無計画京都旅行顛末記


8月26日

 いつものことなのですが、私は夏休みはな〜んも計画を立てず、一人でぶらっとどこかへ旅に出ます。もっとも、宿の心配からもっぱら大都市や観光地に限られるのですけどね(……酒さえあれば駅のベンチで一晩過ごすのも悪くはないですが)。
 で、京都にいきました。直前に、大河ドラマ「徳川慶喜」で、慶喜の乳母が「京都に行ける☆」とえらいはしゃいでいたのを見たせい、もあります(笑)。
 正確には、前日の深夜、私は「トワイライトビューながら」に乗るために、小田原に行きました。で、時間も多少早かったので、食事でもしようと駅を降り、夜の小田原の町へ繰り出しました……が。駅前はキャバレーしかやってない。どーしよう、ととぼとぼネオン街を過ぎると、そこにイタリア料理の居酒屋がありました。
 そこで、よっぱらいのおばちゃんと意気投合。詳しい話ははぶきますが(ベロベロに飲んで支離滅裂な会話を大声で喋っていただけなので詳しく書いても……)、ともかくそのおばちゃんから京都の飲み屋の話を聞き、「ボトルキープしてあるから飲んでいいよ」とまでありがたいおことばを授かりました。あ、ここの料理はすごくおいしかったです。ワイン居酒屋って、なんか料理がとてもおいしいところが多いですね。舌が肥えていなければいいワインなんか選べないからでしょうか?
 う〜ん、過去、これだけほろ酔い気分で旅に出たことなんてなかったぞ。「ながら」に乗って座席を確保(満席に近かったのですが……一人旅のささやかな利点です)、そして午前10時には京都へ……トラブル発生。信号故障で3時間ほど、「ながら」が遅れました。体力がなくなったので、とりあえず祇園のあたりをうろついてから、なにもせずに宿で泥のように眠りました。



8月27日

 翌日は嵐山巡り。嵐山からトロッコ列車が出ているので、乗ってみました。保津峡という渓谷を往復するだけの列車なのですが、これが抱腹絶倒、漫才師ばりの車掌さんつきの、楽しい列車なのです。嵐山を出てからずっとしゃべくりまくってます。「右手に川下りの船がございます。水かさの多い時には船頭は5人、少ないときには3人乗ります。……長いときには2時間、早いときには40分で川を下ります。2時間かけても4000円、40分でも4000円、このトロッコ列車はたったの600円でございます」など(笑)。途中で「酒呑童子」が乗ってきました。東映撮影所の人なのですが、お面を外すと顔がバレるとのことで……(笑)。その上からキティちゃんのお面をかぶるなど、なかなかおちゃめな鬼でした。
 まあ、あとはぐるーっと嵐山を回りました。渡月橋は、横から見ている分にはよかったです(車が通れる舗装された橋……)。常寂光寺は京都で一番好きな寺です。何度来ても、その枯れたたたずまいが変わらないのがうれしいです。多宝塔のあたりにいれば、そこだけ時間が切り取られたような気分になります……なんてガイドブックみたいなことを言ってみましたが、本当ですよ。
 そして、夜は前日のおばちゃんの教えてくれた店に行ってみました……が! その路地(道幅が畳一畳分くらいしかない)にひしめく古い飲み屋の列! むしろ、そのネオンが引き立たせている暗さ(私、かくも「落ち着いた」雰囲気のネオンに出くわしたのは初めてです)! 一本はずれれば普通の飲み屋街なのに(と言っても、ど真ん中を高瀬川が流れ、柳が並び、否が応にもここが京都だと思い知らされるのですが)、そこは街全体で私を拒絶している(Tシャツとジーンズとスニーカー、じゃねえ……(苦笑))! 勇気を振り絞って、おばちゃんの言う店を訪ねた私に待っていたものは……白木のドア。「会員制」の看板。そして、甦る記憶――おばちゃんは「あたしお花の先生もやってて」と言ってた――。
 多分、入ったら最後尻の毛まで抜かれても飲み代を払えまい。よほどぼったくりバーに行った方が払えそうなので、不戦敗しました。そこで引き返してはなんなので、探して――見つけました。「ママが名物の店」。おもしろい店でした。つぶれるともったいないので、ずっとビールばかり飲んでいました。客もバーテンさん(京都の旅館の息子で、今板前さんのところで料理の修業をしているそうです)もママもノリがいい。私は隣のにーちゃん(やはり板前の卵らしい。……手に職付いた人って、なんかかっこよくってくやしいぞ)と、ずっとニシナリ(大阪でいちばん危ない街らしい)の話をしてました。飲み屋って関西の方が圧倒的におもしろいなあ。わはは。ベロベロになって宿に帰り着くと12時でした。



8月28日

 翌日、目覚めは爽快。所詮、ビールですから何杯でもござれです(絶対将来太るな、私)。で、その爽快な目に飛び込んできたニュースが、「東海道線、東海道新幹線ともに三島−小田原間で不通」。速攻で帰りました。何のために周遊券を買ったんだか(苦笑)。で、新幹線で(新幹線はすぐに復旧した)帰ろうとしたのですが……従来の切符だったら、新幹線に乗れました。でも、周遊券自体が規格変更になったらしくて、要するにこの切符では新幹線には乗れないらしい。くそー。なんか最後になってバタバタした旅になってしまいました。まあ、それもチャランポラン無計画旅行の醍醐味です。



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