この文章は1998年に書いたものです。

浜松市おける高齢者の口腔内状態の実態

第1報

老健施設(白梅ケアホーム)での調査結果

 

コスモス・ケア・スタッフ

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井上 佳代子、池田 いづみ、伊藤 多美子、鈴木伊予子、山田 圭子、

小宮山 ひろみ、三谷 敬子、金井 晃子、竹田 祐美、

  本樫 佳世、竹田 明美、影山 洋子、高田 美穂、鈴木 さと子、

柏木 照正、天野 重直、藤本 雅清、糟谷 宇一、糟谷 政治

 

 

緒言

 欧米諸国に類を見ないスピードで、日本は高齢者社会へと移行中である。この現象に対して、厚生省は政策としてゴールドプラン・新ゴールドプランを掲げ、ハードの面での整備が進められている。

 ケアというソフトの面について考えてみれば、医科においては不十分ながらも政策の中に取り込まれている。しかし、歯科においては在宅歯科治療という日の当たる部分もあるが、老人施設においては設立基準にも歯科医師の参加が必要とされておらず、口腔ケアという面からは社会的に放置されている部分と考えられる。

 その原因が、高齢者におけるベースライン・スタディとしての調査・報告1)がわずかである可能性も考えられる。

 そこで、今回コスモス・ケア・スタッフの協力を得て、老人保健施設の口腔実態調査を行い、若干の考察を加えた。

 

調査対象と方法

T..調査対象

 白梅ケアホームの入所者51名(男:1名、女:50名)を調査した。

 

表1 年齢構成

年齢(歳) 人数(人)

65〜74

75〜84

23

85〜94

19

95〜

合計

50

 しかし、統計処理を行う際に性差の要素を取り除くため、以下の調査では、男性1名を除外し、女性のみで処理した。よって、調査対象者は、女性50名であり、年齢層は69歳2ヶ月から967ヶ月で、平均年齢は8310ヶ月であった。年齢構成を表1に示す。

 

U.調査方法

 今回の調査のために作製した調査票は、「口腔ケアのための調査票」2枚と経年的な変化を調査する目的から「歯科検診表」1枚の計3枚からなる。

 「口腔ケアのための調査票」の1枚目は、寮母さんや看護婦さんなどふだんの生活を見ている方に記入をお願いした。2枚目の調査票および3枚目の検診表については、検診基準を予め決め、1週間前と調査当日の朝の2度にわたり、調査担当者全員に徹底させた。

 

V.調査内容

1.口腔ケアのための調査表

 以下の1)から7)は寮母さんや看護婦さんに記入をお願いした。

 8)以降は歯科衛生士による聞き取り調査と検診である。

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 1)困っている事:歯科的な主訴とその発言者の記入をお願いした。

 2,3,4,5)既往歴、現病歴、治療内容、常用薬剤:医科的な背景の調査を目的とした。

 6)日常生活動作:老健施設ということもあり、精神的な面のADL調査などは行わず、「移動」についてのみ記入をお願いした。

 7)口腔清掃:誰が、いつ、何を使ってするかを調査した。あわせて、うがいができるかどうかの記入もお願いした。

 8)食事:食べ物の好ききらい、食欲の有無、ふだん食べている食物の性状、食事の量と時間、食事について希望などを調べた。また、間食についても、その回数と内容を調べた。

 9)義歯:義歯所有の有無、義歯の使用・未使用を調べ、適合状態を診査した。

 10)口腔内状態:口唇の状態、顎堤の高さ、舌の動きと大きさ、硬口蓋の状態、粘膜の状態、小帯の状態について診査した。

 11)口腔内の自覚症状:患者さんと直接対峙して、困っている事を直接聞き取り調査した。

 12)口腔機能:開口状態、咀嚼障害、嚥下機能について、正常か異常か聞き取り調査をし、あわせて診査を行った。

 13)コミュニケーション:精神的なADLとして、聞き取り調査を通じての理解力、発語、聴力について、調査者が(問題なし、困難)で判断した。

 

