命名について


まだお腹が大きかったころ、2人で赤ちゃんの名前を考えたんだけど...

名前というのは、実際に目にしてないものにつけるとなると、なかなか難しいものであり...

かと言って、実際に生まれてきてから考えるには、出生届を出す期限の「2週間」という時間はあまりにかぎられた時間であり...

そのへんがなかなか難しかったりする。


「菜月」という名前には、私たち2人の深い思い入れがある。

ダンナがまず

「オレ、なっちゃんっていうのがいいな。」

(おおかた、ジュースのなっちゃんのコマーシャルでも見て思い立ったのでしょう)

と言い、私が

「春生まれだから、春らしい漢字がつけたいなぁ。」

と言った。

それで、「菜月」

なかなか”深い思い入れ”のある名前(?)である。(いいのか、そんなので...)

というわけで、「菜」の字をつけた理由はたつのけれど(ほんとにたっているのか?)、じゃー「月」は何だと言われても困る。そういうところを深くついてはいけない。


これでも最初は、一応「画数」なんかも見たりもした。

が、そんなことまで言い出すと、ほんとに一生決まらなそうだったりしたので、ある日を境に「画数」は黙殺することにした。

姓名判断にもいろんな流派があって、それぞれで違うっていうし、そんなの所詮は「占い」よ、と自分に言い聞かせ...

女の子は、いずれ結婚すれば姓だって変わっちゃうわけだし、なんて理由もたて...

でも、もしかしたら結婚しないかもしれないし、その頃には男女別姓が当たり前の世の中になってたりして、なんていうのも考えないではなかったが...ま、それはおいといてっと。

でも、そうはいっても、やっぱりちょっとは気になったりもするわけで...

ちょっと自分の名前で姓名判断してみたら、これがまた、実によかったりすると、姓名判断なんて所詮は占いよ、と言いながら、なんだか非常に気分がよかったりする。

実は、けっこう気にしてるんじゃないか...(^^ゞ


「菜月」

奇抜な名前じゃないし、字だっていたってシンプルで親しみやすいと思ったのだが、10人が10人、

「これはいい名前だ」

と絶賛する名前というのは存在しないもので...

とーさんは

「『月』の字がなんだか裏寂しい。」

と言い、かーさんは

「画数があんまりよくない。」

と言い、1人、母親がたのばーちゃんが

「まぁ、モダンな名前だわ。」

と言ってくれた。

ま、でも、名前というのは、いったん決まってしまえば、あとは「慣れ」の問題であり、

「なっちゃん、なっちゃん」

と言って1週間もたってしまえば、なんだか、菜月は最初から「菜月」じゃなければいけなかったような、まるで「菜月」という名前しかなかったかのような気がしてくるから不思議なもので...

ただ、

「なっちゃん」

とみんなが呼んでる中、1人、きちんと

「なつきちゃん」

と呼んでいたはずのうちのばーちゃんは、というと、ある日突然、それが

「なつみちゃん」

になってたりして...(^^ゞ

「ばーちゃん、なっちゃんは『なつみ』じゃなくて、『なつき』よ。」

訂正すると、

「ほうか?」

さも、今はじめて聞いたというふうに答えるばーちゃんなのであった。


26週を少しすぎたころ聞いた

「たぶん、女の子でしょう。」

という先生の言葉を信じて、男の子の名前をまったく考えてなかった私たちは、とりあえず女の子が産まれてきたことにほっとしたが...そこには、残された課題がひとつあった。

それは、子供が成長して

「どうして、『菜月』って名前にしたの?」

と聞いてきた時になんて答えたものか、ということである。

実際、名前をつける時、先に「呼び名」から決めて、後から漢字を決めるという人は多い。

「ゆう君」にしたいから「祐二」にしたとか、「まさし」というのを先に決めて、あとで字画で漢字を考えたとか。

そうなると、やはり、名前の意味は後から考えることになるわけで...

つけた漢字の意味を調べて

「心の大きい人になってもらいたかったのよ。」

とか

「健康に育ってほしかったのよ。」

とか、それらしいことを言うわけなんだけど...

「なるほど、その手があったか。」

と思って、「菜」の字の意味を調べたら「野菜、おかず」と書いてあった(^^ゞ

つまり、「菜月」は「野菜に月」「おかずに月」...ときたもんだ。

いったい、この字で、どんな人に育ってほしかったとこじつければいいというのだ...(-_-;)

困ったものである。


ちなみに、

「私は、なんで『民』になったん?」

参考までに、とーさんに聞いてみたら

「おまえか?お兄ちゃん時、うちで勝手に名前つけたもんだから、それじゃぁ、おまえん時は、お寺さんに頼もうか言うことになって、住職の『栄民さん』から一字をもろうた。」

29歳にして、自分の名前が、実に、実に”深い思い入れ”???のある名前であることが発覚したのだった。


ところで、「菜」の字は、私としては「菜の花」の「菜」のつもりなわけだけど...

入院中、

「名前はもう決めてるんですか?」

看護婦さんに聞かれ、

「菜月にしました。」

と答えたら、

「ああ、そうねぇ、菜っぱのおいしい季節だものねぇ。」

と言われた。

(あ、いや、『菜』は『菜の花』の『菜』で...)

 

んで、出生届をかーさんに出してもらったんだけど、

「ちゃんと漢字間違えんように確認しとかんとね。『なつき』の『な』は『菜っぱ』の『な』でいいんよね?」

とかーさん。

(あ、いや、だから、『菜』は『菜の花』の『菜』で...)

 

それなのに、出産祝いのお返しを買いに行った時、

「それでは、おのしの方はお子さまのお名前をお入れしますので。ええっと、この『な』は『菜っぱ』の『菜』でよろしいですか?」

(だ・か・ら、『菜』は『菜の花』の『菜』だっちゅうに!)

誰にもわかってもらえなかったりする。

 

というわけで、菜月、生後6ヶ月。

「どうして、『菜月』って名前にしたの?」

その問いへの回答は、私たち2人の最重要課題としていまだ残されたままである。