酔拳 [DVD] 酔拳 (製作年度: 1978年)
レビュー日:2010.5.9
更新日:
評価:★★★★
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解説(Yahoo映画より):
ジャッキー・チェンの日本初お目見え作。クンフー道場のドラ息子ジャッキーは、練習は真面目にしない、町に出れば悪戯ばかりという放蕩ぶり。見兼ねた父親は心を入れ替えさせるために、クンフーの達人である叔父さんを呼び寄せ、伝説のクンフー“酔八拳”を伝授して行く。酔えば酔うほど強くなる“酔八拳”のユニークな動きと、まるで舞踊のような立ち回りは、ブルース・リー以来の衝撃であった。15年ぶりに念願の続編「酔拳2」が作られた。


ジャッキー映画の原点

ついに見ました「酔拳」。
いやもうジャッキーが笑っちゃうほどカワイイ。
ご飯をかっこむシーンとか、ほんとに男の子ーっ! て感じで。

お話の筋は思いっきり単純だし、登場人物のしぐさもいちいち大仰だし、今となっては絶対作れないような、洗練の対極にある泥くさいタッチの作品だけど、なんか面白いのよね。

赤鼻の爺さん師匠との掛け合いもとってもいいし。

人間としては未熟な主人公がある日コテンパンにのされて発奮し、修行を重ねて人間的にも成長していく……という展開は王道パターンなんだけど、この話の場合、主人公は最後の戦いが終わったあとちゃんと人間的に成長したのかちょっと心配(笑)。
まぁもともとやんちゃな悪ガキだけどイイやつでもあるわけで、周囲の期待とはうらはらに、あんまり変わらずいくんだろうなぁ……というのはなんとなく想像つく。

でも確かにこれ見ると、自分ももうちょっと鍛えようという気にはなるよな(爆)。


【ここが美味しい名シーン】

昔から故事成語とか漢文とかを通じて中国文化に親しんできた自分としては、勉強も厳しい修行も大嫌い、という根性なしのドラ息子でさえ、それなりに基礎的教養が身についちゃう中国の伝統の底力がなんかスゴイなぁ、と感じてしまったりして(笑)。

いたずらが過ぎてきついお仕置きを受けた主人公、父親が自分をもっと厳しい師匠に預けてしごいてもらおうと計画していると聞いて「三十六計、逃ぐるにしかず」と家出しちゃうところとか、結局その師匠と出会ってしまって観念して修行を始め、紆余曲折の末「酔拳」の奥義を授けてもらえることとなり、ふたりで交互に一節ずつ詩を吟じながらお酒を飲むところとか、ある日酔拳を会得した主人公が師匠の庵に帰ってくると、師匠は「教えることはみな教えた。後は自分でがんばれ」(すごい意訳ですがw)という達筆の書置きを残して姿を消していて、それを読んだ主人公が涙するところとか、ある意味「中国四千年の歴史」がうらやましいなと感じる瞬間でもあります。

このお酒を飲むシーンでふたりが吟じてる漢詩、一般的に李白の「將進酒」だと言われ、はじめは確かにそうなんだけど、途中で同じ李白の「月下独酌」が混じってたり、その他にも出典はわからないけどたぶん中国では有名な詩なんだろうなというのが入ってたりで、最後はどうやら王翰の「涼州詞」(高校時代の漢文の授業でやったおかげでこれくらいは憶えてた)で締めてるようです。

そういえば、あまりの修行の厳しさに嫌気がさして師匠のもとから逃亡した主人公が、殺し屋の拳法使いに出会い、健闘するもとうていかなわずボコボコにやられ、「命は助けてやるから俺の股をくぐれ」と言われて屈辱に顔をゆがめながら四つんばいになって股くぐりをやるシーンがあるのですが、当然あれを見る中華文化圏の人たちは「韓信の股くぐり」の故事を知ってるわけで、あそこでジャッキーが悔しさに打ち震え、師匠のもとに戻って修行をやり直す決心にいたる心情はじゅうぶん理解できるんでしょうね。


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