ご質問:非抜歯治療の限界(下顎骨)


お答え  非抜歯治療を希望される方が多くおりますが、無理なものは無理です。上顎骨の後方限界については、別のページ(非抜歯治療の限界=上顎編)で説明してありますので、今回は下顎骨の限界について簡単にご説明しましょう。

 側方セファログラム(頭部X線規格写真)です。色分けしてあるのが下顎骨です。下顎骨は1つの骨ですが、その性質(発生学的な意味合い)から4つの部分に分けて考えられます。

1)歯槽骨の部分(図の緑色の部分):これは、間違いなく歯のはえる骨の部分です。もし、歯がなくなるとこの部分はなくなります。

2)長管骨の部分(図の黄色の部分):手や足の骨と同じように身長が伸びると下顎骨はその長さを伸ばします。この部分が身長の伸びと比例して伸びる部分です。 他の要因もあります。舌や口唇など口腔周囲菌、気道、姿勢などの影響も受けます。簡単な問題ではありません。

3)側頭筋の影響を受ける部分(図のピンク色の部分):この部分に側頭筋という咀嚼筋が付きます。この力の働き方(強さ方向)によって、骨の形が変わります。

4)咬筋の影響を受ける部分(図の赤色の部分):この部分に咬筋が付きます。咬筋の活動によって、この部分の骨の形が変わります。歯がなくなったり咬む必要のない軟かいものばかり食べていると、咬む力が弱くって(咬筋が働かなくなって)この部分は細くなってきます。 徳川家の歴代将軍の顔を見て頂ければわかるでしょう。戦場を駆けめぐり固いものを食べていた家康さんは、エラの張った顔ですが、最後のほうは細面の顎のすらりとした優男タイプですね。毒味をして冷めた料理を将軍様に食べさせるためには、おのずと軟らかい食べ物が多くなったということです。ご興味のある方はこちらをどうぞ。→将軍の骨(骨は語る)

 で、本題です。歯は歯槽骨の部分(緑色に部分)にしかはえません。また、図の緑の部分の水平部分にしかはえません。(ピンクの部分にははえません。)

 下顎の大臼歯を後ろに動かしたところで、緑の水平部分が増えるわけではありません。この部分が増えるためには、その下の土台となる黄色の部分の長さが増えないといけないわけです。黄色の部分は身長の伸びに比例するわけですから、矯正治療で(矯正の装置で)緑の部分の歯を動かして、どうこうできるものではありません。

 身長が伸びれば歯のはえる場所が大きくなる可能性があります。非抜歯で上手くゆくのに必要な条件は身長の伸びであるわけです。顔の小さな可愛い子ちゃんの歯並びはグチャグチャなのは、顔が小さい=顎が小さい=歯のはえる場所が足りない、ということなのです。


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