小説
2008. 2/ 3




いつから・・

あいつのこと、こんなにも好きになったんだろう

気がつくといつもあいつのことばかり考えている

私の親友があいつのことを好きなのは知っている

彼女がこの気持ちを知ったらどう思うだろう

恋のライバルにはなりたくない


でも・・

それでも、あいつに振り向いて欲しい。



想い Prologue


 ぱんぱん!!
「どうか明日からが思い出に残るような冬休みになりますように。」
 閑散とした如月神社で、私はそうお祈りをした。
 そう、あれはあと1週間で高校最後の冬休みが始まるというそんなある日のこと。
 晴れ渡った空と、乾いた空気、そして柔らかな日差し。
 それはそれは暖かく、時折思い出したように吹く冷たい風が妙にここちよい。
 ここ何日か曇り空が続いていて今年はホワイトクリスマスになるかなぁ、なんてそ
んな話がみんなの間に広まっていた。
 そんな日から始まった物語・・・

 ここは、八十八学園。で、私がいるのは屋上にあるベンチ。友美と唯を待っている。
寒中水泳のないこの学校は、ここにあるプールにはこの時期誰も近づこうとしない。
落下防止のフェンスが張ってあって、目立つものといえば多少無理に花壇を造って植
えてある樹木ぐらいだ。
「いずみちゃん、お待たせ。」
「ここにくる途中に、片桐先生に呼ばれてね・・・。
先に行ってて、って。」
「ふーん。」
 片桐先生は私たちの担任の先生だ。「大人の女性」そんな言葉がよく似合う。現代
国語と古文を担当してるんだ。
 唯に何の話だろう。まあ、だいだいの見当はつくけど。
「それにしても、12月ももう中旬だって言うのに今日は結構暖かいよなぁ。」
「なにいってるの、いずみちゃんが言ったのよ。「今日は晴れて暖かそうだから屋上
でお弁当食べよう」って。」
「そ、そうだけど。」
 今日の晴れた空は、とっても気持ちよさそうだった。だから、屋上でお弁当を食べ
ようって友美と唯を誘ったんだ。ほんとは、あいつと一緒に食べられたらなんて思っ
たりもしたけど・・。
「そういえば、あいつ今日も遅刻しないできたなぁ。」
「竜之介くんね。先週の朝礼、たしか月曜日からだったわね。」
「さすがの竜之介も、高校生活最後の冬休みを天道先生とはすごしたくないだろう。」
 そう、あれは先週の月曜日の朝。いつもの朝礼の内容が終わってからのことだった。
何を思ったか、生徒指導の天道先生がいきなり竜之介の三年間に及ぶ悪事の数々を並
べ立てた。竜之介っていうのはこの学校の名物男的存在で、私とはとても気が合う。
私は竜之介のことを・・・、ってそんな話じゃなくって。
 天道先生は柔道部の顧問で、生徒指導担当のばりばりの体育会系教師。名前は、新
幹線。・・・この人の名付け親っていったい・・・。
 この竜之介と、天道先生は三年間ずっと対立してきた。それにしても竜之介のやつ
よく学校を辞めなかったよな。退学にもならなかったし。
 もっとも、竜之介の場合は悪事というよりは、度の過ぎた子どものいたずらみたい
なものがほとんどだったけど。
 だから竜之介のやつ、天道先生が怒鳴り立てている間、ずっとそしらぬ顔で口笛な
んて吹いてたりしてやがった。
 これには天道先生も神経を逆撫でされたようで、今度は皮肉たっぷりに竜之介を挑
発しだした。端から聞いてればあからさまな挑発だったけど、竜之介のやつ最後には
のせられて、次の日から冬休みの前日まで1日でも遅刻したら、冬休みの間毎日天道
先生とジョギングする、って全校生徒の前で誓わされてしまった。
 おかげでその日の朝礼は30分も延びたんだよなぁ。天道先生も何考えてるんだろ。
「そういえば天道先生ここ最近、朝と放課後校門のところで風紀の取り締まりしてる
よなぁ。あれやっぱり竜之介を見張ってると思う?」
「まさか。いくら天道先生でもそこまではしないでしょう。」
「んー、そうかなぁ。」
 どう見ても竜之介が遅刻するように仕向けてるようにしか見えないんだけど。
「取り締まりの口実が欲しかっただけだったりして。」
「そんなものかなぁ。」
「・・・。それにしてもどうしたの?いきなり竜之介くんのこと話しだしたりして。」
「い、いきなりじゃないよ。」
「そう?だからどうしたって訳じゃないんだけどね。くすっ。いずみちゃん顔、まっ
赤よ。」
「う、うるさいなぁ。」
 友美のやつなんてこと言うんだ。でも、私そんなに赤い顔してるかな?

