えー、続きまして....。チケットを入手してよりほぼ半年、長かった!
●9/22 ギドン・クレーメル−ピアソラへのオマージュ at 紀尾井ホール
ギドン・クレーメルGidon Kremer(vl)
バディム・サハロフVadim Sakharov(p)
アロイス・ポッシュAlois Posch(b)
ペル・アルネ・グロルヴィゲンPer Arne Glorvigen(バンドネオン)
前にも書きましたが、昨年秋に Hommage a Piazzolla というCDでピアソラ・ブームの先鞭をつけた人々です。バンドネオンの方以外は、 本来クラシックの演奏家。最近、第2弾が出ました。 ASTOR PIAZZOLLA El Tango(NONSUCH 7559-79462-2 WE810)。 (日本版はWARNER CLASSICS から。)これも凄いですよー。
入り口で渡されたプログラムの下の方にこのような記載あり。
「本公演には休憩がございません。約90分の予定でございます。」(!!!)
そ、そーですか。90分一気に行きますか。で、そのプログラムですが、
真っ暗闇の中、クレーメルとサハロフが登場、ほの暗い照明の点灯とともに 静かに始まりました。Tanti Anni Prima すすり泣くような泣き笑いのような、 ヴァイオリンの音が広がっていきます。
演奏が終わって再び暗転。聴衆に拍手する隙を与えないオープニングでした。
さて、今度はベースが一人現れておもむろにスタート、やがてピアノ・
バイオリン・バンドネオンと順に加わり、パーカス音のセッションの中、
浮かび上がるメロディー。2曲目でいきなり
Buenos Aires Hora Cero と来たもんだ。
前記CD1枚目では、チェンバロが加わって最大の山場になってますが、
当然今日は4人だけです。が、聞いていてそんなこと気が付かなかった。
この人たちの世界に引きずり込まれた感じ。
Escualo(鮫) は緊迫感のある曲調の割に、
グロルヴィゲンが凄く嬉しそうに演奏してまして、まあ俺たちの演奏を聞いてくれよ、
というような余裕を感じました。
クレーメルは弓の毛がボロボロになる熱演。乗ってきました。
タンゴの歴史 はヴァイオリン/バンドネオンのデュオです。この曲は、
BORDEL 1900 ,CAFE 1930 ,
NIGHT-CLUB 1960 ,CONCERT D'AUJOURD'HUI の
4曲から成る組曲で、そのうちの2曲。ピアソラ自身の演奏を聞きたいと
思っているのですが、まだ入手してない(^^;)。ブームなのは良いけど、
ご本人のアルバムがあまり出回ってないのは、どおしてなんだあ?
それはそうと、CD Hommage a Piazzolla では 今日のコンサート の方は未収録
でありまして、興味深かったです。なるほど、歴代のタンゴの後で今自分(ピアソラ)が
やっていること、という意味なんだなあというのが非常によく分かる演奏。
破壊的で諧謔的でテンポ良くリズミカル。
Tango-Etude はソロ・ヴァイオリンのための作品で、とんでもない難曲とお見受け
しましたが、見事に弾ききりました。見事というか鬼気迫るというか....。
しかしそう言えば、どの曲もハーモニクスが効果的に使われてるなあ。
Celos(嫉妬) で、コンサートは静かに山場を迎えました。
緊密な音に思わず息が詰まるような、妙に胸騒ぎのする、正真正銘鳥肌ものの演奏。
この日最高の演奏だったと確信します。
しかし、ここにもう1曲 ヴァイオリン/ピアノによる
Le Grand Tango なんてものがあるんですね。
聴衆に息もつかせない、ってのはこういう演奏会のことをいうんだわまったく。
二人が見ている譜面はもの凄く細かくびっしり音符で埋まって
います。Grand というだけあって壮大な曲。そして、CDに比べて
相当気合いの入ったタンゴになっていた。特にピアノ!
ああ、あのピアノを生で聞けたなんて、私は何て幸運なんだ。
アンコールは、まずG.カンチェリの Instead of a Tango。
休止符上にフェルマータ、という箇所が多い(譜面を見た訳じゃないけど感じが)曲で、
そういう所の音合わせにグループの遊び心やチームワークを感じます。
Decarissimo−−都市の大通りを意気揚々と闊歩しているような楽しい曲。そして
Michelangelo 70。正規のプログラムじゃなくて、アンコールでこんな曲やります?
迫り来る音の洪水に、観客一同あらためて居ずまいを正す、熱演でした。
終わって、この日初めてブラボー!の声。
拍手が鳴り止まないので、4人再びみたび、再三再四の登場。もうやり残した曲も
無い模様。おお、Buenos Aires Hora Cero 冒頭のパーカス音がまたもや....。
と思ったら暫くして、ピアノが適当に切り上げて退場、バンドネオンも。ヴァイオリンも
演奏をしながらゆっくり袖へ。でもしつこくヴァイオリンの微かな音が聞こえ続け、
ベース続行。ヴァイオリンのスライドによる急降下音キュ〜 ダダン。
ベースの足踏みでコンサートは終了しました。
粋なエンディングにスタンディング・オベーションが続出、客席全照しても 拍手が鳴り止まず、もう1度4人が挨拶に現れるというおまけ付きでした。