトクロムP−450は酸素添加を仲介する酵素である。生体内の酸化反応は、大気中の酸化反応とは異なり、遊離酸素は必要ない。この酵素は、多くの炭化水素などに作用して無害の代謝物に分解するが、多環芳香族炭化水素のような非常に安定な分子骨格をもつ物質に対しては、代謝機能が不十分なのかもしれない。 |