三線 作田節(ちくてんぶし)

先生の都合で初心者クラスがなくなってから、しばらく気楽な「独学状態」を続けていたわたしですが、ふとしたきっかけから「ちょっと真面目に古典をやろう」という気になり、同じ先生の「上級クラス」に入ることになりました。

とはいっても、いきなり上級クラスに飛び込むのも大変、というわけで、準備運動としてみっちり練習したのがこの「作田節」でした。というのも、この曲には「古典の基本テクニックのすべてが入っている」と言われ、これをしっかり練習するのが古典上達の王道、ということらしいのです。

そうかと思って取り組んだものの、はじめはとんでもなく険しい道のりでした。まずとにかく長い。譜面が6ページもある(といっても4ページ以降はほとんど繰り返しみたいなものなので、練習の時には省略してしまったりするのだけど)うえに、唄が始まるまでの前奏部分がほぼ1ページで、その1ページ分が弾けるようになるまで1週間かかったというていたらく(涙)。

なにしろ、打音・打音・列弾、打音・一音置いて次は打抜音、打抜音・開音・打音、二分五厘(四分の一拍)刻みで打抜音・掛音……などなど、ひとつひとつは今までも使ってきたテクニックではあるけど、コンビネーションではやったことないぞ、という技の連発。
(ちなみに、打音(ウチウトゥ)は右手で弦を弾かずに左手で押さえるだけ、列弾(チリビチ) は二本の弦を同時に弾いて鳴らす、打抜音(ウチヌヂウトゥ)は打音に似ているが押さえた弦をすぐに離す、開音(アキウト)は押さえていた弦を離して微かな音をたてる、掛音(カキウトゥ)は右手で弦を弾くときに下から上にひっかける、というテクニックです。)

八重山民謡に「やぐじゃーま」という唄があって、この唄の中には「しらかちゃ」という蟹が作田節を三線で弾いている、という一節が出てくるのですが、うーんわたしはカニ以下か、とぼやきつつ練習練習……

そこをなんとか乗り切った後も、唄に入れば尺と工の間を行ったり来たりするとらえどころのないメロディラインや、やたら長いフレーズに四苦八苦。

それだけに、先生の前で演奏して、「ちゃんと弾けてる」と言われたときは、「やったぁ」という達成感がしみじみと……
ところが、先生のコメントには続きがあった。
「でも、身体で拍子を取るのはやめた方がいいね」
あちゃーっ。orz
つまり、この曲はあちこちに「間」があってリズムがわかりにくいので、無意識のうちに肩を揺すったりして出のタイミングをはかったりしていたようなのです。「独学の落とし穴」というやつで、自分で気がつかないうちに身についちゃった変なクセを取るには、その後かなり苦労するはめになったのでした。

さて、この唄の意味ですが、
穂花咲き出れば 塵泥もつかぬ
白種やなびき 畔枕
(ふばなさちじりば ちりひじんちかん)
(しらちゃにやなびき あぶしまくら)
意味:
稲の穂花が咲き出ると、塵や泥もつかないで、
白い種を包んでいる穂は重さになびいて あぜを枕にするほどである
稲の穂が出て花が咲き、ゆたかに実って、その重さでまるで畔を枕にしているようになびいている……そんな情景を唄うことによって、豊年満作を祈り、祝いの席をことほぐ、おめでたい唄なのでした。

[参考]
「わかりやすい歌三線の世界」勝連繁雄著 ゆい出版


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