2.歯科検診用紙

 1)口腔内の状態:歯牙については、WHOの検診法に準じて診査した。あわせて、歯肉炎と歯の動揺度も診査した。検診基準は以下の通り。

 歯肉の状態:Loe & Silness の Gingival index による

 0=正常歯肉

 1=軽度の炎症。軽度の色変化、浮腫があるが、探針により出血しないもの

 2=中等度の炎症。発赤、浮腫があり、探針により出血するもの

 3=高度の炎症。著しい発赤、浮腫、自然出血の傾向、潰瘍形成のあるもの

 ※本来は頬側、舌側、近心、遠心の4部位を調べるが、今回は頬側だけで判定。

 

 歯の動揺度

・0度=生理的な動揺のもの(0.2mm以内)

・1度=唇舌方向にわずかに動揺するもの(0.21.0mm

・2度=唇舌方向に中等度に、近遠心方向にわずかに動揺するもの(0.21.0mm

・3度=唇舌方向、近遠心方向に動揺がみられ(2.0mm以上)、歯軸方向にも動揺するもの

2)口腔清掃状態:良、普通、不良の3段階で評価。またその内容、すなわち食物残渣、歯垢、歯石も調査した。

3)義歯の清掃状態:義歯所有者には義歯の清掃状態も調査した。これも良、普通、不良の3段階であり、またその内容、すなわち食物残渣、歯垢、歯石も調査した。合わせて清掃の際に使われる器具も調査した。

4)咀嚼能力の評価:朝倉らの報告にある17品目の食品について、同じ評価法で調査した。調査内容と判定基準は以下の通り。

・調査食品

 バナナ、柔らかいうどん、牛乳につけたパン、マグロの刺し身、ご飯、ウナギの蒲焼き、茄子の煮付け、きゅうり、生シイタケの煮付け、赤飯、リンゴ、白身の刺し身、キャベツの千切り、薄切り牛肉、薄切り豚肉、酢ダコ、古たくあん

・判定基準

 そのまま食べられる=0点

 小さくしたり、柔らかくすれば食べられる=1点

 咬めない=2点

 咬んだことがない=3点

5)食事中の「むせ」の有無と頻度についても調査した。

6)コメント:入所者のご意見を直接聞き取り調査した。

 

結果

1.口腔内の状態について「主訴」を訴えた者は6名。内訳は以下の通り。

@入れ歯が合わない=2名、A歯が痛い=1名、B歯冠の破折=1名、C頬を咬む=1名、

D下唇のマヒ=1名

2.既往歴は、以下の通り。(重複あり)

骨粗鬆症=7名、胃腸障害=6名、脳血管障害=4名、心疾患=4名、眼疾患=5名、

関節障害=6名、呼吸器疾患=6名、高血圧=6名、痴呆・パーキンソン氏病=2名、

ガン=2名

3.現病歴は、以下の通り。(重複あり)

痴呆=8名、脳血管障害=4、骨粗鬆症・骨折=17名、心疾患=3名、難聴=5名、

高血圧=3名、糖尿=4名、パーキンソン氏病=4名、関節疾患=2名、呼吸器疾患=3名

4.常用薬剤は、一人平均2.1種類であった。

5.日常生活

完全自立=8名、自助具(車椅子など)利用=14名、人手による介助を必要とする者=23名、完全介助=5名であった。

完全自立を0点、自助具利用を1点、人手による介助を2点、完全介助を3点として、スコア化すると平均は1.52点であった。

7.口腔清掃状態

1) 有歯顎者28名中、していない者は4名。

  頻度は、毎朝=12名、毎朝晩=6名、毎食後=3名、就寝前=1名、時々=2名であり、使用器具は、歯ブラシが主で24名(80.0%)であった。また、歯磨剤を併用する者は6名であり、歯間ブラシを併用する者は2名であった。

