債権法改正 要綱仮案 情報整理

第38 寄託

1 寄託契約の成立(民法第657条関係)
(3) 無償寄託における受寄者の解除権

 無償寄託における受寄者の解除権について、次のような規律を設けるものとする。
 無償の寄託の受寄者は、寄託物を受け取るまでは、契約の解除をすることができる。ただし、書面による寄託については、この限りでない。

中間試案

1 寄託契約の成立等
 (1) 寄託契約の成立(民法第657条関係)
   民法第657条の規律を次のように改めるものとする。
  イ 有償の寄託の寄託者は,受寄者が寄託物を受け取るまでは,契約の解除をすることができるものとする。この場合において,受寄者に損害が生じたときは,寄託者は,その損害を賠償しなければならないものとする。
  ウ 無償の寄託の当事者は,受寄者が寄託物を受け取るまでは,契約の解除をすることができるものとする。ただし,書面による無償の寄託の受寄者は,受寄者が寄託物を受け取る前であっても,契約の解除をすることができないものとする。

(概要)

 本文イは,寄託を諾成契約に改めることに伴い,有償寄託について,寄託物受取前の寄託者による解除についての規律を定めるものである。寄託物受取前には,寄託者が自由に寄託を解除することができるとともに,これによって受寄者に生じた損害を寄託者が賠償しなければならない旨の規律を設けている。寄託は寄託者のためにされる契約であることから,寄託者が契約締結後に寄託することを望まなくなった場合には契約関係を存続させる必要はなく(民法第662条参照),受寄者に生じた損害があればそれを賠償することで足りると考えられるからである。
 本文ウは,無償寄託について,寄託物受取前の各当事者による解除についての規律を定めるものである。寄託物を受け取るまで各当事者は自由に契約の解除をすることができることを原則としつつ,例外的に書面による無償寄託の受寄者については寄託物の受取前であっても契約の解除をすることができない旨を定めている。使用貸借における目的物引渡し前の規律(前記第39,1(2))と同趣旨のものである。

赫メモ

 規律の趣旨は、中間試案(1)ウに関する中間試案概要のとおりである。なお、要綱仮案においては、無償の寄託の寄託者は要綱仮案(2)の規律によって解除が可能である。

現行法

(寄託)
第657条 寄託は、当事者の一方が相手方のために保管をすることを約してある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり