石垣島滞在中、八重山毎日新聞を読んでいたわたしは、紙面の片隅の「とぅばらーま教室」のお知らせに気づきました。
これは八重山古典民謡保存会と八重山毎日新聞が共催しているもので、石垣市立文化会館で開かれているものです。
月一回、夜7時〜9時で、参加は無料。どうやら年一回秋に行われる「とぅばらーま大会」の練習のためのものらしいのですが、わたしのような飛び入り参加もOKです。
三線の弾ける人は三線持参ですが、歌だけでもOK。
さっそく三線持参で参加してみることにしました。
会場に行ってみると、そこには十数人の男女が集まっていました。
ほとんどが地元の人のようですが、観光客らしき人もまじっています。
八重山古典民謡保存会の人がふたりいて、「とぅばらーま」の工工四と節回しを折れ線グラフのような図で示したプリントをいただきました。
この夜の「お題」は、
(男) |
河の水や海にどぅ溜まる
我が思いやうらにどぅ染まる イラ
ンゾーシヌ カヌシャマヨ |
(ツィンダーサーヨ ツィンダーサー)
(マクトゥニ ツィンダーサー) |
(女) |
月とぅ太陽とぅやゆぬ道通りょうる
とぅばらーま心ん一筋ありたぼり イラ
ンゾーシヌ トゥバラマヨ |
(ツィンダーサーヨ ツィンダーサー)
(マクトゥニ ツィンダーサー) |
(かっこ内の「返し」は、男性の時は女性が、女性の時は男性がうたいます)
まず、歌詞の意味や発音の解説がありました。
歌詞の意味:
(男) |
川の水は海に溜まる わたしの思いはあなたに染まる
いとしい貴女よ |
(女) |
月と太陽が同じ道をたどるように あなたの心もわたし一筋であってほしい
いとしい貴男よ |
そして発音:
(男) |
かーらぬみじぃやうみにどぅたまる ばんがうむいやうらにどぅすぃまる イラ |
(女) |
つぃくぃとぅてぃだとぅやゆぬみつぃとおりょうる とぅばらーまくくるんぴぃとぅみつぃありたぼり イラ |
非八重山人にとって一番難物なのがこの発音。特に、「みじぃ」とか「つぃくぃ」とか「みつぃ」というのは、いわゆる「ウィ」の音。といっても、これは八重山の唄を表記するときの「お約束」なので、そのとおりに「うぃ」と発音してはいけません。「う」と「い」の中間みたいな音を出さなければいけないのです。専門用語では中舌母音と言われるらしいこの発音、わたしが「鷲の鳥節」を覚えた時以来の「永遠の課題」みたいなもので、いまだに「うーん、なんか違うような」と思いながら発音している状態です。
それはともかく、会場は長い机が2列に並べられていたので、左右2グループに分かれて、交代で男性パートや女性パートを歌ったり、「返し」を入れたりして何度も練習しました。
「とぅばらーま」はもともと個性のはっきり出るものですから、別に工工四のとおりに弾かなくちゃいけない、というものでもないのですが、まあみんなと歌う時は合わせなきゃ、というのもあるし、わたしの自己流三線よりもらった工工四のほうがやっぱりいい……ということで、今まで自己流で弾いていた三線を、工工四どおりに直しながら練習。
その後、「はい前に出てきて歌って歌って」と、ふたり一組で前に出されて、両サイドに分かれて「掛け合い」の実習。
男が唄って女が返しを入れる、次は女が唄って男が返しを入れる……
ふだんCDや民謡歌手のライブ(その場合、だいたいは男性民謡歌手の唄に女性が返しを入れる形しかない)でしか「とぅばらーま」を聴いていないので、ついつい、こうやって男女がうたい交わす形があることを忘れがちですが、こういうふうに相互に自分の想いを唄に乗せて伝えていくのって、いいなぁ……
もっとも、現代ではそういう幸せを味わえる人って、ほとんどいないのでしょうが。
実習のほうは、どちらの側にもひとりずつ先生がついてくれるので、あまり自信のない人でも大丈夫……というか、もう全員前に出されてしまうので、覚悟を決めて歌ったほうがいい。
面白かったのが観光客らしきカップルの男性。この人なかなか上手でしたが、節回しは完全に演歌。そうかぁ、「演歌風とぅばらーま」もありかぁ、と妙に納得させられました(笑)。
それからもうひとり感心してしまったのが、ちょっと遅れて参加してきたおばぁ。声は決していいとはいえないし、音程もリズムも時々とっぱずれたりするんだけど、唄になんともいえない味わいがあって、つい聴き入ってしまいます。
おばぁのカチャーシーのすごさには定評があるけど、「とぅばらーま」に関しても同じなんだぁ。なんだか、おばぁ、ずるいぞぉ。
なんて思ってる間にわたしの番が回ってきてしまいました。三線弾きながらは自信がないので、とりあえず唄オンリーで……
うーん、わたしはどうも「とぅばらーま」の唄い出しのタイミングがつかめなくて苦手なんですけど、今回もやっぱりいまいちでした。もうちょっと修行します。
日程がうまく合えば、参加してみるのも面白いですよ。
八重山古典民謡保存会TEL:09808-2-2566
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