債権法改正 要綱仮案 情報整理

第38 寄託

1 寄託契約の成立(民法第657条関係)
(1) 要物性の見直し

 民法第657条の規律を次のように改めるものとする。
 寄託は、当事者の一方が相手方のためにある物を保管することを約し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

中間試案

1 寄託契約の成立等
 (1) 寄託契約の成立(民法第657条関係)
   民法第657条の規律を次のように改めるものとする。
  ア 寄託は,当事者の一方が相手方のためにある物を保管することとともに,保管した物を相手方に返還することを約し,相手方がこれを承諾することによって,その効力を生ずるものとする。

(概要)

 本文アは,寄託を諾成契約に改めるものである。寄託を要物契約とする民法の規定は,現在の取引の実態とも合致していないと指摘されていることを踏まえ,規律の現代化を図るものである。

赫メモ

 中間試案(1)アからの変更はない(中間試案概要、参照)。

現行法

(寄託)
第657条 寄託は、当事者の一方が相手方のために保管をすることを約してある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

 (A=受寄者,B=寄託者)
【有償寄託の場合,報酬の支払と寄託物の引渡しは同時履行の関係となる。】大審院明治36年10月31日判決・民録9輯1204頁
 A(倉庫業者)に物品を寄託したBが返還を求め,これに対してAが同時履行の抗弁権を主張した事例のようである。
 民法665条により準用されている民法648条2項によれば,受任者は委任された法律行為を行った後でなければ報酬を請求することができない旨規定されているが,この趣旨は,委任者に対する一切の義務を履行した後でなければ報酬を請求することができない趣旨ではなく,委任者が報酬を提供するまでは,受任者が委任者に対して負担する義務の履行を拒むことができるというものであって,したがって,有償寄託の場合,受寄者が報酬を提供するまでは,受寄者は寄託物の返還を拒むことができる。