せ み



若手の営業社員が、売り込みに出かけました。

残暑厳しい初秋の事でした。

お客さんの所に伺ったら、

隣の人を紹介してくれると、連れてきてくれました。

嬉しくなったその社員は、場を盛り上げようとして、

前日仕入れたばかりのギャグを話しに織り込みました。

「ヒグラシというセミがいますよね。」

彼は話し始めました。

「おーしーつくつく、かなかなかな、って鳴きますね。」

彼は楽しそうに続けます。

「私はセミに例えると、ソノヒグラシという種類ですね。」

お客さんは、興味を引かれたように、その社員を見ました。

「それは、ホーシーつくづく金かねカネ、って鳴くんですよ。」

彼は得意そうに話しました。

うけたな、と内心で満足の表情です。

ひと呼吸あって、「そうだねえ。」

と、隣のお客さんはにやにやして言います。

「そう、私の名字は 日暮(ひぐらし) なんだよ。」

そう告げられた社員は、

さっきと違う種類の汗が噴き出すのを感じていました。

千葉県の柏市付近では、

この話は決してなさらないように...。

その当たりには、たくさん『日暮』さんがおられますので。


                      

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