06.変異原としての紫外線: DNA内のピリミジン塩基(シトシンとチミン)は、260nm付近の紫外線を吸収してピリミジンダイマーを形成する。チミンダイマーを以下に示す。 地球上に降り注ぐ太陽光が変異原であるとは、まことに厄介な問題である。 オゾンホールの拡大につれて紫外線強度が強くなり、その結果皮膚ガンなどの発生が増加する、という記事が報道されているが、まさに上記のチミンダイマーがその問題の根底にある。 またオゾンホールもさることながら、われわれは屋内においてさえ、かなり強い紫外線に照射されている。蛍光燈がそれであり、蛍光燈内の励起された水銀蒸気からは、254nm付近の強い紫外線が放射される。紫外線も東海村核燃料事故で発生した中性子線も、人体に及ぼす負の影響は同じようなものである。あの方達は亡くなってしまった。 ここで、ある疑問が生ずるであろう。 「何億年と太陽とお付き合いをしているのなら、何で、地球上の皆の衆が皮膚ガンにならないのであろうか」 その答えは、 「何億年と長いお付き合いをしたおかげに、皮膚ガンになりにくい形質が備わった」 のである。 化学物質や公害物質のように、お付き合いしてまもない物質には、対応できなくて当たり前なのである。しかし、あと何億年も経てば、必ずや皮膚ガンに負けないだけの立派な自己防衛機構が備わると思う。ただし、現在とはチョコット違う生物になっているかも知れないが。 さて、チミンダイマーに対する自己防衛機構として、われわれの体内にはホトリアーゼ(photolyase)という酵素が準備されている。しかし、遺伝的(色素性乾皮症)にこの酵素をもたない人もいる。また、十分な量をもたない人もいるであろう。意図的に日焼けして、黒くするのも自由ではあるが? ホトリアーゼ(photolyase)はダイマーに結合し、可視光領域の光化学反応によって、シクロブタン環を解いて2個のピリミジン塩基に戻す。この過程を光回復(photoreactivation)と呼ぶ。 チョット良い話し:紫外線の照射によってチミンダイマーができると、細胞は死滅する。紫外線による殺菌効果の一つとして重要。 |