「おまたせー。」
「唯、遅いぞ。」
「ごめんね。」
「先生なんですって?」
「うん、最近竜之介君授業中の居眠り多いでしょ?それでね、天道先生とのことで無
理してるんじゃないかって。」
「唯、私たちの前でなら竜之介のことお兄ちゃんでもかまわないぞ。」
 唯は8歳のときから唯の母親の美佐子さんと二人で竜之介の家に同居しているらし
い。そのせいか、唯は竜之介のことをお兄ちゃんて呼んでいる。唯が女子校からこの
八十八学園に編入してきたとき、数人の男子生徒が、唯と竜之介が同居していること
をからかった。翌日から数日、そいつらは全員けがで学校を休んだらしい。
「ありがと。それでね、唯、家だとあんまりお兄ちゃんと話とかしないからわからな
いっていったら、お兄ちゃんに無理をしないように言っておいてほしいって。」
「竜之介のやつここ2、3日は窓際でもないのに取り憑かれたように眠ってるしな。
まあ、あいつのさぼりや居眠りはいつものことだけど、最近は昼休み以外はほとんど
寝てるしなぁ。
「そうね。でも、それって唯ちゃんに言うのは筋違いじゃないかしら。」
「唯もね、そう思って片桐先生に言ってみたんだ。そしたらね、竜之介くんに聞いて
もいつもごまかされちゃうから、だって。」
「片桐先生も竜之介には苦労させられてるみたいだなぁ。」
「ふふ、そうね」

『キーンコーンカーンコーン』
 ふう、今日の授業はこれで終わりだ。さて弓道場に行こっと。あれ、友美のやつな
にやってんだ?
「竜之介くん、竜之介くんっ。」
「どうしたんだ、友美。」
「いずみちゃん、竜之介くん起きないのよ。」
「ほっとけよ。寒くなったら起きるよ、きっと。」
「でも、そんなことしたら風邪ひいちゃうわ。
 りゅ・う・の・す・けくんっ。」
 友美は、竜之介の家の隣に住んでいる。いわゆる幼なじみというやつらしい。小さ
な頃から一緒にいるせいか、友美は竜之介のことを人一倍心配する。もっともそのせ
いだけじゃないことを私は知っている。
 それにしても、かたや「学園一の才女」、かたや「学園一の問題児」。このふたり
が幼なじみだなんて知らない人には思いもよらないだろうな。でも、クラスのなかに
いるときはどちらともなく距離を置いてるって感じがするんだよな。私と初めて会っ
たとき、友美と竜之介はもう今みたいな関係だった。小さな頃の二人はどんなだった
んだろう。
「無駄だと思うけどなぁ。まあ、私これから道場に行くんだ。5時半か6時頃終わる
から、そのころ来てまだ寝てたら蹴り起こしてやるよ。」
「もうっ、竜之介くんたら。いずみちゃんお願いね。」
 友美のやつ、呆れて帰ってしまった。