2)「うがい」ができない者は全調査者50名中6名(12.0%)であった。

8.食欲がない、と答えた者は9名(18.0%)。

9.食物の状態は、普通食=46名、きざみ食=2名、ミキサー食=2名。

10.食事の量は、少ない=21名、普通=16名、多い=13名、と答えていた。

11.食時時間

早い=16名、普通=21名、遅い=13名、と答えていた。

12.間食

30名(60.0%)がしており、回数は最高で1日5回。好んで食べるものは、せんべい=20名、果物=4、飴=4名、饅頭=3名、ジュースなどの飲み物=3名、卵ボーロ=2名であった。

13.義歯の所持者

 41名(82.0%)であったが、常に装着使用している者は、29名であった。

14.義歯を使わない理由

 義歯を持っていても使用しない12名の理由は、合わない=3名、なくした=2名、使わなくても問題なし、面倒=7名であった(内2名は多数歯が残存)。

15.義歯の適合状態は、上顎については、良31名、可6名、不可5名であり、下顎については、良21名、可5名、不可7名であった。

16.口唇の状態は片側マヒのある者1名のみに異常を認めた。

17.顎堤の状態は不良(ヒモ状、細い、ない)が上顎で6名、下顎で22名であった。

18.舌の大きさは異常を認めた者はいなかったが、片マヒの患者において運動異常を認めた。

19.硬口蓋と小帯に異常を認めた者はいなかった。

20.口腔内の異常について聞き取り調査をした結果は、以下のとおりであった。

問題なし=29名、義歯の不調=3名、歯の異常=4名、粘膜の異常=4名、口臭=3名、乾燥=6名、その他=1名(熱いものがダメ)

21.口腔の機能

 1)開口障害を訴えた者は、顎関節脱臼癖のある1名のみ。

 2)咀嚼障害を訴えた者は、8名で、原因は義歯の不適合であった。

 3)嚥下機能の異常を訴えた者は、1名のみであった。

22.コミュニケーション

 1)聴力:異常なし=39名、困難=9名、補聴器で可=2名

 2)発語:異常なし=49名、困難=1名

 3)理解力:異常なし=47名、困難=3名

23.残存歯数

             表2

 

 

 

 

上顎

 

 

 

 

下顎

 

 

年齢

人数

義歯あり

残根

未処置歯

処置歯

健全歯

義歯あり

残根

未処置歯

処置歯

健全歯

65-74

6

4

6

5

10

5

4

4

3

8

6

75-84

23

18

13

4

13

10

12

9

16

18

42

85-94

19

16

9

3

0

4

15

10

15

9

21

95-

2

1

0

0

0

0

1

0

0

0

0

合計

50

39

28

12

23

19

32

23

34

35

69

 

24.歯肉炎指数

           表3

歯肉炎指数

本数

72

89

23

8

  歯肉炎指数の診査結果を表3に示す。残存歯を持っている者に限れば、一人当りの歯肉炎指数は5.92であり、一歯当りでは、0.83であった。

 

25.歯の動揺度

           表4

動揺度

本数

143

31

16

2

  歯牙の動揺度の審査結果を表4に示す。一歯当りでは、0.36であった。

 

26.口腔清掃状態

 有歯顎者28名のうち、していない者は2名。清掃状態については、良7名、普通10名、不良(食物残渣有り)11名であった。

 無歯顎者22名のうち、していない者2名。介護者がしている者1名。清掃状態については、良3名、普通10名、不良(食物残渣・歯石あり)9名であった。

27.義歯の清掃状態

 無歯顎の義歯所持者の清掃状態は、良5名、普通5名、不良(食物残渣・歯石あり)9名であった。

 有歯顎者の義歯所持者の清掃状態は、良4名、普通6名、不良(食物残渣・歯石あり)9名であった。

28.義歯の清掃法

 義歯所持者39名のうち、普通の歯ブラシ使用=28名、水洗のみ=2名、ティシュでこする=1名であり、清掃をしていない者=8名であった。なお、義歯洗浄剤を併用している者は2名であった。

29.咀嚼力の評価

 食品を表2のように6群にわけ、年代別のグラフにしたものが図1である。

   表2:食品の分類

 

第1群

第2群

第3群

第4群

第5群

第6群

 

