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カッシーニ計画/1998年3月


カッシーニ、通常モードに復帰(3/31)

少し遅くなりましたが、3/27づけ「主な出来事」の要訳です。

 カッシーニ探査機は、現在太陽に対して毎時14万3000キロで飛行しており、1997年10月15日の打ち上げ以来4億3900キロを翔破しました。

 最新のステータスは3月26日(木)、ディープスペース・ネットワーク(遠距離宇宙通信網)マドリッド基地で受信されたものです。カッシーニはきわめて良好な状態にあり、C7シーケンスを正常に実行中です。探査機は3月24日(火)にシステム・セーフ状態に入った後、26日(木)には標準シーケンス状態に移行しました。

 24日(火)、カッシーニ探査機は自動的に「セーフィング("safing" )」に入りました。これは、システム定義前の、探査機の低活動安全操作状態のことで、予定された点検活動のとき用いられます。探査機は設計通り、正確に「セーフィング」反応を実行しました。火曜日のテレメトリーは、探査機の向き(つまり姿勢)に関する情報に小さなばらつきが生じた結果、セーフィングがおこったことを示していました。これは、飛行管制が探査機の二つの恒星参照ユニット(stellar reference units)の間の切り替えを行ったとき生じました。

 地上管制は火・水・木曜に、探査機を計画された操作状態に戻すのに必要なコマンドを準備し、アップリンクしました。26日(木)の午後までにリカバリー活動は完了し、C7シーケンスが再起動され、計画された活動が再び実行されるようになりました。このことによるミッションへの影響はありませんでした。第1回金星フライバイ(ヴィーナス1)のための計画された活動はすべて予定通り行われています。

カッシーニ、姿勢制御系にトラブル(3/27)

 3/26づけ「ステータスリポート」の翻訳です。

 カッシーニの故障防護システム(fault protection system )が木曜、計画通り動作しました。これは探査機が、2つの恒星参照ユニット(stellar reference units)のあいだに、非常に小さな方角のずれを感知したためで、きのう探査機から受信されたデータから明らかになりました。このできごとは、ミッションおよび来月予定されている金星フライバイの全ての活動に何ら影響ありません。

 恒星参照ユニットはコンピュータと接続された小さな望遠鏡です。確実な星のパターンを見つけて解釈し、探査機に対して方角を知らせます。
(この画像は電子的に扱う場合のみ使用可能)
 カッシーニの姿勢・接続制御サブシステム(attitude and articulation control subsystem)の一部、2番恒星参照ユニットは、1番恒星参照ユニットが開口部から打ち上げ後の汚染を除去するための規定維持作業「加熱処理(ベイクアウト)」のため、引継処理中でした。2番の使用は今回が初めてで、作業を開始したところ、カッシーニの姿勢制御ソフトウェアが、ふたつのユニットの向きに非常に小さな違いがあることを発見しました。この違いを感知し、姿勢制御サブシステムを制御するコンピューターは、あらかじめプログラムされたコマンドを実行しました。このコマンドは探査機の活動を落とし、地上管制の指示待ち状態にしました。探査機は設計どおり事態に正確に対処し、良好な状態を保っている、と計画担当者は話しています。カッシーニは地上管制との接触を保っており、今回の工学データと探査機全体の動作はきのう受信されました。予備分析によると、不一致は仕様の範囲内ですが、その管理限界が非常に厳しく設定されていたため、探査機を低活動状態にセットするプログラム・コマンドが起動されてしまいました。このプログラムは、探査機姿勢・接続制御ソフトウェアの順応化によって、容易に解除されると期待されています。

 きょう昼過ぎまでに、地上管制は探査機を正常な操作状態に戻すコマンドを送信します。カッシーニは4月26日の金星フライバイまで現在のコースを進みます。必要に応じて、コースの微調整を4月始めに行うことが予定されています。金星フライバイの間、カッシーニの電波・プラズマ波観測機器が、金星の稲妻を探すチャンスに恵まれます。

