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ぎいちの戯言 その66:「このままでは、顎関節症になりますよ。」


 先日いらした、新患さん。上顎前突(出っ歯チャン)で、上顎側切歯の萌出スペースが足りない7歳の女の子。ご相談中、「かかりつけ歯科医で、この歯並びを放置すると顎関節症になりますよ。」と言われたそうですが、口の中は上記のように出っ歯チャンなので上顎の2番目が裏側(口蓋側)にはえたとしても、ま、当たることはない(咬合干渉することはない)ようにみえましたんで、「それが治療の理由なら、歯科矯正治療は必要ないでしょう。」と、お答えしました。

 上記の相談には2点問題があると思います。

1)現時点で存在しない疾患について、治療を勧める。

2)目先の歯列不正だけについて、治療を勧める。(将来的な問題、大局的な視点があるとは思えない提案がなされている。)

 まず、1)について。「将来、ガンになりますよ。」とか、「大変なことになりますよ。」などと、不安を煽って商売する人は居ます。でもね、「明日、交通事故に遭うかもしれない。」とか言い出したら、どこにも行けませんし、何もできません。病気に対しての不安なら、保険にはいるか、貯金をして備えるか、というのが妥当な対応でしょう。顎関節に症状がない状態では、保険治療の適応ではありませんから、自費の治療になります。健康保険は病気に対して使われる制度ですから。予防に使ってはいけないと、厚労省が言ってます。

 何も症状がないのに、「顎関節症になるかもしれないから」治そうって、何を治すの???

 症状が出てから、患者さんも家族も納得してから治療すれば良いでしょう。子供の顎関節症のほとんどは歯やかみ合わせの問題よりもストレスが原因である場合が多いですけど。顎関節症治療のガイドラインはちょっと難しいですけど、補綴学会のものがあります。

次に、2)の問題。

 一般歯科医(歯科矯正治療が専門でない歯科医)は、目先の不正咬合に目が行きやすく、永久歯列完成時の咬合状態を考えることができない人が多いように思います。

 骨格性反対咬合なのに、チンキャップやへんてこな装置を使って、何年も通わせたりする例をよく見ますが、ナンセンスです。成長が止まって、下顎骨の長さが決定してからどう治療するか決めれば良いことです。下顎骨が伸びる時期(思春期成長期)には、いくら歯科矯正治療しても治らない時期があります。

 ご不明な点などございましたら、ウチでなくてもよろしいですから、歯科矯正専門で開業されている所でご相談ください。


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