沖縄レンタカー旅行記4(1998.9.21 - 9.24)
9月24日(木) 晴れ時々曇り
朝、昨日豪華なフルコースをいただいた食堂に下りていくと、セルフサービスの朝食がもう始まっていました。大きな窓の外には東シナ海がひろがっています。今日はいい天気になりそう。
わたしの朝食メニューは、
オレンジジュース
パン
ゆし豆腐(固める前のふわふわ状態の豆腐)
フェィジョアーダ(シチューに似たブラジルの豆料理)
山盛りの生パイナップル
となりました。こんなメニュー構成は沖縄でしか成立しないでしょう。昨夜のオードブルにもさりげなく「海ぶどう」をあしらったりと、みゆきビーチもなかなかがんばってます。
食後のコーヒーは外のラウンジで飲むようになっていました。隣のソファでくつろいでいるのは、明らかにゴルフコンペ目的だなとわかるおじさん集団。みゆきビーチの道路をはさんで向かい側には、広大なゴルフコースがひろがっているのです。
このおじさん集団の会話、キーワードが「肝臓」「検診」「高血圧」だと言えば、たぶん想像がついてしまうだろう典型的なオヤジ会話でおかしい(おじさんたちって、だいたいにおいて声がでかいから、聞くつもりがなくても耳に入ってきてしまうんですよね)。
コーヒーを飲んで部屋に戻るエレベーターに乗ったとたん、弟がどーっとため息をつきました。
「オヤジ〜〜っ」
会話内容にうんざりしたのか、それとも自分の将来の姿を見て暗然たる気分になったのか……あえて訊かないことにしました。(^^;
出発する頃になると、空はさらに晴れ渡り、強烈な日差しが照りつけてきました。今頃になってバカヤローとも思うけど、最終日だけでもよい天気になったことを感謝しなければならないでしょう。6月の八重山旅行の時なんて、とうとう全行程晴れる日がなかったもんねえ。
ほんとうは瀬底島のビーチに行きたいところなのですが、帰途とは逆コースになってしまうので、涙をのんで伊計島のビーチをめざすことにしました。
車は恩納海岸を軽快に南下し、石川から再び東海岸に抜け、二日目とは反対方向、与勝半島をめざします。
海中道路の入口まで来たところで、弟が車を停めました。
「さあー、トップ開けるぞ」
「えーっ、ほんとにやるの?」
狭い、窓小さい、サスペンション悪い、ワイパー調子悪いの四重苦スポーツカーの唯一のとりえと言ったら、オープンカー走行ができることくらい。確かに、ここでやらなきゃチャンスはないでしょう。そのままの姿で帰りの渋滞に巻き込まれるのだけはイヤなので、往路だけだよと念をおして、わたしも承知しました。
弟がいそいそとトップを畳んでいる間、わたしは車を降りてまわりの景色を眺めました。ここの海は金武湾の一部になります。かなり遠浅の海で、ちょっと西表島から由布島の間の海を思わせますが、もっとスケールが大きい。
確かにここなら、向こうに見える平安座島まで、ガーッと土手を築いてしまえばいい、という発想になるのもうなずけます。
途中2〜3カ所ほど道を切って橋でつないではいますが、潮の流れなど相当変わってしまったんでしょうね。平安座島と宮城島の間を埋め立ててつないじゃって、そこに石油タンクをぼこぼこ建造してしまう、というのも、いかにもアメリカ的発想ではあります。
海の水も瀬底島のあたりに比べると、とてもきれいとは言えないけれど、それでもまぶしいくらい青く見えます。はるか石川のほうには、白い火力発電所の建物がくっきりと見えました。
さて、用意ができたので車に乗り込みます。風でいろいろ吹っ飛ばされたりしないよう車内を整理し、出発。
「ひゃー、気持ちいいーっ!」
今まで狭い車内に耐えてきただけに、この開放感はなんとも言えません。
