G3 往復書簡

1999年3月〜

 以下は、1999年春に公開された「ガメラ3」に関して、「友人U」と交わしたメールを公開するものです。
 メールの公開を許可してくれたUさんに感謝。

1)タイトル「ガメラは」/発信者:くり(1999/3/23)
面白かった?
俺はまだ観れずにいる。

2)タイトル「返信:ガメラは」/発信者:U(1999/3/23)
おもしろかったと思う
きっとおもしろかったに違いない
もっとおもしろくなるはずなのだが
それをいうのは贅沢というものだろう

彼らはBESTの仕事をしたと思う

3)タイトル「返信:ガメラは」/発信者:くり(1999/3/23)
なるほどー。
ますます、見たくなった。
何とか今週中に。

4)タイトル「返信:ガメラ>観たぞ」/発信者:くり(1999/3/29)
面白かった。
倉田わたるさんの感想も面白かった(ここここ。特に、二つ目)。
個人的には、あのラストをバッドエンドだと云ってる人が結構いるのが意外だ。

5)タイトル「返信:ガメラ>観たぞ」/発信者:U(1999/3/29)
ではちょっとだけ

当然あのラストについて文句を言うつもりはない
抜群の効果を出しているし、ガメラの物語としては
きれいに完結している。
ただ奇策であることは間違いないな
大団円で同じテンションが出せればBETTER
個人的には熱烈支持なのだが、ガメラシリーズは
王道のまま最後まで突っ切れなかったということか。
奇策を喜ぶ観客だけを相手にしてはあかんのです。
なぜならガメラシリーズの相手はもはや特撮ファンでも
アニメファンでもないと思うから。

まあそれは映画の出来とは別次元なのでおいといて
要は前田愛(役名忘れた)なのです。
G3のストーリには2本の柱があって
1本はカタストロフィに向かう世界で
もう1本が前田愛の物語なわけだ。
前田愛がイリスに出会うまでの時間を
せめてあと30分書き込めたら
すげえ映画になったと思うので
それが残念でならん
まあそしたら回転率が悪くなって大赤字だろうが
おそらくそういう制作上のもろもろの事情があった中で
取捨選択をし、なんとか形としてまとめ上げた
その結果としてこのできを見れば、これ以上を望むのは
酷だろう。彼らはBESTの仕事をしたのではないかとは
そういう意味です。

6)タイトル「返信:ガメラ>観たぞ」/発信者:くり(1999/3/29)
 あのラストが表現しているものは、基本的に1作目と同じだと思う。未来に対する
不安と、その不安を払いのけるかすかな希望。ただ、1作目の不安がまだ漠としたも
のだったのに対して、3作目のそれは、より具体化している。なぜ、そうなったかと
いうと、これはもう、1作目か
ら4年の間に、酒鬼薔薇の事件や毒カレー事件や不景気やらが次々に訪れたからでは
ないか。制作者側の、日本の先行きに対する不安が反映されているのではないかと思
う。
 少なくとも個人的には、1999年の今の気分に、とても相応しい幕切れだと感じ
た。
 で、未来に対する不安を3作目のラストで表現するにあたって…、どうなんだろう、
やっぱ大団円にはしようがなかったんだろうなあ。何か手があるかな?ギャオス軍団
を殲滅した後に、「でもまだどこかにギャオスの卵が…」じゃあ、一作目と同じだし
(というか、初代ゴジラと同じか?王道ってそういうものかも)。
 どっかに誰かが書いていた、「ギャオス軍団の襲来に対し、海底に沈んでいた無数
のガメラの死骸が蘇る」って絵は、観たい気がするけどさ。予算が許さんか。

 それはともかく。

>前田愛がイリスに出会うまでの時間を
>せめてあと30分書き込めたら
>すげえ映画になったと思うので
>それが残念でならん

 それは、具体的には何が不足しているんだろう。彼女のガメラする憎しみの描写が
足りないってことかな。それともイリスに出会う迄の展開が強引ってことか(イリス
発見は、あまりに偶然な気がする)。個人的には、あそこまで伝奇モノに振るのなら、
ガメラを憎む気持ちを利用さ
れた(呼び寄せられた)という、展開があっても良かったように思う。

