モンゴル [DVD] モンゴル (製作年度: 2007年)
レビュー日:2009.8.9
更新日:2009.10.28
評価:★★★
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解説(Yahoo映画より):
『ベアーズ・キス』のセルゲイ・ボドロフ監督が、モンゴルを統一したチンギス・ハーンの人生を壮大なスケールで描いたエンターテインメント超大作。カザフスタン、ロシア、ドイツ、モンゴルの4か国による合作で、主演のチンギス・ハーンに抜てきされた浅野忠信は、全編モンゴル語での撮影や乗馬による合戦シーンなどに挑戦した。全世界規模での公開や第80回アカデミー賞外国語映画部門にノミネートされたことで話題を呼んでいる。


伝記映画ではありません。

タイトルが「モンゴル」ってのがミソなんですね。主人公はのちにチンギス・ハーンとなるテムジンですが、チンギス・ハーンの伝記映画じゃないんです、これ。
(それを期待してがっかりした人が結構いるらしいけど)

あえて言うなら「モンゴル人」とはなにか、というアイデンティティ追求の映画、というか。
日本人からするとDNAの一部が共通してて顔つきが似てるせいか、ついつい自分たちと同じ心情とか行動を期待してしまうけど、彼らは完全な異文化の持ち主で、行動原理もまったく違うわけです。そのへんのギャップが朝青龍をはじめとするモンゴル人力士へのバッシングの一因にもなってしまうわけだけど、この映画はその異質性をよく描いてます。

なおかつ、主役にモンゴル人じゃない浅野忠信を持ってきた、というところが面白い。テムジンはそのモンゴル人の中でもまた別の意味で異質なのです。
普通のモンゴル人だったらたぶん小さな一部族のリーダーとして小競り合いを繰り返しながら一生を終わってしまうところを、全モンゴルを統一し、さらには異民族まで支配下に置いて「世界の半分を支配する」チンギス・ハーンへとのし上がっていったその素質を磨いたのは、捕まって虜囚になって逃亡してまた捕まって……という繰り返し。
(若い頃の不遇っぷりと弱小勢力の悲哀っぷりは、スケールは違うけど徳川家康を思わせるものがある)

その中でなんとしても生き延び、徹底的な弱肉強食の世界を勝ち抜いていく力を身につけていくテムジンの強さとフトコロの大きさを描くのが主眼なので、身一つの逃亡者から多くの配下を従える勢力となる過程はほとんど描かれていません。そのへんが不満といえば不満なんだけど、テーマを絞るためには仕方なかったのかな、とも思います。


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