日本
1996年4月21日(日 13:30開場 14:00開演
勝山町民センター 
岡山県真庭郡勝山町319 0867−44−2011

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演奏会にあたって
1975年前後には100万人を越していた筝曲人口も最近では20〜30万人といわれて
います。残念ながらこのことは邦楽全般にも言える傾向ではないでしょうか。
このことについて、関係者の間では日本人の欧米指向、学校教育からの邦楽の排除、
あるいは又流派にみられる排他性、閉鎖性等の内部要因等が挙げられています。
私達は、日本人独自の感性から生まれ育った日本伝統文化の一つである邦楽を自
らの手で捨て去ろうというのでしょうか。邦楽の低調さは指摘されているように、
洋楽に比べて本格的な演奏会があまりなされておらず、一般の人達が邦楽に接する
機会があまりにも少ないことにあるのではないでしょうか。世界に誇る名演奏家が
いて、芸術性の高い名曲がいっぱいありながら、一部の愛好家しかその演奏を聞い
たことがないというのが実情ではないでしょうか。民族音楽研究家の小泉文夫氏は
大学の講義で初めて生の筝曲を聞かされて、「日本にこんな格調高く、若い人の心
をとらえる力があるのを目のあたりに経験して、心からショックを受けた。それは、
日本人なのに日本の音楽を知らなかったことに対する恥ずかしさも混じっていたと
思う。」と述べています。この彼の音楽感を揺るがすほどの大きな影響を与えた筝
の音は彼の子供の頃のなつかしい生活の音や遊びの音だったのではないでしょうか。
 自然を征服すべき客体とみなしてきた欧米人とは対照的に自然と共に生活し、自
然の音−風や雨の音、川のせせらぎ、虫の音等こよなく愛してきた日本人は独特の
感性の持ち主といえます。その感性から生まれた邦楽を日本一の演奏家の音で
”日本の響”を味わっていただきたいと思います。自然界の音を楽しむようにお聞
きいただけたら忘れかけた感性もきっとよみがえってくることと思います。
心静かなひとときをお過ごしいただければ幸いです。
(実行委員・久世三曲会・有米充恵)
1、落葉の踊り .................................................................... 宮城道雄/作曲
金津 千恵子
三絃 芦垣 美穂
十七絃 柳井 美加奈
(解説)
 筝・三絃・十七絃の三重奏曲。作曲された年の10月に、東京音楽学校
奏楽堂で、第3回作品発表会に初演奏された。
 作曲者の創意考案による「十七絃」という新しい楽器をこの曲に初
めて用い、三絃の使い方にも新しい工夫を凝らし、筝においてもスタッカ
ート奏法を効果的に用いたことなどにおいて、特筆に値する作品である。
風に吹かれて落ち葉が舞う印象を感覚的に音楽化した曲で、曲の構成は
三部分形式。前・後部はリズミカルで、中間部は旋律的である。
 初演にこの曲を聴いた藤陰静枝は、帰途その感激を歌によみ、後に振
り付けをして新様式の舞踊を発表した。     (大正10年作曲)
2、水の変態 .................................................................... 宮城道雄/作曲
本手 芦垣 美穂
替手 金津 千恵子
−−−−−−−−−−−  歌 詞  −−−−−−−−−−−−−
(霧の歌) 小山田の霧の中みちふみわけて
       人来と見しはかがしなりけり
(霰の歌) むら雲のたえ間に星の見えながら
       夜ゆく袖に散るあられかな
(雲の歌) あけわたる高峰の雲にたなびかれ
       光消えゆく弓張の月
(露の歌) 白玉の秋の木の葉に宿れりと
       見ゆるは露のはかるなりけり
(雨の歌) 今日の雨に萩も尾花もうなだれて
       うれひ顔なる秋の夕暮
(霜の歌) 朝日さすかたへは消えて軒高きと
       家かげに残る霜の寒かさ
(雪の歌) ふくる夜の軒の雫のたえゆくは
       雨もや雪に降りかはるらん
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(解説)
宮城道雄が満14歳の時に作曲した処女作であり、同時に、彼の全作品
中でも指折りの名作として有名である。
歌詞の内容は、曲名の示す通り、水がいろいろの天然現象となって姿を
変える(変態する)様子を七首の連作短歌に詠み込んだものである。
3、花 舞 .................................................................... 牧野由多可/作曲
第一筝 柳井 美加奈
第ニ筝 芦垣 美穂
十七絃 金津 千恵子
花舞
それは人の世のうたげにも似て
撩乱と咲きほこり
きらびやかに舞ひ広がれば
やがて、めくるめくよろこびの時
美しく散りしきり行く
滅びゆく悦楽の韻
その幽かなる琴の音
(解説)
 冒頭に示される一筝の主題が様々に変化してゆき、ときに重く、又、
軽やかに楽想の変容を様々にきらめかせつつ、最後には舞踏曲風とも云
える曲想にまで発展していって再び最初の主題に戻って終る。
 作者は、伝統的な日本の音感を基礎として、それにやや現代音楽的な
音の動きや鋭角的な拍子を与え、奏者が、楽しみながら現代曲へのアプ
ローチができるよう配慮したという。

