前歯部叢生の歯科矯正治療 (非抜歯治療)

症例:初診時年齢は5歳11ヶ月で来院されましたが、まだ前歯は永久歯になっていなかったので、前歯4本がはえかわるまで待って、治療開始しました。

 (乳歯列の段階で、やたらと拡大床を入れる歯科医がおりますが。ちゃんと診断できませんので、ウチでは基本的にはやりません。)

 

治療開始時(2016年03月25日):右側の臼歯部が狭く、交叉咬合になり、かつ下顎の正中が右にズレています。上顎側切歯の萌出スペースが不足しているため口蓋側転位しております。
上下の歯の真中が合っていないと言うことは、下の顎も右に曲がっているわけです。(右下の写真を参照)

治療開始(2016年04月27日):上顎に拡大床を装着。上下の正中があってきてますので、骨格的に下顎骨の左右の大きさが違うのではなく、かみ合わせが原因で下顎の右側に偏位していることがわかりますね。

上顎の拡大終了(2016年08月22日):4ヶ月だけの歯科矯正治療。

永久歯の萌出を観察中(2018年05月14日):あとは、う蝕予防をしながら、見守るだけ。
一応、終了(2019年12月05日):下顎の第2小臼歯が40度ぐらい捻転しているのでかみ合わせが甘いですが、これ以上の治療を希望されませんでした。
治療前後の正貌の比較:顔が真っ直ぐなほうが格好良いですね。
 

☆治療のポイント

 1)舌房(舌の入る空間のこと)が狭く、また上顎に舌がちゃんとくっつかない症例(低位舌と言います)ですと、歯列は正常に発達しません。その結果、一番上の写真のように歯並びはガタガタで、下顎も曲がった顔になってしまいます。

 2)この症例で使ったのは、上顎の拡大装置ひとつだけ、治療は検査料を含め30万円もかかっておりません。この金額を高いと考えるか、最後の状態を見て、安いと考えるかは個人の価値観の問題だと思います。

 3)しかし、見るからによくかめる歯ならび、歯みがき(掃除)がしやすい歯ならびは、最初の状態を放っておいても手に入らなかったと思います。(自然に治るなんて事は無いでしょう。)

 4)かみ合わせが悪いことが原因で、顔の曲がりが生じます。曲がったまま、下顎骨が成長すれば、大人になっても曲がったままです。骨ができ上がる前の成長期にこういった症例を治す意味はあると思います。(ただし、遺伝的に顎偏位がある家系では、上手くゆかない可能性があります。)

 ※写真には現れませんが、舌のトレーニングや歯みがき指導、う蝕予防処置をきっちりやっているから、最後のきれいな歯列が完成するわけです。

※どんな症例でも歯列を拡大すれば非抜歯治療になる訳ではありません。最終的な治療目標を設定してやっている歯科医とそうでない(行き当たりばったりの)歯科医との違いはあります。

 


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