 食品

バナナ、柔らかいうどん、牛乳につけたパン

マグロの刺し身、ご飯、ウナギの蒲焼き

茄子の煮付け、きゅうり、生シイタケの煮付け

赤飯、リンゴ、白身の刺し身

キャベツの千切り、薄切り牛肉、薄切り豚肉

酢ダコ、古たくあん

 固い食物が年齢が上がるにつれて、食べられなくなってゆく様子が明らかである。

30.食事中のむせ:「あり」と答えた者が14名(29.88%)。

31.嚥下の異常を訴えた者は5名(10.0%)。

32.アンケート:

 自分から進んで、異常や不調を訴えないことがわかった。その理由としては、「歯科治療はお金がかかると心配。」であったり、「入所しているだけでも、迷惑をかけているのに、歯科治療にまでご迷惑をかけては申し訳ない。」というものであった。

 

☆統計学的分析

1.咀嚼能力の評価について、以下の項目との単相関を調査した。

 残存歯数との間では、r=0.203であった。

 義歯の有無との間では、r=-0.024で相関なし。

 年齢との間では、r=0.303であった。

 図2は、調査食品を咬めるかどうかでで点数化し、100点換算したものと残存歯数の関係を散布図にしたものである。

 

2.顎堤の状態によって、「良」群と「不良」群の2つの群に分け、残存歯数(残根を含む)によりその差をt検定してみると、上顎では有意差は認められないが、下顎においては、良好群は平均残存歯数が5.33本(標準誤差0.24本)、不良群では平均残存歯数が2.67本(標準誤差0.26本)であり、0.1%の危険率で有意差を認めた(図3)。なお、下顎においては、残根を除いた残存歯数でも5%の危険率で有意差を認めた。良好群では平均4.37本残存し、標準誤差0.21本であり、不良群では平均1.72本が残存し、標準誤差0.17本であった。

 

考察

1.老健施設入所者の全身健康状態について

 数種類の病気の既往があり、また現在もそれを患っている。それらの多くは、慢性疾患に分類されるものであり、一部の薬の投与を除けば、口腔領域に問題を起こすものは少ないと思われる。移動に関しては、車椅子などが必要な者が多いが、総じて良い健康状態にあると思われる。

2.口腔内の状態について

1)口腔の清掃について

 口腔の清掃により誤嚥性の肺炎の減少が見られた、という報告もあり、この方面への取り組みも必要であろう。今回の施設では歯科衛生士がボランティアで口腔清掃指導に行っているため、義歯を含めた口腔の清掃状態は習慣として根付いているように思われる。

2)残存歯について

 白浜1)の報告は北九州市の施設入所者2000人を調査したものである。その中で女性においては、65-74歳で13.26本、75-84歳で9.33本とされているが、今回の調査では65-74歳で7.89本、75-84歳で6.25本であった。平成5年度の歯科疾患実態調査では70歳での残存歯数が12本であるから、全国平均よりもかなり少ない。福岡県の歯科保健への取り組みの熱心さから考えれば、浜松地区との地域差の要素の可能性が考えられる。

3)歯肉炎について

 歯周病の有病者率は平成5年度の歯科疾患実態調査によれば、65-74歳で25%75歳以上で17%である。今回の調査で歯肉炎指数が2度以上で歯の動揺度が2度以上の者は7名(14%)であり、全国平均よりは少ないと思われる。

4)顎関節症状について

 顎関節症状が見られたのは顎関節脱臼の既往があった1名のみであった。高齢者においては、大西3)の言うように生理的経年的な変化による骨改造、つまり下顎頭の形態的な変化とともに関節窩が浅くなり、咬合位の変異にも順応してゆくと推察される。

5)咀嚼能力の評価について

 咀嚼能力の評価法については、いろいろな研究報告が発表されているが、決定的なものはないと思われる。今回は日常良く口にするものを調査食品とした朝倉ら2)の方法を採用した。高齢者においては「咬める」と「食べられる、飲み込める」を混同している可能性もある。治療前後の変化を調べるような場合には有効なのかもしれない。