車はあっという間に海中道路を渡りきり、平安座島の海岸を通って宮城島に渡ります。宮城島の道路は時々ものすごいオーバーハングの崖下を通っていました。
オープンカーだと上がよく見えるから、なかなかの迫力。
やがて真っ赤な伊計大橋を渡り、車は伊計島のビーチに着きました。
伊計島ビーチは有料ビーチなので、入口で入場料400円とシャワー使用料金100円を払って中に入りました。周囲を岩礁にかこまれた、こじんまりとしたビーチです。平安座島のあたりではあまりきれいでなかった海水も、ここまでくると青く澄んでいます。
しかし、一面の砂浜で、レジャーシートの持ち合わせがないわたしたちには、荷物に砂がつかないよう置いておける場所がありません。木も何本か生えてはいるのですが、強い日差しを避けるのに適当なものもありません。仕方ないので、ふたりで1000円出してテント(といっても屋根とベンチとテーブルしかないが)を借りました。
こうしてみると、波照間島のニシハマビーチがいかに贅沢なビーチだったか、改めて認識できます。誰でも使えるあずまや、トイレ、シャワー室は完備しているし、タオルや着替えは岩の上に置いたり、そこいらの木の枝にかけておけばいいし。だいいち、広さが違います。見渡す限りどこまで行ってもビーチ、という感じなのですから。
とは言っても、伊計ビーチだって都会人の基準からすれば十分きれいなビーチだし、沖縄の典型的な「青い海、白い砂」のビーチには変わりません。このところ出番のなかった日焼け止めをたっぷり塗りたくって、海に突入。今年の夏は天候不順のおかげで、まともに泳げなかったのでとても嬉しい。沖縄の海初体験の弟は、まるでジュゴンかアザラシのように、嬉々として泳ぎ回っています。その第一声は、
「わーっ、プールみたい」
おいおい。わたしが初めて沖縄に来たとき、瀬底島のビーチで言ったせりふとまるっきり同じじゃないの。血は争えないというか、都会人の発想なんてそんなもん、というか……うーむ。
ひとしきり泳いだ後、海からあがってひと休み。昨日ホテルの冷蔵庫のフリーザーに入れて凍らせておいたペットボトル入りのシークワーサージュースがちょうどよい具合に溶けて、乾いた喉をうるおしてくれます。
いやー、極楽極楽。
ビーチの端、崖下の磯には少しだけど魚もいました。沖縄のビーチではよく見かける青い魚や黄色いチョウチョウウオなどは見あたらず、グレー系の地味な魚ばかりなのがちょっと残念。実は少し沖には黄色に黒の縞が入った、わりと派手な魚が見えるのですが、その手前にはロープがあって、その先は遊泳禁止。魚のほうもそれがわかっててそんな所に群れているのでしょう。実に憎らしい。
海水浴客の中にはそれが見たさについロープを越える人がいて、しゅっちゅうビーチから「お客さん、遊泳区域を出ないで下さい!」と放送が入ります。すべて自己責任の離島ビーチとは違って、こういう所なら何かあればレスキューが駆けつけてきてくれるのでしょうが、やはりなんともうっとうしい。
限られた時間に思い切り沖縄の海を堪能したわたしたちは、帰り支度を始めました。なにしろ今日の4時までに那覇に着かなければならないのです。残念ながら長居はできません。しかし平安座島まで戻って来たところで、ちょっと寄り道したくなりました。そこからはいちばん最近できた、浜比嘉島への橋がかかっているのです。ほんの少しの手間で「踏んだ島」をひとつ増やせるのだから、島旅MLメンバーのひとりとしては、やはり見逃せません。
橋を渡ってすぐの所には、橋と一緒にできたらしい、新しい駐車場があって、車が何台か止まっていました。みんな何しに来たんだろうな。釣りかな?
