恋しくて [DVD] 恋しくて (製作年度: 2007年)
レビュー日:2010.4.9
更新日:
評価:★★★
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解説(Yahoo映画より):
『ナビィの恋』の中江裕司監督が、人気バンドBEGINの青春時代をモチーフにつづるのどかな青春音楽映画。石垣島を舞台に、思いつきでバンドを組んでしまった若者たちの奮闘を描く。映画初出演にしてオーディションで見事主役の座を手に入れた東里翔斗や、山入端佳美のフレッシュな魅力が光る。『カナリア』の石田法嗣や中江監督作品常連の平良とみらベテラン勢が脇を固める。BEGINによる主題歌も映画とマッチして胸にしみる。


あの懐かしき日々

そろそろTSUTAYAのラインアップも飽きてきたので、新規開拓。本山のGEOに登録しました。
で、記念すべきレンタル第一号はこれ。公開当時見そびれちゃってそのまんまだったんで……(TSUTAYAには置いてなかったし)

うーむ。ストーリーとしての面白さは「ナビィの恋」や「ホテル・ハイビスカス」に及ばないなぁ。

とはいっても、離島でもない、かといってコザのような街でもない、石垣島の空気感はよく出てたなーと思います。
プチ移住までしたわたしとしては、「あ、あれはあそこだ」とすぐわかる場所続出でめちゃめちゃ懐かしかったし。(エンダー懐かしすぎるw)

ただこの映画、沖縄、特に八重山のことを知らない人やビギンの音楽を知らない人からすると、わからない部分が多すぎるんじゃないかという気がしますね。アンガマで活躍したり、ひとり奄美に出かけて亡き父の作った歌の楽譜を持ち帰ってきたり、単に思いつきだけで行動しているようなセイリョウ(ヒロイン加那子の兄)の、背後に垣間見えるあの世とのつながりが読み取れないと、主人公の人生捻じ曲げちゃうような強引さとその唐突な死は理解不能だと思うし。

「ナビィの恋」や「ホテル・ハイビスカス」の場合はそこまで深読みしなくても作品の持つパワーだけで充分面白く見られたのだけど、「恋しくて」の場合はそこまでのパワーはなかったような……「偉大なる内輪ウケ」映画で終わってしまってるんじゃないかなぁ。そのへん完全なる部外者ではないわたしには客観的な判断が難しいのですよ。

加那子とセイリョウ、この破天荒な兄妹の強烈なキャラは新鮮でした。それに比べると主人公栄順の影がちょっと薄かったかな。
平凡な高校生の男の子栄順がこの兄妹に導かれて音楽の道に足を踏み入れ、いつのまにかバンドのリーダーになって東京進出、というサクセスストーリーとしてみれば確かに筋は通ってるんですよ。でもそうだとするとちょっと納得いかない部分が多すぎるのが玉にキズ。

この映画、冒頭は加那子のモノローグで始まり、加那子目線で話が進んでいくのですよね。ところが、ラストで加那子は上京した栄順たちのあとを追わずに島に残る。結婚の約束までした栄順に、別れの手紙を送るその心境の変化がいまいちよくわからない。

栄順を人間的にも音楽的にも成長させるための試練、「恋しくて」という唄が人の心を打つ音楽になるための犠牲ということならわからなくもないけど、そうだとすると、その後石垣の浜辺で観客を前にしてライブをやってる彼らと、何事もなかったように一緒に楽しそうに歌っているヒロインのシーンが入ってる意味がわからないし(あの別れの手紙はなんだったんだよ)……加奈那子目線で話始めたんなら、最後もちゃんと加那子目線で話締めんかい、と思ってしまったのでありました。

それともうひとつ、どうにも納得いかなかったのはやっぱり音楽面。
山本リンダのカバーをやってたバンドが、リーダーでドラマーのセイリョウを失ったからといって、短期間でギター2人とキーボードのユニットに路線変更するとか、オーディションのため上京して本選に出るまでの数日間で、セイリョウが持ち帰ってきた一枚の楽譜を編曲して、グランプリを取るほどの感動的な音楽に仕上げるとか、メンバー全員に並々ならぬ音楽的才能がなければ不可能だと思うんですよね。

もちろん現実の「BEGIN」のメンバーにはハンパじゃない音楽的才能があるし、それはアルバム「BEGINの島唄」全曲を耳コピして工工四に起こしたことのあるわたしにもよくわかるけど、映画に出てきたバンド「ビギニング」のメンバーにそれほどの音楽的才能を感じさせる場面がなかっただけに、あれよあれよと言う間のグランプリ獲得にちょっと説得力が感じられず、映画のセリフそのままに「音楽なめてんじゃねぇのか」と感じてしまったことも、残念ながら事実です。

とはいっても、映画の中で青春してる高校生たちのまぶしさときたら。わたしはどっちかというと「文化祭」より「合唱コンクール」のほうで本領発揮する高校生だったけど、映画を見てると当時の文化祭でバンドやってた同級生の姿が浮かんで懐かしかったです。みんないい年のオッサンになってるけど、あの頃のことどう記憶に残ってるんだろうなぁ。酒飲みながら小一時間問い詰めたい気が(笑)。

今回は出演した唄者が少なかったのがちょっと寂しい。登川誠仁なんて牛の声だし……(笑)
でも武下和平の「ヨイスラ節」や、与世山澄子の「この素晴らしき世界」はさすがに魅力的だったし、およそエレキとかロックとかとは無縁な風貌のおじさんなのに、華麗なるギターテクニックを披露して高校生の度肝を抜く音楽の先生(大M浩一)が最高です。
しかし門の上でシーサーになってたおじぃが石垣市長とは(爆)。


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