 咀嚼能力を左右する因子としては、歯の状態、義歯の状態、口腔周囲の筋力の状態などがあり、これに加齢という因子も加わると考えられる。単相関では単純に関係づけられないし、重相関でもその判定は難しいと思われる。

4.嚥下について

 嚥下の機能異常を主訴として訴えたものは1名だけであったが、食事中のむせを自覚している者は14名いた。むせの原因については、舌から咽頭までの筋力の低下、脳血管障害などの後遺症としての支配神経の異常などが医科では問題とされている。しかしながら、咀嚼によって食物を嚥下に適した大きさにしたり、唾液と混ぜる機能が落ちていても起こりうる。この面での歯科的なアプローチも必要であると思われる。

5.食事について

 普通食の者が46名いるが、食事時間は早く、あまり咬まずに丸呑みしているようである。丸呑みは咬めないことの裏返しと考えられる。

 おやつは味の濃いもの、水分の多い物が好まれるようである。加齢によって味覚の閾値が上がっていることも考えられるが、唾液が出やすいもの、唾液を出さなくても食べられるものが好まれているのかもしれない。

6.高齢者になるまでの歯科保健と治療について

 永久歯の喪失原因は厚生省の歯科疾患実態調査によれば、25歳を境にしてそれ以前ではう蝕であり、それ以降は歯周疾患である。歯牙を残すためには、これら歯科の2大疾患と呼ばれるものに対しての保健活動としての予防と確実な処置が必要であろう。

 また、歯牙の喪失が咀嚼能力に与える影響は大であるのは言うまでもないが、不幸にして義歯になった際には、義歯の維持安定のためには十分な量の顎堤の高さと幅が必要となる。今回の調査で明らかになったように(図3)、歯根が残っていれば顎堤の退縮が防がれるわけであるから、安易な抜歯治療を諌め、歯根のできるかぎりの保存をめざす歯科治療が必要であろう。

 

 

結語

1.歯科的治療の要求度について

 結果の1、21,32より口腔内の不調を感じていても、高齢者は周りへの遠慮から自分から進んで歯科的な治療を希望する事はないようである。しかし、残根は全体で51本、未処置歯は46本あり、義歯の不適合である者も8名が存在しているわけである。口腔は、いうまでもなく消化器の入り口であり、この部分に障害があれば、当然食事は楽しいものでなくなる。

 歯科検診を高齢者にも行い、必要な治療を行うことは、QOL(Quality Of Life)の観点からも必要と思われる。

 

2.提言

 人は必ず歳をとるわけである。老化も避けて通ることはできない。病気が急性期にあったり、命の危険性があるときには、医科的な手当が最優先されるべきであるが、疾患が慢性化している状態では、身体の不調のひとつとして口腔の異常が存在するとすれば、手当をしてあげるべきだと思われる。先にも述べたが、高齢者は自ら進んで、不調を訴えない。まわりの人間がその機会を考えてあげるべきであろう。

 もうひとつは、ケアの面である。治療を必要としなくても、よりよい快適な状態で暮らせるような配慮が必要である。

 そのためには、新庄の報告4)にもあるように、地域行政と歯科のスペシャリスト(歯科医師・歯科衛生士)が協力して、生涯保健事業の一環として取り組んでゆく必要性があると思われる。

 愛知県では、すでにモデル事業として、老人施設の検診を助成している。ここ浜松でも、同様の事業ができないか。そして、基礎データを集め、十分なケアの体制を整備できないか。

 

謝辞

 今回の調査の機会を与えてくださりました、白梅ケアホーム理事長、内田智康さんに衷心より感謝いたします。

 

参考文献

1)白浜立二:施設入居高齢者の口腔健康状態と治療必要性に関する研究、九州歯会誌、45:220-238,1991

2)朝倉由利子 他:義歯と食品に関する研究−食品の分類について−、補綴誌、27:417,1983

3)大西正俊:顎関節の老化、日歯評論、500:127-135,1984

4)新庄文明:高齢者の歯科衛生の実態と生涯保健事業の推進、公衆衛生、49:623-627,1985