 それにしても面白い映画だったと思う。これなら、いろんな人に勧められるんじゃ
ないか。怪獣・特撮好きや、SF好き以外にも。
 脚本家は本作について「恋愛映画」を目指したと云っている。これはガメラ2の時
に、映画の完成度と集客が連動しなかったこと、特に一般客が集まらない現実を目の
当たりにし、さらにはタイタニックになぜこれほど客が集まるのかを考えた上で、方
向性を決めたものらしい。
 そこで目指したものが成功していたかどうかは、僕にはよくわからない。ただ、見
終えた後に、前田愛(俺も役名忘れた)に気持ちが行っていたこと、一緒に観た人と
「このあと、彼女どうやって立ち直るんだろうねー」などと話せる映画だったことは
確かであり、その点が、これまでの怪獣映画と大きく違う点であったように思う(上
手く表現できないんだけど)。
 しかし、ホントに前田愛どうするんだろう。親族・村人を惨殺した記憶を、イリス
と共有しちゃったわけでしょ。つうか、成長したイリスは、イリス+前田愛だったわ
けで。

7)タイトル「返信:ガメラ>観たぞ」/発信者:U(1999/3/29)
>
>>前田愛がイリスに出会うまでの時間を
>>せめてあと30分書き込めたら
>>すげえ映画になったと思うので
>>それが残念でならん
>
> それは、具体的には何が不足しているんだろう。彼女のガメラする憎しみの描写が
>足りないってことかな。それともイリスに出会う迄の展開が強引ってことか(イリス
>発見は、あまりに偶然な気がする)。個人的には、あそこまで伝奇モノに振るのなら、
>ガメラを憎む気持ちを利用さ
>れた(呼び寄せられた)という、展開があっても良かったように思う。

あの男子と前田の関係が書き込み不足と言うこと
映画の中で前田は一度も男子に心を開いていない
このままではあの男子はただのストーカーだ
ガメラに対する憎しみの描写が足りないのではなくて
それが癒されかける描写が欲しい
そのきっかけとしてあの男子が機能しないと
前田はイリスから出られないよ

付け加えるならその30分を描くために
どこを削ればいいんだと聞かれれば

おいらは断腸の思いで渋谷壊滅場面を切る

(ホントはゲーマーを切りたいのだが、うまく
 京都に舞台を移す手が見つからん)

8)タイトル「ガメラ関係」/発信者:U(1999/3/29)
忙しくて断片的にしかコメントできてなかった
ちょっと時間ができたので
まとめて

物語は綾奈(思い出した)に救いを用意してやるか
という点で大きく違うのだけど、一応
・綾奈は助かった、・男子(未だ判らず)が助けに来た
という点から救いを用意する前提で物語が作られていると見る。
その視点から見て弱いところ、
綾奈はどこに還りたかったのか?
綾奈の中では、家族への思い=ガメラへの憎しみ、なんだな
それは表裏一体とか、不可分とかではなくてまさしく同じもの
なわけだ。なぜ飼い猫の名をあんな奇怪な生物に付けねばならなかったのか?
→疑似家族(=ガメラへの殺意)
だから本来イリスと一体化するのは望むところだったはずなわけだ
そこは還るべき場所(家)だったんだな
ところが綾奈がイリスの体内で見たものは”誰もいない”食卓だった、
(此の描写にはぞっとした、誰だこんなこと考えた奴は!!)
しかも親族殺しの映像まで見せられて、
この時綾奈は完全な喪失者になった。
彼女にはもはや還るところはないのだから、だから「”誰か”助けて」としか
言えないんだ。
こういう場合、ガメラの対処としてはイリスもろとも焼き殺してさしあげるのが
正しい。(いやそういう線もありとは思うよ、まじで)
ただそうはならず、男子(未だ判らず)の抵抗をきっかけに綾奈はイリスへの吸収に
抵抗も示している。→男子(未だ判らず)を還る場所として設定しようとした?
ただ、その為には綾奈と男子(未だ判らず)の関係が不明瞭すぎるわけだ。
還るべき二人の日常がわからないわけだ。(そしてそれがやはり還れないもので
あることが胸に迫ってこないのだ)

