債権法改正 要綱仮案 情報整理

第1 公序良俗(民法第90条関係)

 民法第90条の規律を次のように改めるものとする。
 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

中間試案

2 公序良俗(民法第90条関係)
  民法第90条の規律を次のように改めるものとする。
 (1) 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は,無効とするものとする。
 (2) 相手方の困窮,経験の不足,知識の不足その他の相手方が法律行為をするかどうかを合理的に判断することができない事情があることを利用して,著しく過大な利益を得,又は相手方に著しく過大な不利益を与える法律行為は,無効とするものとする。

(注) 上記(2)(いわゆる暴利行為)について,相手方の窮迫,軽率又は無経験に乗じて著しく過当な利益を獲得する法律行為は無効とする旨の規定を設けるという考え方がある。また,規定を設けないという考え方がある。

(概要)

 本文(1)は,民法第90条を維持した上で,同条のうち「事項を目的とする」という文言を削除するものである。同条に関する裁判例は,公序良俗に反するかどうかの判断に当たって,法律行為が行われた過程その他の諸事情を考慮しており,その法律行為がどのような事項を目的としているかという内容にのみ着目しているわけではない。このような裁判例の考え方を条文上も明確にしようとするものである。
 本文(2)は,いわゆる暴利行為を無効とする旨の規律を設けるものである。大判昭和9年5月1日民集13巻875頁は,他人の窮迫,軽率又は無経験を利用し,著しく過当な利益を獲得することを目的とする法律行為は公序良俗に反して無効であるとし,さらに,近時の裁判例においては,必ずしもこの要件に該当しない法律行為であっても,不当に一方の当事者に不利益を与える場合には暴利行為として効力を否定すべきとするものが現れている。しかし,このような法理を民法第90条の文言から読み取ることは,極めて困難である。そこで,本文(2)では,これらの裁判例を踏まえ,「困窮,経験の不足,知識の不足その他の相手方が法律行為をするかどうかを合理的に判断することができない事情」という主観的要素と,「著しく過大な利益を得,又は相手方に著しく過大な不利益を与える」という客観的要素によって暴利行為に該当するかどうかを判断し,暴利行為に該当する法律行為を無効とするという規律を明文化するものである。これに対しては,上記大判昭和9年5月1日の定式に該当するもののみを暴利行為とすべきであるという立場からこれをそのまま明文化するという考え方や,暴利行為の要件を固定化することは判例の柔軟な発展を阻害するとしてそもそも規定を設けないという考え方があり,これらを(注)で取り上げている。

赫メモ

 中間試案(1)と同じである(中間試案概要の該当箇所参照)。中間試案(2)の規律(暴利行為に関する規律)を設けることは、その要件について合意形成ができず、見送られた(部会資料82-2、1頁)。

現行法

(公序良俗) 
第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり