ESTRELLITA

「ESTRELLITA」は「炎の青春貴族」の番外編です。

主役はチャーリー君の相棒セイちゃん。
彼の故郷スペインでのフラメンコダンサー「カルロス・テオドコプリ」としての顔をお見せした作品です。

セイちゃんがフラメンコを本格的に踊るようになった経緯や恩師カルメン・アマヤの引退公演にまつわる彼らのフラメンコに対する情熱等を書き綴った作品です。

作品は、前・中・後編に分かれておりますが、実は後編は未だ執筆できておりません(~_~;)

お気に入りシーン&あらすじ

「前編」

生粋のジプシーでないことから、仲間と認めてもらえず、孤立していた少年カルロスは、故郷出身で今やスペインで1、2を誇るフラメンコ・ダンサー「カルメン・アマヤ」を頼って師事を仰ぎます。

厳しいレッスンに耐え、ついにプロデビューの誘いを受けるまでに成長するカルロス。しかし、彼はそれを断ります。自分がフラメンコを学んだのは、プロになりたかったからではなく、せめて踊りだけでも、故郷の仲間達に自分という存在を認めて欲しかったからであると。

数年に渡る、彼女の取り計らいを感謝し、カルロスはアマヤの元を去ります。そして、念願通り、故郷の人々にその踊りを認められ、迎え入れてもらうことが出来ます。

数年経ったある時、新聞でアマヤが体調不良を理由に、引退を宣言、引退公演には彼女自らが「愛弟子」と云う無名のダンサーをパートナーに起用することを公表する記事が載ります。

「中編」

公演関係者の反対を押し切ってアマヤはカルロスを説得し、自分の引退公演のパートナーの大役をほぼ強引に引き受けさせます。

ジプシー出身の彼女は、影の生活を嫌い、光溢れる世界が認めるフラメンコダンサーとしての道を歩いてきました。逆に、ジプシー達に受け入れてもらいたくてあえて影の道を歩み始めたカルロス。自分の引退公演に、スペインのことわざ「光と影」を真の意味で表現できるフラメンコを踊るには彼の存在が不可欠であるとアマヤは考えていたのです。

彼女の真意が理解できない周囲からのプレッシャーで、自分の踊りを見失っているカルロスでしたが、アマヤと親友チャーリーの励ましでやっと「魂」を込めた踊りと自信を取り戻します。

そして、引退公演の幕は上がるのでした。

「後編」

公演関係者の不安が募る中で、引退公演の幕は上がりました。最終幕で長年アマヤのパートナーを務めていたアントニオの飛び入り参加で舞台は盛り上がり、またその時初めて、全ての観衆にアマヤがパートナーにカルロスを起用した理由が解ったのでした。アマヤが求めていたバイレ(踊り)は、まさにカルロスをパートナーに迎えることによってのみ完成するものであった事が・・・。

幕が下りると、楽屋にはマスコミが詰め掛けます。「あの無名の新人は一体何者なのか?」と。アマヤの容態を気遣うカルロスに「約束は守る」とアマヤはマスコミの目から彼を逸らせます。自分のワガママの為に、プロのダンサーにはならいと心に決めていた彼に一度限りの約束で、自分の公演に付き合わせたからでした。

アマヤは堅く口を閉ざし、マスコミはカルロスの素性を知ることは出来ませんでした。一度きりの栄光を受けたカルロス・テオドコプリの名は、幻のバイラオールとしてフラメンコ界を賑したのでした。

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