ぎいちの戯言 その53:年齢によっては、正常とされる咬合状態


 前歯の間に隙間があると、「異常ではないか?」と、ご心配になられる親御さんがいやっしゃいます。チェックポイントを以下に書いておきますので、参考にされてください。

1)乳歯列(6歳前)のすきま

 前歯にある隙間は、発育空隙とよばれるもので、正常な形です。これができる理由は簡単でして、顎の幅は成長で大きくなるのにもかかわらず、歯を大きくなりませんから、自然と歯と歯の間に隙間ができてくるわけです。前歯は乳歯と永久歯では、普通永久歯のほうが大きいので、乳歯列で隙間が開いているほうがその後の永久歯列で歯並びが良くなります。(乳歯列でギッチギチでは永久歯でデコボコにはえてしまいます。)

 乳犬歯のところにある隙間は「霊長空隙」と言います。ゴリラやチンパンジーなど霊長類と分類される動物には存在するものです。(最近の人間の子供では見なくなってきてます。)

2)永久前歯の萌出期のすきま

 6歳から9歳ぐらいの時、上の一番前の歯の間(上顎両側中切歯間)に隙間があいていることがありますが、正常です。上顎犬歯がはえるまでに、上顎前歯4本の間に隙間があるのも正常です。(→醜いあひるの子の時期、参照) 簡単に言うと、「犬歯がはえてくる時に、自然に治る(自然治癒)の可能性がある。」ということです。但し、例外はありまして、上唇小帯の高位付着や正中過剰歯の存在、側切歯が矮小であったり欠如すると、話が変わってきます。ご心配なら、歯科医院に行かれて、レントゲン写真を撮ってもらうことです。原因がはっきりしている場合は、原因を除去すれば矯正装置を入れなくても、治る場合があります。

 なぜこんなことを書いているかと言いますと、やらなくても良い歯科矯正治療をやっている例を学校歯科健診で見かけたからです。また、前歯4本だけ並べて、その他の重要な問題を見落としている症例を最近見たからです。

 適切な治療を適切な時期にされることを希望します。そのために、患者さんも少し勉強して無駄なお金と無駄な時間を使わないようにしましょう。


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