9月24日(水)

 えー、続きまして....。チケットを入手してよりほぼ半年、長かった!

●9/22 ギドン・クレーメル−ピアソラへのオマージュ at  紀尾井ホール

  ギドン・クレーメルGidon Kremer(vl)
  バディム・サハロフVadim Sakharov(p)
  アロイス・ポッシュAlois Posch(b)
  ペル・アルネ・グロルヴィゲンPer Arne Glorvigen(バンドネオン)

 前にも書きましたが、昨年秋に Hommage a Piazzolla というCDでピアソラ・ブームの先鞭をつけた人々です。バンドネオンの方以外は、 本来クラシックの演奏家。最近、第2弾が出ました。 ASTOR PIAZZOLLA El Tango(NONSUCH 7559-79462-2 WE810)。 (日本版はWARNER CLASSICS から。)これも凄いですよー。

 入り口で渡されたプログラムの下の方にこのような記載あり。
「本公演には休憩がございません。約90分の予定でございます。」(!!!) そ、そーですか。90分一気に行きますか。で、そのプログラムですが、

M1.タンティ・アンニ・プリマ  M2ブエノスアイレス午前零時
M3パチュリ  M4
M5タンゴの歴史 より  カフェ1930/今日のコンサート
M6ブエノスアイレスの冬
M7エル・ソル・スエニョ〜アストル・ピアソラへのオマージュ
M8タンゴ・エチュード  M9嫉妬
M10ル・グラン・タンゴ  M11アレグロ・タンガビレ

・・・・M7以外はピアソラ自身の作曲です。(青:1枚目、緑:2枚目収録曲。以下同)

 真っ暗闇の中、クレーメルとサハロフが登場、ほの暗い照明の点灯とともに 静かに始まりました。Tanti Anni Prima すすり泣くような泣き笑いのような、 ヴァイオリンの音が広がっていきます。

 演奏が終わって再び暗転。聴衆に拍手する隙を与えないオープニングでした。

 さて、今度はベースが一人現れておもむろにスタート、やがてピアノ・ バイオリン・バンドネオンと順に加わり、パーカス音のセッションの中、 浮かび上がるメロディー。2曲目でいきなり Buenos Aires Hora Cero と来たもんだ。 前記CD1枚目では、チェンバロが加わって最大の山場になってますが、 当然今日は4人だけです。が、聞いていてそんなこと気が付かなかった。 この人たちの世界に引きずり込まれた感じ。
 Escualo(鮫) は緊迫感のある曲調の割に、 グロルヴィゲンが凄く嬉しそうに演奏してまして、まあ俺たちの演奏を聞いてくれよ、 というような余裕を感じました。 クレーメルは弓の毛がボロボロになる熱演。乗ってきました。

 タンゴの歴史 はヴァイオリン/バンドネオンのデュオです。この曲は、 BORDEL 1900 ,CAFE 1930 , NIGHT-CLUB 1960 ,CONCERT D'AUJOURD'HUI の 4曲から成る組曲で、そのうちの2曲。ピアソラ自身の演奏を聞きたいと 思っているのですが、まだ入手してない(^^;)。ブームなのは良いけど、 ご本人のアルバムがあまり出回ってないのは、どおしてなんだあ?
 それはそうと、CD Hommage a Piazzolla では 今日のコンサート の方は未収録 でありまして、興味深かったです。なるほど、歴代のタンゴの後で今自分(ピアソラ)が やっていること、という意味なんだなあというのが非常によく分かる演奏。 破壊的で諧謔的でテンポ良くリズミカル。

 Tango-Etude はソロ・ヴァイオリンのための作品で、とんでもない難曲とお見受け しましたが、見事に弾ききりました。見事というか鬼気迫るというか....。
 しかしそう言えば、どの曲もハーモニクスが効果的に使われてるなあ。

 Celos(嫉妬) で、コンサートは静かに山場を迎えました。 緊密な音に思わず息が詰まるような、妙に胸騒ぎのする、正真正銘鳥肌ものの演奏。 この日最高の演奏だったと確信します。
 しかし、ここにもう1曲 ヴァイオリン/ピアノによる Le Grand Tango なんてものがあるんですね。 聴衆に息もつかせない、ってのはこういう演奏会のことをいうんだわまったく。 二人が見ている譜面はもの凄く細かくびっしり音符で埋まって います。Grand というだけあって壮大な曲。そして、CDに比べて 相当気合いの入ったタンゴになっていた。特にピアノ! ああ、あのピアノを生で聞けたなんて、私は何て幸運なんだ。

 アンコールは、まずG.カンチェリの Instead of a Tango。 休止符上にフェルマータ、という箇所が多い(譜面を見た訳じゃないけど感じが)曲で、 そういう所の音合わせにグループの遊び心やチームワークを感じます。 Decarissimo−−都市の大通りを意気揚々と闊歩しているような楽しい曲。そして Michelangelo 70。正規のプログラムじゃなくて、アンコールでこんな曲やります? 迫り来る音の洪水に、観客一同あらためて居ずまいを正す、熱演でした。 終わって、この日初めてブラボー!の声。
 拍手が鳴り止まないので、4人再びみたび、再三再四の登場。もうやり残した曲も 無い模様。おお、Buenos Aires Hora Cero 冒頭のパーカス音がまたもや....。 と思ったら暫くして、ピアノが適当に切り上げて退場、バンドネオンも。ヴァイオリンも 演奏をしながらゆっくり袖へ。でもしつこくヴァイオリンの微かな音が聞こえ続け、 ベース続行。ヴァイオリンのスライドによる急降下音キュ〜 ダダン。 ベースの足踏みでコンサートは終了しました。

 粋なエンディングにスタンディング・オベーションが続出、客席全照しても 拍手が鳴り止まず、もう1度4人が挨拶に現れるというおまけ付きでした。


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