海洋天堂 (製作年度: 2010年)
レビュー日:2012.1.3
更新日:
評価:★★★
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解説(Yahoo映画より):
『ロミオ・マスト・ダイ』などの世界的アクションスター、ジェット・リーが得意のアクションを封印して挑む父と子の感動のドラマ。自閉症の息子を持つ父と、その一人息子の愛情にあふれた日常をそっと見守る。今回初メガホンを取るのは『北京ヴァイオリン』などの脚本家、シュエ・シャオルー。中国の若手注目俳優のウェン・ジャンが、自閉症の青年という難役を見事にこなしている。絶望のふちからはい上がる父子の再生の物語に目頭が熱くなる。


父の愛は海より深い。

「ダブル・ミッション」がスクリーン初ジャッキーだったにわかカンフーファンのわたし、スクリーン初ジェットはこの作品になりました。

ジャッキーと同様DVDもいろいろ見てきましたが、スクリーンでの初対面となったこの映画、ジェット・リーの出演作の中ではかなり異色。カンフーのかけらもない、どころか、そのオーラも感じさせないごくごくフツーのおじさん王心誠(ワン・シンチョン)。

ただ、そのフツーのおじさんには自閉症の息子大福(ターフー)がいて、なおかつ自分は病気で余命いくばくもない。奥さんに先立たれ、今自分も息子をひとりおいて世を去らなければいけないとなって、息子の先行きを案じたお父さんは悩み、焦り、一時は心中しようとまで思いつめ、でも死に切れなくて迷いながら、息子がひとりになっても生きていけるようあらゆる手をつくす。その一生懸命さが伝わってきます。

沖縄・八重山地方のお盆の唄に「父御の御恩は山高さ 母御の御恩は海深さ」というのがあるけど、シンチョン父さんの愛も海より深い。

泣けるって評判は聞いてたし、ヤバいなぁとは思ったんだけど(基本その手の映画は苦手)、でも見に行ってよかったと思いました。 舞台となっている青島(チンタオ)の街並みもいい感じだし、水族館のブルーの風景がまたきれい。確かに病気をあつかっていながらあんまりキツい描写はないし、あえて「キレイゴト」で押し通しちゃっているけれど、それだけに見てるうちにこの親子を暖かく見守る周囲の人々と、いつのまにか同じ視線でターフーを見守っている自分に気づいてしまう。

そして、自閉症の人にはどう接しなければいけないか、ということも、自然にわかってしまうというところもあって、本来の映画の感動とは別物かもしれないけど、意義のある良作かな〜と思います。

自閉症の人たちにとって、自分の生活リズムやパターンを乱されるということは、精神的にとても辛いことなんですよね。そのあたりの描写は丁寧にされています。いや自分も休みの曜日がズレただけで体調狂ったりするんだから、なんかわかる気がする。
シンチョンはそういう息子に、自分の死がもたらす環境の激変をなんとかして乗り切れるよう、いろいろ準備をしていくんですが、最後の最後に「父親の死」という事実をどうにかしてうまく受け止められるよう、はた目にはこっけいにも見えてしまう身体をはった準備をする……このくだりがまた印象的。

お父ちゃんがあんなにも頑張ってるのを間近で見ちゃったら、やっぱりみんな応援したくなっちゃうでしょう。まわりの人がいい人ばかりなのも、あの親子の生き方が周囲にそういう感化をおよぼしている、その結果だという気がします。

しかしジェット・リーってほんと真面目なひとだなぁ。いろんな役柄見てたけど、(悪役やっててさえも)どこかまっすぐで真摯な感じがするんですよねぇ。ジャッキーに「笑って人を殺す根っからの悪役」ができそうにないのと同様、ジェット・リーには「だらしない根っからのダメ男」はできないような気がする(笑)。

この映画で印象的だったのは、
青島の街並み
親子が住むアパートのインテリア
熊のぬいぐるみの置き場所に関するやりとり
針仕事するジェット・リー(笑)
そしてなんといってもあの海亀……(笑えるけど泣ける)


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