バルトの楽園 [DVD] バルトの楽園 (製作年度: 2006年)
レビュー日:2009.9.29
更新日:2009.10.30
評価:★★★
Yahoo映画リンク
IMDBリンク


解説(Yahoo映画より):
『きけ、わだつみの声』の出目昌伸監督が、第一次世界大戦中の徳島県鳴門市の板東俘虜収容所で起きた実話を基に描いた感動ドラマ。軍人でありながら自由と平等の信念を貫き通した所長の松江豊寿を松平健が貫禄たっぷりに演じるほか、『ヒトラー〜最期の12日間〜』のヒトラー役、名優ブルーノ・ガンツがドイツ軍少将をいぶし銀の魅力で助演する。3億円を投じて再現された収容所の巨大なオープンセットも歴史のロマンを感じさせる。


「第九」初演秘話

松平健よく頑張った(笑)。
ブルーノ・ガンツにはもうちょっと頑張って欲しかった気も。
全体的な映画のつくりは一時代前の手法、という感じだったのがちょっと残念。
時には牧歌的でもある板東俘虜収容所の情景を見ていると、第一次世界大戦の頃は、敵味方に分かれてもまだまだ国同士の関係はのどかだったんだな〜と思ってしまうし、ドイツ人が捕虜のわりには態度でかいよなぁ、と思うけど(これは日本人的感覚なのかしらん)。

それでもやっぱり、「生きて俘虜の辱めを受けず」という大日本帝国軍人からすれば、国際社会への配慮ということで捕虜を人道的に扱わなきゃいけない苦々しさとかあるわけだし、戦死者を身内から出した人からすれば、捕虜はあくまで憎い敵国人なわけで、そういう一般的風潮の中で、たとえ敵側の人間といえども降伏した以上はひとりの人間として扱いその尊厳を守るべきだ、という態度を貫いた収容所長の松江中佐は立派だし、その信念の源になったのが会津藩士の父親だった、という描かれ方は胸を打つものがあります。

最後の捕虜たちによる第九演奏場面は、いろいろアラはあるけれど感動的。合唱要員は男ばかり、楽器も満足にそろわない状態で、ベートーヴェンの「第九交響曲」という大作を演奏に耐えるものに編曲した当時の担当者(?)は優秀だと思う(相当苦労したんだろうな、というのは映画のシーンでもよく出てた…… ちょっと笑える)。
役者の演技じゃ泣かされなかったわたしも、第三楽章の演奏にかぶってドイツと日本の美しい情景が映し出されるシーンではじわっと来ました。やっぱりベートーヴェンの音楽はすごい。

それだけに、ラストシーンからエンドロールのあたりのカット割りはかなり不満。その後日本人に「第九」が親しまれ定着していった様子を見せるために現代のいろいろな演奏風景を見せたのはいいけれど、解放されたドイツ人捕虜たちのその後も見せて欲しかった。演奏風景にあまりにも有名なカラヤンを入れたことで、テーマがぼけてしまった感は否めません。あそこはあくまで日本人の演奏による「第九」だけにしとけばよかったんではないかと。
でも「第九」をやる人は一度は見とくべき映画かな、と思う。特に、数こなすうちに真摯に演奏する気持ちを忘れそうになる人たちには必見映画としてもいいとさえ思う……昔「第九」をやってた頃、そういう人を時々見かけたもので(笑)。


INDEX