 きょう現在(3/26)、探査機は金星から1700万キロにあって、毎時14万3000キロで飛行しています。1997年10月15日の打ち上げから、土星への道のりを4億4000万キロ翔破しました。

カッシーニのメモリに初のビット故障(3/17)

 3/13づけ「主な出来事」の要約です。

 カッシーニ探査機は太陽に対して毎時約14万1000キロで飛行しており、1997年10月15日の打ち上げ以来3億9200万キロを翔破しました。

 最新のステータスは3月12日火曜日、ディープスペース・ネットワーク(遠距離宇宙通信網)キャンベラ局で受信されたものです。カッシーニ探査機はきわめて良好な状態を保っており、正常に操作されています。探査機は現在C6コマンド・シーケンスを実行中です。C7シーケンスの実行開始は3月15日(日)太平洋時間午後4時(日本時間16日午前9時)からです。

 3月6日(金)、固体メモリー(Solid State Memory:SSR)非ソフトウェア領域の3つの二重ビットエラー(double bit errors :DBEs)を消去するための修復作業が行われました。金曜日の作業では、3つのうち2つが消去されました。上書きによるDBEの消去がうまく行かないビットがあったことから、SSRメモリー・ビットの初めての「故障(スタック)」が明らかになりました。故障したビットはメモリーの未使用領域にあるため、問題にはなりません(ビットの値が宇宙線などの影響で単純に反転しただけなら、値を上書きすることで修復できます。これができなかったことから、ビットそのものが壊れてしまっていることがわかったということです。同様のビット故障はボイジャーでも発生しており、このときは場所が画像処理ソフトウェア領域だったため、故障ビットを避けて組み直されたプログラムをアップロードする手段が取られました)。

 影響のあるSSRサブモジュールに新たな二重ビットエラーが生じても、まだこれまでの方法で消去可能です。もしこのビットが飛行ソフトウェアを含んだメモリーの一部に生じた場合は、使用不可能な部分を将来的に「飛び越す」ようマークされます。地上と探査機のプログラムは、開発の段階でこうした事態に対処できる仕様を与えられています(このようなビット故障は、打ち上げ前の放射能による影響の研究に基づいて予測されていました。この予想により、地上と探査機のプログラムはこのような現象に対処するよう打ち上げ前に適切に記述されることとなりました。)

カッシーニのメモリのビットエラーを修正(3/8)

 3/6づけ「主な出来事」の要約です。この種のビットエラーは宇宙機にとって宿命とも言えるもので、宇宙線によりメモリのビットが反転することによっておこります。ニフティサーブ・スペースフォーラム「宇宙開発の部屋」で何度か話題に上っているので、参照してみてはいかがでしょうか(入会が必要です)。

 カッシーニ探査機は現在太陽に対して毎時およそ13万8000キロで飛行しており、1997年10月15日の打ち上げから3億6900キロを翔破しました。

 最新のステータスは、3月5日(木)、ディープスペース・ネットワークのキャンベラ局で受信されました。カッシーニはきわめて良好な状態で正常に操作されており、C6シーケンスを実行中です。

 3月4日(水)、固体レコーダー(Solid State Recorder)飛行ソフトウェア・パーティションの維持活動が行われました。この活動により、これまでSSR飛行ソフトウェア・パーティションのコードを含んだ部分に生じた二重ビットエラー(DBE:double bit error)が修正されました。水曜からの活動後のテレメトリー(遠隔監視データ)は、今回のDBEがすべて飛行ソフトウェア・パーティションの未使用部分にあったことを示していました。これらの消去(パーティション・コピー・プロシージャによる)は次回ディープスペース・ネットワークで予定されています。

