ザ・ベスト・オブ 新スター・トレック [DVD] ザ・ベスト・オブ 新スター・トレック
レビュー日:2009.7.1
更新日:2009.11.23
評価:★★★


内容紹介(AMAZONより):
★「スター・トレック」ビギナーに最適なTVシリーズの傑作エピソードを厳選!!

<収録エピソード>
●浮遊機械都市ボーグ 前編 The Best of Both Worlds (Part I)
ボーグが連邦領域に侵入。それはジャン・リュック・ピカード艦長を同化し、宇宙艦隊に危機をもたらした。
●浮遊機械都市ボーグ 後編 The Best of Both Worlds (Part II)
ボーグは、宇宙艦隊に大打撃を与えながら、地球へ向かった。同化したピカードの知識を使って、艦隊に対抗してきたのだ。指揮をとるライカーは、かつての艦長を武器として利用することに望みをかける。
●亡霊戦艦エンタープライズ“C” Yesterday's Enterprise
エンタープライズ号は、もう一つの危険な時間の流れに入ってしまう。そこでは、ターシャ・ヤーが生きていて、連邦はいまだにクリンゴン帝国と戦争中であった。ガイナンだけがそれに気づく。
●人間の条件 The Measure of a Man
艦隊の科学士官が、データの複製を作るために分解調査することを望んだ。データのアンドロイドとしての権利が争点になる。



成長と喪失

昔の「宇宙大作戦」にTOS(The Original Series)という略称があるように、こちらの「新宇宙大作戦」にはTNG(The Next Generation)という略称があるそうです。
次世代エンタープライズは前世代より大型になり、設備も格段に進歩。艦長もTOSのカークよりも年齢・経験ともに上のジャン・リュック・ピカードとなり、話もTOSのように単純明快なものではなく、複雑でいろいろ考えさせられる話が増えています。

確かにお話としてもSFXの見事さも、こっちの方が上だし、ピカード艦長やライカー副長、データ少佐など魅力的なキャラもいっぱいいるのに、見ていて感じるこの物足りなさはなんだろう……

それはたぶん、わたしがテレビにかじりついて「宇宙大作戦」を見ていた頃にあったなにかが、TNGには受け継がれなかったからだと思います。
たとえていえば、ちっぽけなベンチャー企業で、みんなでわいわいやってた頃の(内情はけっこうムチャクチャ、という場合多し)創成期のあのわくわくドキドキ感が、経営が軌道に乗って安定成長をはじめ、広くてデラックスなオフィスに移転していっぱしの企業の風格を備えるにつれて失われていく……というのに似てる気がする。

あるいは、昔のイギリス海軍で、小さなフリゲート艦の艦長が出世して大きな戦列艦の艦長となり、艦隊の中で重要な役割をになうようになっても、「フリゲート艦長の時代はよかったなぁ」と昔の自由を懐かしむ気持ちに似てるかも。(わかる人だけわかってくださいw)

だからといって昔には戻れないわけだし、最初に見たのがTNGだった、という人たちにとっては、たぶんそういう物足りなさとは無縁だろうと思いますけどね。

エピソードはどれも厳選されているだけあって秀作。二部作の「浮遊機械都市ボーグ」はボーグという敵の異質性(これに比べたらクリンゴン人なんて可愛いものだ)や、艦長が捕まって敵の手先にされてしまうというショッキングな展開が見ごたえあるし、「亡霊戦艦エンタープライズ“C”」はいわゆる並行宇宙モノで、エンタープライズがふたつの宇宙を行き来するといきなり現実が変わってしまうそのSFXがスゴイ。

でもわたしとしては、ちょっとTOSの香りを残しているような「人間の条件」がけっこう好きです。


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