さらば、わが愛 覇王別姫 [DVD]さらば、わが愛/覇王別姫 (製作年度: 1993年)
レビュー日:2011.3.27
更新日:
評価:★★★
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解説(Yahoo映画より):
演ずることに全てを捧げた二人の男の波乱に満ちた生涯を、京劇『覇王別姫』を軸に描いたチェン・カイコー監督作品。身を持て余した遊廓の母に捨てられ、京劇の養成所に入れられた小豆。淫売の子といじめられる彼を弟のようにかばい、辛い修行の中で常に強い助けとなる石頭。やがて成長した二人は、それぞれ“程蝶衣”、“段小樓”と名を変え、京劇界きってのスターとなっていた……。


美人薄命

いやもうレスリー・チャンが美しすぎる……。

「京劇の女形」という役どころがこれほどぴたりとハマる人もそういないような気がします。
実際に虞美人や楊貴妃に扮している姿の美しさは言わずもがなですが、男の姿をしているときも、女形独特の匂いを放っているんですよね。どこがどう、と具体的には言えないんだけど、歌舞伎の名女形玉三郎や、琉球舞踊の人間国宝宮城能鳳さんが持つ雰囲気を、彼もちゃーんと持っているんです。それがスゴい。

お話は清朝崩壊後の動乱期から文化大革命の後までの半世紀という長丁場。作品自体も3時間以上と長いですが、その長さを感じさせないのはそれだけ内容が充実しているからでしょうか。っていうよりひとりの人間が生きている間にこれだけいろんなことが起きるって……やっぱ中国はコワい国だ。

くるくると変わる価値観の中で、あくまでも京劇イコール人生な蝶衣と、舞台をおりれば普通の人でありたい小樓。それに小樓の妻となる菊仙がからんで、通常の三角関係の枠にはおさまらない愛憎ドラマが展開していきます。

文化大革命の時代に迫害された京劇が復権し、久しぶりに「覇王別姫」を共演することになったふたり。いくつもの修羅場をくぐり抜けて長年連れ添った夫婦のようなむつまじい空気が漂い、蝶衣の容姿はまるで半世紀という現実時間とは別の世界に生きていたように変わらず美しい。小樓のほうは項羽の扮装のおかげで年取ったかどうかよくわからないのですが、稽古の合間にもらす言葉から老いが感じられる……

そして、ここでも現実時間に寄り添って蝶衣を「裏切った」小樓に復讐するかのように、蝶衣は思い切った手段に出るのです。その衝撃的なラスト。
何度も見直すには辛すぎる感もあるけど、やはり名作には違いないでしょう。


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