というのが一応の理屈
単純な話、綾奈が最初からガメラへの殺意に満たされているよりも
一旦男子(未だ判らず)に心を開いて、現在の日常にとけ込みつつある
状況を描いておいた方が話に幅が出るんだな。
一旦弛緩された愛情(=殺意)が渋谷壊滅の報で反動のように一気に綾奈を支配していく
→イリスへの想い(これはやはり病的です、彼女はある意味狂ってます、だから狂う前が
必要なのです。)という流れの方が物語に加速が付くと思うわけだ。
綾奈を救いたいという男子(未だ判らず)の想いも説得力が出るし、
そうすると大迫警部も生きる。

ん〜うまく書けんな
ただ文句を付けているわけではないんだ
これはすごい映画なのだよ既に
前に王道を突っ切れなかったとかいたが
自己の内面と世界の破滅を同義で描き得たのは
やはりマイナーだったんだよな、これまで

9)タイトル「返信:ガメラ関係」/発信者:くり(1999/3/30)
なーるほど。
「誰もいない食卓」の意味するところがわかった。もう一度観たくなったよ。

えーと男子の名前は「龍成」だね。

10)タイトル「返信:ガメラ関係」/発信者:くり(1999/3/30)
>前に王道を突っ切れなかったとかいたが
>自己の内面と世界の破滅を同義で描き得たのは
>やはりマイナーだったんだよな、これまで
                   ↑
                   ここ、途中で切れてるわけじゃないよね?


んー、そゆのは、マイナーっすか。
マイナーさを、あのきらびやかな特撮が包み隠しているのか。

もしかすると、
自己の内面も世界も、そのまま崩壊していくとデビルマン(原作)になっちゃうのかな。

11)タイトル「返信:ガメラ関係」/発信者:U(1999/3/30)
これは勢いだな
単なる印象批評だった撤回する
あのラストにマイナーを感じるのは
実はそれを絶賛するものたちの心の奥底に
「あいつらやりやがったな(ニヤリ)」
という共犯者意識があるように思えたという後付けで
詳細に考えた訳じゃない

>
>んー、そゆのは、マイナーっすか。
>マイナーさを、あのきらびやかな特撮が包み隠しているのか。

マイナーというのは正しくないな
マイナーは状況を指す言葉でジャンルではないんだよな本来
漱石の「それから」なんてのもあるし、
ただ共犯者意識を抜きにしても
マイナー臭さってのは感覚的には非常にあるんだな
それがなんなのか・・・

個人的に気に入っているシーン
右腕を貫かれながら
闘志あふるる目でイリスをにらみつけるガメラ
奴の目に猪木を見た!!
猪木の口癖、
「どうってことねえや!」
が頭をよぎった

12)タイトル「返信:ガメラ関係」/発信者:くり(1999/3/30)
>ただ共犯者意識を抜きにしても
>マイナー臭さってのは感覚的には非常にあるんだな
>それがなんなのか・・・

うーん。
あのラストについて云えば、奇策として受け止めるでもなく、
中途半端なものを見せられたと受け止めた客が、かなりの数
存在するみたいなんだよね(あちこちのBBSをみた印象)。

わかる人にわかってもらえればいい作り…なのか?
そうであるならば、確かにマイナーなのかもしれない。

13)タイトル「返信:ガメラ関係」/発信者:U(1999/3/30)
判る人にだけ判ればいいという
考えではないでしょう、いくらなんでも。
それは幼稚すぎる。
ただ観客の中には「俺にはわかる」という
優越感から不当に絶賛しているものも
いるんじゃないかな

つづく

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