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お風呂

 何でそんなに濡れるの嫌がるかなあ。
 君たちの祖先は、ナイル川沿岸の森の中で生きてたんでしょう? かの川は度々氾濫したそうだし、森が水浸しになったこともあったんじゃないかなあ。 泳いで命拾いしたことだってありそうだけどね...。
 実際、リビアヤマネコが氾濫したナイルの水の中を泳ぐかどうかは存じません。が、 イエネコが泳げることについては確信があります。 だって、うちのネコはそれぞれ2〜3度ずつ浴槽に落ちましたが(汗っ)、 自力で縁までたどり着きましたもの。

 ではございますが、うちのお二人は濡れるのが大・大・大っ嫌いです。 やむを得ず濡れた場所を通るときは、一歩一歩水を払いながら進みます。 「濡れちゃったわ」ピシュッ「ああ足の裏が!」ピシュッピシュッ「気持ち悪い」ピシピシッ。 さんざん水を跳ねらかしながらやっと乾いたところに出ると、 早速おみ足のお手入れ。念入りにねんいりに、肉球にはじまり、 手をパーに開いて指の間から今度はグーにして甲に至るまで、 バラ色の舌でずうっとなめ続けてます。

 こういうネコが大人しくシャンプーされてる訳がないのでして。

 入門書には大概、子猫のうちから慣らせばシャンプーもOKとあります。 もっとじゃぶじゃぶ洗ってやれば良かったのかな? かなり小さい頃に、大人ふたりがかりで洗面所で洗ってやりましたが、 相当暴れるのを何とか押さえつけて、という感じだったのです。 初回から怖がらせすぎか。やがて冬が来ました。風邪をひかせては大変と、 しばらく拭いてあげるだけでシャンプーはしませんでした。これが敗因か?

 今年に入って晩春のとある暖かい日、よし久しぶりにやるか! と決意も新たに準備にかかりました。

 爪切り、コーミング。 人間は濡れても良い格好。大量のタオル。 シャワーは音だけで逃げるので、適温のお湯を汲み置き。 でかくなってもう洗面台は無理でしょうから、お風呂場を締め切って。 「じゃあ、さらちゃんから行ってみようかあ」

 さらは2kgそこそこで小柄ですから、片手で何とか押さえておけます。 ただ、このヒトは普段から平気で爪を立てます。 床に立たせてたら私の足の甲にガリッ。 それならってんで中空に持ち上げてシャワシャワしてると、 今度は後ろ足を思いっきりひねり上げて手をガキガキ。 ひるまず、手桶でお湯をざっぱーんとかけて石けんを落とし、 軽くタオルドライして「ほれっ、あとは自分で頑張って」と解放。

 よしっ次。「まお連れてきて〜」
 これが連れてくるだけで大変だったのです。相方の頭の上までよじ登って逃げだし、 何とか抱き留めて現場に着けば今度はかじりついて離れない。 無理矢理ひっぱがす時に相方は肩のあたりを負傷。

 ジタバタしてるやつに「まず濡らしまーす」ざばーっ。 スルリと抜け出したまお、風呂蓋の上を右往左往。 それをほとんど抱え込むようにして「次はシャンプーでーす」。 と。まおいきなり私の胸に飛びつき、ウギューッと4本の脚でつっぱたのです。 わわわ凄い馬鹿力。もうシャンプーどころではない。押さえておくので精一杯。

 「嫌〜っ、お母さんやめてー!やだーやだーっ!助けてー!」と、 まさに藁をもつかむ状態で手当たり次第、かけてあった浴用タオル・ シャンプーのボトル・バケツ・蛇口...にしがみつき、上を下への大騒動。 外で待機してる相方も気が気じゃなかったみたいですが、 狭い浴室に大人ふたり入ったらかえって動きがとれません。私、ひとりで頑張りました。 タオルドライもそこそこに出してやったら、脱兎のごとく走り去りました。

 ずぶ濡れ、大汗、毛だらけ、手足ににじむ血、体力消耗。 気が付けば右手首に剃刀でやったみたいな傷がズパッと10cmほど、う、痛い。


せっせ、せっせ(まお)

 2時間後、ネコたちは大分ふっくらしてました。 さらに時間がたつと見違えるようにツヤツヤ。 ドライヤーもリンスもなし。自分でそこまでやります。
 そして、何事も無かったようにお父さんお母さんにスリスリして、 お風呂場にも遊びに行きます。「やだ濡れたわ」ピシッ。
 何でそんなに濡れるの嫌かなあ...?

(2005年7月17日)

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