めでたく島旅コレクションを4つ(平安座島、宮城島、伊計島、浜比嘉島)増やしたわたしは、遅めのランチをとる場所を探しながら、コザへと向かいました。
この後とんでもないハプニングに巻き込まれるとは知らずに……
コザという地名は現在公式には存在しません。隣の美里村と合併してできた、沖縄市の一部になってしまいました。コザ地区に入る手前の美里地区にA&W(沖縄で一番メジャーなハンバーガーショップ)を見つけたので、お昼はそこにしました。
わたしが朝宿を出た時は、水着に着替えやすいようにリゾート用のワンピースを着ていました。伊計島で水着からTシャツと短パンに着替えたものの、まだリゾート仕様。この格好で飛行機に乗るわけにはいかないので、休憩ついでにA&Wのトイレで長いパンツにはき替えようと、弟に車のキーを借り、後部トランクに詰めたカバンから着替えを出しました。トランクの蓋を閉めたとたん、とんでもないことに気づきました。
鍵がないのです。
トランクを開けた時、無意識に鍵穴から鍵を抜き、荷物の上に置いて、そのままトランクを閉めてしまったらしい。わたしはあわてて店に戻り、弟に知らせました。「タワケ文化圏」名古屋に生まれ育った弟は、「たーけっ!」とひとこと言うと、JAFに電話をかけました。
JAFは一時間で来てくれるということでした。それを聞いたとき、わたしはA&Wで一時間半は時間をつぶさねばならないことを覚悟しました。なにしろここは沖縄。レンタカーを最初に借りた時のことから考えても、時間通りにコトが運ぶなんて考えないほうがいい。
ところが、なんと驚いたことに、JAFのおじさんはきっかり一時間で到着しました。すごい! ウチナータイムをも克服するJAFは偉い!
JAFのおじさんは車のウインドウの脇から細長いスチールの板をさしこんで、ドアロックをはずしました。弟が運転席からトランクの蓋を開けます。
荷物の上に、ちゃんと問題のキーが鎮座していました。
「あったぁ〜! ごめーん」
「ばかもーん!」
はいはい。今度ばかりはわたしが全面的に悪うございました。許せ弟。
お手数かけました、JAFのおじさん。 m(_ _)m
というわけで、コザに着いた時にはほとんど時間の余裕がなくなったので、パークアベニューを往復しただけで、そこから高速道路(沖縄自動車道)に入り、一路那覇を目指しました。高速を走り始めるとまもなく、急に雲行きが怪しくなってきて、雨が降り始めました。今までもってくれてよかった。午前中の好天は、島の神様のささやかなプレゼントだったのかもしれません。
高速道路に入ってしまうと、まわりの景色は本土のものとあまり変わりません。ところどころにある沖縄独特の墓が、ここが沖縄であることを示しているだけです。交通量が少ないため、あっという間に那覇に着いてしまいました。
レンタカーを返すまで、まだ少し時間があるので、空港近くにある名護パイン園の支店、パイナップルハウスで休憩。再びパイナップルを試食。もっとも、これが食べ納めということになります。ついでだー、ということで、二階の食堂に上がって、窓際の席で天然生パインジュースを飲みました。
3泊4日の沖縄旅行も、終わってしまうとあっけないものです。今回は特に、ひたすら移動の旅だったので、あまりのんびりした記憶がありません。ま、それだけに、「次回はどこか一箇所でのんびりと……」などと考えて、どんどん深みにはまっていくわけなのですが。
弟は、「来年は波照間島に行って、その次は西表島に行ってシーカヤックに乗って……」などと、もう完全に中毒状態。もともと沖縄の文化とか料理とかにはあまり興味がないアウトドア指向なのですが、そういう人間さえ虜にしてしまうのが、沖縄のフトコロの深いところです。
これでダイビングの面白さなんかに目覚めた日には、もう一生抜けられなくなるよ、きっと。ふふふ、お気の毒に。
さて、わたしは来年のGW、水納島旅行の前後にどこに行くか、考えなくちゃ……あっ、わたしがいちばんビョーキか。
−END−
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