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とはいえ(と、話は突然はじまる)、赤ちゃんが産まれたら、突然、すばらしき変身が起こるかというとそんなことはない。 出産すれば、たいていの人はお乳が出る。(らしい) ただ、出始める時期というのには個人差があり、出産後2〜3日で出始める人もいれば、1ヶ月くらいかかってようやく順調に出始める人もいる。 そして、出る量というのもまちまちで、充分に出る人もいれば、やっぱり母乳だけでは足りないという人もいる。これは、持って生まれたタンクの大きさにかかわることらしく... しかし、これがまた、「タンク」の大きさといいながら、「胸」の大きさとは全く関係ないというのが不思議なところである。(じゃー、大きな胸につまっているものは何なんだ?) |
出産すればお乳が出るという。 だけど、赤ちゃんが生まれた途端に「はい、お乳ですよ」という具合に簡単にはいかない。 最初はぜんぜん出ない。 詳しくは知らないけれど、胸には乳腺というお乳がとおる線が網の目のようにはりめぐらされていて、そこを通ってお乳は出てくるわけだけど... その線は今まで使われてなかったわけだから、少しばかり通りが悪かったりする。 だから、お乳が分泌されてもその細い線の中でつまって、うまく出口までたどりつけない。 これが、お乳がはるという状態なわけである。(と、私は勝手に理解している) お乳がはってもうまく出ない、これが最初の状態である。 「はる」というのは、「はれる」に近い。 それをマッサージしてほぐすわけだけど...「はれている」ものをマッサージするのだから、やっぱり痛かったりする。 お乳が出るまでには、やっぱり、それなりに苦悩の道がある。 |
こんな道のりを経て、お乳が出るようになってくるんだけど、さぁ出始めたからといって、これがまた最初っから”調子よく”なんて出なかったりする。 けっこうやっかいなヤツなのだ。お乳というやつは... 最初の頃、お乳というやつは、容赦なくばんばん出る...ほんとに容赦なく。 お乳がはりすぎると、はったお乳が痛くて寝返りもできなかったり、熟睡できなかったり... 寝ている首もとにつぅ〜っと汗が流れてきたと思ったら、ぬぐった汗が実はお乳だったり... 想像すらしなかった、そんな不思議なことが起こる。 それくらい容赦なく出る。 退院してからも、おふろに行こうと服をぬいだ瞬間、血がしたたるようにお乳がしたたり... 思わず、乳風呂になるかしら、なんて...いやいや、それどころではない。ほんとに。 |
そういうわけで、この「容赦のないお乳」の頃には、「搾乳」ということが必要になってくる。 「搾乳」つまり「乳搾り」である。 私の入院してた病院では、3時間おきに授乳の時間があり、赤ちゃん室にお母さんが集まって、赤ちゃんにお乳をあげるわけだけど、お乳をあげた後、この搾乳をする。 赤ちゃんの飲みきれなかったお乳を絞り出すわけだけど、飲みきれないくらいだから、そのお乳というのは当然余り物なわけで... だけど、なんだかもったいない。 これをどうにかできないものかと人はいろんなことにチャレンジしてみる。 看護婦さんがいうには、捨てるのはもったいないから、飼ってる犬にやったところ、犬がえらく太ったとか。 そういう話を聞くと、じゃぁ、うちも猫がいるからやってみようかとか、ハムスターにはどうかしらとか、いっそのこと、絞ってやるんじゃなくて直接飲ませたらおもしろいんじゃないかとか、じゃぁ、自給自足で自分で飲むのはどうだろうとか、牛もやっぱりお乳がはるんだろうか、とか... 最後には、いったい何を話してたんだかわからなくなったりする。 そんな話をしたら、ふと「いいこと思いついた!」というようにうちの母親が出した案は 「庭の植木にやってみたらどうかしら?」 .... いいような、悪いような... でも、なんだか枯れそうな気がしないでもなく...結局やってはみなかったんだけど。 ちなみに、これはのちのち雑誌で読んだんだけれど、コーヒーのミルクがきれたので、ためしにお乳を入れてみたら、それを飲んだダンナが下痢をしたという話もあった。 ぜひ、試してみたいものである(???) いや、別にダンナに恨みはないが... ちょっと試してみたい気も... |
最初はいろいろ苦労もあるけれど、人間の体というものはよく出来ているもので、これが3ヶ月もすると、ほとんどお乳がはるということはなくなり、赤ちゃんが乳首をくわえて吸ってくれると、それに反応してどっくどっくとはってくるという実に都合のいいお乳になる。
これで一安心、となるわけだけど... お乳というのはとってもデリケートなものらしく、せっかく出るようになっても、何かのはずみで突如として出なくなったりもする。それもいとも簡単に。 ほんとにやっかいなヤツなのだ。お乳というやつは... 大きなショックを受けたり、ストレスや疲れ、睡眠不足でも出なくなるという。 でも...疲れを感じず、睡眠不足にもならずに赤ちゃんの世話をするなんて、そんなこと誰ができるんだぁ?...疑問である。 ま、それはさておき、とにかくとてもとてもデリケートなのである。 |
が、そのデリケートなお乳のご主人はというと(つまり、私たちのことだけど)、そのデリケートとはどんどんかけ離れた、たくましさを身につけていく。 お乳は、「胸」というよりも完全に「乳タンク」という感じになる。 この間も、赤ちゃん連れで友達が2人遊びに来たんだけど、赤ちゃんが泣き始めると、 「お乳の時間だわ」 とばかり、すぐさま、何の躊躇もなく、ぺろんとシャツをめくってそのへんでお乳をやりはじめる。 そんな3人に囲まれて、1人、男のダンナは、なんだか目のやり場に困り、自分のうちにいるにもかかわらず、なんだかおろおろしていたりするのである。( ̄▽ ̄) ![]() |