4、春の海 .................................................................... 宮城道雄/作曲
小橋 幹子  金津 千恵子
尺八 山口 五郎
(解説)
 作曲者が、瀬戸内海を船旅した時の、のどかな海の情景を印象的に描
いた。ゆるやかな波の感じで始まりかもめの鳴き声が飛び交う様、また
勇ましい櫓拍子の漁船の行き交う様などを描写した宮城作品の代表作。
−−−−−−−−−−− 休  憩 −−−−−−−−−−−
5、尺八本曲 巣鶴鈴慕
尺八 山口 五郎
(解説)
 鶴の巣籠。雛鶴の誕生、親鶴の子育て、子鶴の巣立ち、という一連の
流れを描いた曲で、曲中コロ音や玉音等、特殊の技法で鶴の鳴き声や羽
ばたきを表現し、変化の富んだ曲。向井千秋さんと共に宇宙旅行した曲
である
6、八重衣............................................................... 三絃・石川匂当/作曲
                                     
筝・八重崎検校/作曲
小橋 幹子  柳井 美加奈
三絃 芦垣 美穂  金津 千恵子
尺八 山口 五郎
(歌詞)
君がため 春の野に出でて若菜摘む 我が衣手に雪降りつつ。
春過ぎて 夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山。
三芳野の山の秋風小夜ふけて 故郷寒く衣うつなり。
秋の田の刈穂の庵の苫あらみ 我が衣手に露にぬれつつ
きりぎりす 鳴くや霜夜の狭莚に衣かたしきひとりかもねん
衣かたしきひとりかもねん。
(解説)
 小倉百人一首の衣と云う言葉のある和歌五つを春夏秋冬の順に従い、
組み合わせた歌曲であり生田流歌琴の秘伝に列し、最も長くして、且つ
難曲とせられている。
プロフィール−−−−−−−−−−−−−−−−−−
山口 五郎(人間国宝)
11才より琴古流尺八を父・山口四郎に師事。
1956年 NHK邦楽技能者育成会第二期卒業。
1963年 琴古流竹盟社を継承。
1967年 米国ウェスリアン大学客員教授。
1971年 第1回モービル音楽賞受賞
1974年 第29回文化庁芸術祭大賞受賞(62年にも優秀賞を、又78年には
      作曲に対して優秀賞を受賞。)
1982年 NHK・TV「尺八のおけいこ」講師。
1984年 「山口五郎琴古流尺八本曲全集」(CBSソニー)完成。
1985年 NHKカセット「山口五郎作品集」集録。
1986年 米国ニューヨークおける「自由の女神百年祭」出演。
1987年 東京芸術大学教授に任命される。
1991年 ビクター音楽産業にて「山口五郎琴古流本曲全集」並びに
      「琴古流尺八指南」を完成。
1992年 重要無形文化財(人間国宝)として認定される。
1995年 日本芸術員賞 受賞。
現 在  東京芸術大学教授、(社)日本三曲協会副会長、琴古流尺八
      協会常任理事。


小橋 幹子
岡山県矢掛町出身。幼少より岡山にて生田流筝曲を習得。
1928年 上京。宮城道雄師に入門。日本女子大学国文学入学。
1932年 同校卒業。
1933年 東京音楽学校(現、東京芸術大学)選科筝曲科、ピアノ科、作曲科終了
1934年より1978年まで、43年間邦楽科(生田流筝曲科)、教官として同校勤務。
1967年 外務省派遣。音楽文化使節として、宮城喜代子、数江両師と共に
      欧米親善旅行他海外渡航数回。
元東京芸術大学教授。
現 在 宮城社大師範。宮城会常務理事。宮城会関東副支部長。


芦垣 美穂
1947年 愛知県一宮市に生る。三歳より筝の手ほどきを受く。
1959年 全国邦楽コンクール三曲児童部第一位入賞。
1965年 東京芸術大学音楽部邦楽科生田流に入学。宮城喜代子・
      小橋幹子・上木康江に師事。在学中NHKオーディション合格。
      宮城賞、安宅賞受賞

1974年 リサイタル活動開始、現在まで14回開催。
1980年 東京芸術大学音楽部邦楽科講師を拝命。現在に至る。
現 在  宮城会直門大師範。一穂会主宰。古典教材ライブラリーを順次発表中
      宮城合奏団員、森の会会員、日本三曲協会会員、
      生田流協会会員、      綾の会同人

金津 千恵子
八歳の時より生田流筝曲を学ぶ。
1966年 東京芸術大学音楽部邦楽科入学。
1979年 パリのミューゼ・ギメにて演奏。
1980年 ブラジル及びアルゼンチンにて公演。現地テレビに出演。
1981年 フランス、スイス、及び西ドイツにて公演。現地テレビに出演。
1985年 ニース市主催の日本フェスティバルに参加。
      パリにて、国際交流基金及びオリエント・アソシューションの
      協力によるリサイタルで演奏。
1986年 フランス、西ドイツにて公演。

元東京芸術大学非常勤講師。
現 在 宮城社大師範。森の会会員。明治大学三曲研究部講師。


柳井 美加奈
1970年 宮城コンクール入賞。
1971年 東京術大学卒業。「野分の会」を主宰して、第一回演奏会を開く。
1983年 国際交流基金の助成事業の団長として、南米各国にて公演。
1985年 宮城会大師範となる。第一回ソロ・リサイタル開催。
1986年 フランス、ドイツにて公演。
1988年 5月アメリカのロスアンゼルス、シアトル、ニューヨークにて
      公演に参加。

1994年 12月、第四回ソロ・リサイタル開催。
1995年 作品CD舞企画よりリリース。各地でリサイタル。
      日本音楽著作権協会会員。



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