SPIRIT〈スピリット〉 [DVD] SPIRIT (製作年度: 2006年)
レビュー日:2011.5.5
更新日:
評価:★★★
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解説(Yahoo映画より):
『HERO』『LOVERS』を手がけたプロデューサーのビル・コンが、『HERO』に続きジェット・リーとのコラボレーションで放つアクション巨編。実在したマーシャル・アーツの伝説的人物をモデルに、格闘技の師匠だった父の跡を歩もうとする男の生きざまを描く。孤独な主人公をリーが全身全霊の力で大熱演するほか、相手役には日本から人気俳優の中村獅童が参戦。マーシャル・アーツの精神を、闘いで表現する彼らの挌闘シーンの迫力に圧倒される。


ジェットリー入魂の一作

直接映画とは関係ないけど、インタビューで引退を決意した時思いとどまるよう説得してくれたのがチベット仏教の坊さんだった、という話がちょっと面白かった。

お話は清朝末期に武道家として名を成したフォ・ユンジャ(霍元甲)の一代記。
前半のゴーマンかましまくるユンジャと、そのゴーマンさが悲劇を招いてすべてを失い、流浪の果てに山村の素朴だけど豊かな暮らしの中で人間として再生し、真の武道家魂を獲得して中国人の誇りをかけた試合に挑んでいく姿を演じ分けたジェット・リーは好演。

しかしこの映画、脇の人たちもなかなかいいです。
最後に対決する日本人武道家を演じた中村獅童もアクション(と中国語)よく頑張ったよ、という感じだし、個人的には「ちょっと待ったぁ!」(日本語)のセリフがツボ。
幼馴染の友達ジンスンもイイヤツだったし、子ども時代からユンジャぼっちゃまの世話をしている爺やもいい味出してました。
絶望のどん底に落ちたユンジャを深い愛情に包んで再生させる盲目の娘もよかったしなぁ……

試合場面とかちょっと凄惨でしんどい場面もあるけどなかなかいい作品です。ただ時間配分には不満あり。前半のゴーマン不遜時代のほうがアクションとか派手なせいかウェイトがかかりすぎ、立ち直っていく過程と立ち直ってから武術学校を設立するあたりが駆け足になってあっという間に最後の試合になだれこんでしまう。このあたりもっと丁寧に描いてほしかったな……と思ったら、どうやらこのあたりが大幅にカットされてるらしいです。
うー、ノーカットのバージョンも見てみたいなぁ。

【ここが美味しい名シーン】

武道の達人として「天津一」を自負するユンジャが、思い切り怖い顔して拳を固めとある家の門前に立つが、門が開いた瞬間…… このシーンは人を人と思わないような倣岸なユンジャの別の一面が見られて面白い。それだけにその後の悲劇がいっそう際立つのですが。

それから流浪の果てに中国西南部の少数民族の村らしき山村にたどり着いたユンジャ。助けてくれたおばぁちゃんとその盲目の孫娘の家に居候し、田んぼの手伝いなど始めるのですが最初はなかなか村人のペースに合わせられない。 山の中の見事な棚田で田植えにいそしむ村人達が、時折手を止めていっせいに腰を伸ばし、田んぼを渡る風に気持ちよさそうに吹かれるシーンが印象的。最初は戸惑っていたユンジャも、やがて村人に混じって全身で風を感じ、自然のリズムに従って生きるコツをつかんでいきます。

そして大自然と一体化したように演武するユンジャ。このシーンはさすがジェット・リーと思わせるものがあります。正直言ってわたしは誰かと戦ってる姿よりこっちのほうが好きだな。


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