WHO AM I? フー・アム・アイ? [DVD] WHO AM I? (製作年度: 1999年)
レビュー日:2009.11.23
更新日:2009.12.1
評価:★★★
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解説(Yahoo映画より):
ある秘密特殊部隊が任務の終了後、組織の裏切りにより、移動中の飛行機ごと始末される。重傷を負い、記憶を失いながらも原住民に助けられ、“フーアムアイ”の名で部落に迎えられた工作員の一人(ジャッキー・チェン)は、自らの記憶を取り戻すため部落を離れ一人旅立つ。しかし、彼の生存を知った組織は、口封じのため刺客を送りこむ。J・チェン主演のアクション・アドベンチャー。


わたしは誰?

これも「うん、面白かったよ。でも……」のカテゴリに入る作品かな。
いやほんと、舞台も南アフリカとオランダという両極端な場所を使ってて飽きないし、カーアクションもジャッキーのアクションもスゴイし退屈はしない(アフリカの大地を疾走するラリー車のシーンは爽快)んだけど、何度も見たくなるかというとどうかなぁ、うーん……

と考えてきて少し思い当たるフシが。どうもわたし、キャラクター造形がしっかりできてない作品にはノリ切れないのかもしれません。役名ジャッキー・チェンのままってどうよそれ(笑)。
(それとハイテク・ミリタリー系ってどうも肌に合わないらしい。SFは別)

まぁこの作品の場合、本人も自分が誰だかわかってないんだから仕方ない面もあるけど(笑)。記憶喪失で自分が誰だかわからなくて、でもどうやら敵がいっぱいいるみたいで、それでもって誰が敵で誰が味方かわからない、という状態で終始不安そうなジャッキーの表情は印象的。

最初に助けられたアフリカの部族と一緒に暮らしていた間は、はじめこそ不安そうだけど徐々に落ち着いたくったくのない表情を見せるのに対し、文明社会に戻っていくにつれ不安・焦り・怒りなどの表情が増えていくのがなんともいえない。

でもラストの締めかたはなぁ〜。ジャッキーとは離れたところでどんどん大がかりになっていっちゃうし……ジャッキーも最後で「父の教え」なんて口にして、記憶喪失の設定はどうなったんだ、とか思うし(笑)。
(せめてそこで少しはツッコンでください、CIAのお姉ちゃん)

ジャッキーの記憶が戻らないのをいいことに話をでっちあげて自分を信用させる敵ボス。ジャッキーが銃とデータディスクを渡してしまってあわや……という時に見せる神業的どんでん返しの場面が一番面白かったかも。正直ビル屋上での格闘場面は長すぎかな、という感じもしました。
(単にわたしが飽きっぽいだけか?)


【ここが美味しい名シーン】

屋上での格闘第一ラウンドではジャッキーが29秒でダウン(笑)。でもすぐさま起き上がって第二ラウンドに突入……ここでの武器はなんと相手の服。ジャケットの裾をまくり上げて相手の自由を奪い文字通り「袋叩き」にしたりネクタイつかんで引っ張りまわしたり……第二ラウンド終了から相手が変わっての第三ラウンドの間で、ジャッキーが相手に対して身構える瞬間があるんだけど、ビルの通気口の上のようなところに立っているので、下からの風にさっきの相手から奪ったジャケットがひるがえって、なんかやたらカッコイイ。

「神業的どんでん返し」のシーンはもちろん最高です……残念ながらここをネタばらししてしまうとスリルとサスペンスがぶちこわしになるので言えない。でもその瞬間は鳥肌立つよ、ホント。


【おまけ】

「WHO AM I?」のストーリーとどっかで似た話を読んだなぁ、と考えてたら思い出しました、アーシュラ・K・ル・グィンの「幻影の都市」。

記憶をなくした男がとある共同体に助けられ、新しい名前を貰って、自分は誰かという謎を解くために旅に出ていろんな人に出会って……というシチュエーション。出会う人たちの誰が味方で誰が敵か、見かけだけではわからない。味方と思わせた人が実は……という展開。
うーん、もしかしたらネタ元はこれだったのかも。スケールはかなり違うけどね(笑)。

味方と思わせた人が実は自分の記憶を奪った張本人で、主人公はそうと知らずにその相手に自分の命を預けてしまうが、本能的に何かを感じたのか、意外な方法で「奥の手」を用意しておく……というところも似てるなぁ。

「幻影の都市」の主人公は助けられた共同体と暮らしてた年月が5年と長いので、新しい名前による人格がしっかり育ってしまって、元の人格が目覚めてからそのふたつの人格の間の葛藤に悩むんだけど、「WHO AM I?」のほうは「フーアムアイ」という人格が成立してからあまり時間がたってないし、エンディングまで記憶が完全には戻らないままなので、葛藤もあまりないかわりにそのキャラクターもあまりよくわからないうちに終わっちゃった感じがする。

実際「フーアムアイ」と「工作員523号」の間にはかなりのギャップがありそうな感じもするし、記憶が戻った時そのへんの折り合いどうつけるつもりなんだよ、と思うんだけどね。


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