カッシーニ・ステータス・リポート(3/5)
 3/2づけカッシーニ・ステータスリポートの翻訳です。主な内容は、3/1の「主な出来事」とほぼ同様です。

 カッシーニ探査機は先週、4月26日の金星フライバイのために飛行経路を微調整する第2回軌道修正(trajectory adjustment )に成功しました。今回は大きな軌道修正は不要だったため、大きなメインエンジンの代わりに、姿勢制御に用いられる小さなヒドラジン・スラスターを用いて行われました。スラスター噴射中に記録された工学データから、探査機と地上の全てのコンポーネントが完璧に動作したことにより、今回の作業が予定通り行われたことが確認されました。金星フライバイ前の最後の調整は4月初めに行われる予定です。

 カッシーニはきわめて良好な状態を保っており、太陽に対して毎時13万7000キロで飛行しています。探査機は金星からの重力の引きを受け、徐々に加速しつつあります。来月の金星スウィングバイでは大きな速度を獲得します。カッシーニは1997年10月15日の打ち上げから約3億6200万キロを翔破しました。

スラスターにまつわるサイエンス(?)フィクション

 筆者の印象に残っている限り、大々的に姿勢制御用スラスターをアピールしたアニメーションは、映画「クラッシャー・ジョウ」が最初ではないでしょうか。古くは「宇宙戦艦ヤマト」でも転回時にスラスターを噴射する描写が出てきましたが、映像表現において前面に出してきたのは「ジョウ」以降のような気がします。

 ジョウたちが駆る軽戦闘機「ファイター1」「ファイター2」はいずれも大気圏内外両用で、通常の舵器に加えて多数の姿勢制御用スラスターを装備しています。衛星都市国家ラゴール上空で宇宙海賊マーフィ・パイレーツの戦闘機隊と接触したジョウたちは、ファイターで迎え撃ち、激しい空中格闘を繰り広げます。

 何がすごいと言って、マッハいくつで敵機とすれ違うやいなやスラスターで180度ターンし(Uターンではなく、その場ターン)、再度敵機に襲いかかるのがすごい。並大抵の機体強度だったら一度でバラバラになってしまうでしょう。もちろん操縦者も同様。

 もう一つはテレビアニメ「銀河漂流バイファム」。主人公格の人型戦闘機械は「ラウンド・バーニアン(RV)」と呼ばれます。その名の通り両肩や両足にバーニア・スラスターが装備されていて、無重力状態でも機敏に動き回ります。他にもマニア心をくすぐる設定がいっぱいで、なかなか面白い始まりだったのですが、コンセプトの詰めが甘かったのか物語中盤でダレてしまったのがちょっと残念。

カッシーニ、第2回軌道修正に成功(3/1)
 2/27づけ「カッシーニ主な出来事」の抜粋です。

 カッシーニ探査機は現在、太陽に対して毎時13万5000キロで飛行しており、1997年10月15日の打ち上げから約3億4300万キロを翔破しました。

 探査機の最新ステータスは2月26日(木)のディープスペース・ネットワークのキャンベラ基地で受信されたものです。カッシーニ探査機の状態は非常に良好で正常に操作されており、C6シーケンスを実行中です。

 2月25日(水)太平洋時間正午頃(日本時間26日午前5時頃)、第2回軌道修正(Trajectory Correction Maneuver:TCM2)が行われました。要求される軌道修正の強さが非常に小さかったため、メインエンジンのひとつではなく、(姿勢制御に用いられる)ヒドラジン・スラスターを用いて行われました。リアルタイム・データは噴射が良好に行われたことを予備的に示していました。この結果は水曜日に固体レコーダー(solid state recorder :SSR)からの高精度テレメトリーのプレイバックで確認されました。探査機速度の総変化量(デルタV)は予定通りの毎秒およそ0.18mでした。探査機と地上の全てのコンポーネントは素晴らしい働きをしました。TCM2によって探査機は4月26日の金星フライバイに向けて軌道の最終調整をしました。TCM3は4月初めに予定されています。