第1回 つづき
急ごしらえのプロジェクトルームに漂う埃っぽい空気とか、
サンデートイズがどういう性格の玩具メーカーなのかをほうふつとさせる「製品」の数々とか。
高校生だったあの娘が今やテレビキャスターという変遷を、違和感なく感じるメイクとか。
トリックはそこらじゅうに仕掛けられている。それも、一貫した世界観があってこそだ。 放送を終わった後も、わたしは度々「ハゲタカ」の世界に引き戻された。「ハゲタカ」は メディアミックスの成功例としても大きな存在ではないだろうか。予告編の作り方からして 半端ではなく、相当に力の入った番組であることが伝わってきた。 ホームページではリアルタイムで用語集などの情報が提供され、 視聴者からのメールが掲載され、ドラマ上のテレビ記者のデスクまで再現されている。 DVDが発売され、サウンドトラックも急遽発売が決まり、 一方で、ある意味内容を異にする原作が、ドラマだけでは満たされない好奇心を埋めてくれる。 で、ちゃんと着メロも用意されて、いまだにわたしの目覚まし音に設定されている。
それはそうと、サウンドトラック(作曲:佐藤直紀)
を聞いてみると、おそらく作曲作業は
原作をもとにされたのだろうという感じがする。というのも、一曲一曲のタイトルや、
結果としてドラマでは使われなかった曲の曲調から、原作とドラマではストーリー云々以上に
違う性格があることに気づかされたからだ。採用されなかった曲には都会的な疾走感のあるものが多い。
原作も経済小説でありながら、実は野性味と疾走感に満ちている。
ドラマでは疾走感はそぎ落とされ、その替わりに回顧シーンが多く人間味を強調している。 結局のところ、ドラマ「ハゲタカ」は視聴者だけではなく世界の専門家も引き付けたらしく、 数々の賞を受賞した。イタリア賞受賞を記念して、この12月22日から24日にアンコール放送が決まっている。 一見どころか何回でも見る価値のある作品だと思う。それから、願わくばホームページが 今のままで残ってくれることを。DVDだけの特典は「大木流経営論」をはじめ幾つかあるのだが、 HPならではの情報も実は多い。(大木昇三郎は架空の経営者であるからして本当に経営論が 展開されている訳ではない、念のため。) 蛇足ではあるが、エンディングテーマにはエミリー・ブロンテの詩が使われている。 ホームページで引用されている和訳には(専門家ではないからはっきりと言いかねるが)、 なにか「?」という、妙な感じがすることを付け加えておく。 NHK土曜ドラマ「ハゲタカ」 公式ページ:http://www.nhk.or.jp/hagetaka/ |