 さて、終わった終わった。もうこんな時間か。竜之介のやつまだいるかなあ?
「なんだ、もう帰っちゃったのか。しかたない、私も帰ろっと。」
はぁ、まったく友美のやつ昼休みに私のことからかってたのかなあ。私が竜之介の
こと想ってるのばれちゃったかなぁ。それとも前から知ってたのか?
 それにしても、友美のやつ自分は竜之介のことどうするんだろ。高校卒業しちゃう
と、竜之介もあの家にいるとは限らないんだし。
 ・・・友美の心配をしてる場合じゃないか。私の気持ちだってあいつに。
 でも・・・。
「あーっ、やめやめ。うじうじ考えててもしかたない。そのうち竜之介を映画にでも
誘ってみよっと。」
 そういえば竜之介、前にホラー映画が好きだって言ってたっけ。
 ・・・でも私、ホラー映画だけはダメなんだよなぁ。



「いずみちゃんごめんね、こんなところまで。じゃあまた明日。」
「ううん、じゃぁ。
 さて、帰るとするか。」
 夕暮れを過ぎてあたりが薄暗くなってきた。あれから2日が過ぎた。一緒に帰って
竜之介の家、喫茶店「憩」の前を通りかかった・・・。あれ、竜之介だ。
「竜之介!!」
「あれれ、いずみじゃないか。こんなところで何やってるんだ。」
「友美と一緒に帰ってきたんだ。」
「そりゃあ友美の家は俺の家の隣だけど、一緒に帰るっていずみの家はもっと学校寄
りだろ。」
「うん、話しながら帰ってきたら、気がついたら友美の家まで来ちゃってたんだ。」
「ふーん・・・」
 竜之介のやつ、なんかニヤニヤしている。
「気味が悪いなあ。何ニヤついているんだよう。」
「心の中でいずみをほめたんだ。」
「嘘をつけ、竜之介の顔を見れば何を考えてるかだいたいわかるよ。」
「まあ、いずみがいれば友美も痴漢には襲われないだろう。」
「どういう意味だよ。」
「言葉の通りだよ。」
 こ、こいつは。私のこと女だと思って無いな。
「いつか刺してやる。」
「おいおい、それが「篠原重工社長、ご令嬢」の言う言葉か。」
「私は自分のこと、ご令嬢なんて思ってないよ。」
「そろそろ日が暮れる時間だな。」
「私も早く帰らないと痴漢に襲われちゃうかもね。」
「・・・・・」
「何とかいえよ、竜之介」
「いずみ。」
「なんだよ。」
「身長のびたか。」
「うるさい、気にしてること言うなよ。
 はぁ、いいな竜之介は。悩みがなくて。」
「人を馬鹿みたいに言うな。だいたい人のことが言えるのか。」
「私は・・・、あるよ」
「わかった、身長のことで悩んでるんだな。」
「ちがうよ!私にだって乙女チックな悩みぐらいあるんだ!!」
「自分で乙女チックって言うなよ、自分で。いずみが乙女チックって言うがらか。」
「うるさい。
 はあはあ。今から学校へ行って弓を取ってくるぞ。」

「もうこんな時間か。」
「そういえば、いずみの家は門限が厳しいんだったな。」
「門限に遅れると竹刀で素振りをさせられるんだ。
 それじゃあまた明日な、竜之介。」
「ああ、気をつけて帰れよ。」
「し、心配してくれるのか。」
「ああ、痴漢を襲うなよ。」
「おい!」

「っとに、竜之介のやつ。」
 ふふ、くだらないことだったけど、学校以外で久しぶりに竜之介と話しちゃったな。
まあ、内容はいつもとたいして変わらなかったけど・・・。それにしても竜之介なん
であんなに帰りが遅かったんだろう。友美も私もクラブ終わるの待っててくれたから、
私たちも結構遅かったのになぁ。
 ああっと、いそがないと門限にまに合わないよ。

「はあはあ。」
 ま、まにあわなかった。どうか、親父が帰っていませんように。
「行ってきました、お母様。」
「あら、いずみ遅かったわね。お父様帰ってらしてるわよ。」
「はい。」
 ・・・はぁ、なんで今日に限って親父のやつこんなに早く帰ってきてるんだよ。
「いずみです。入ります。」
「ああ。」
「ただいま帰りました。」
「遅かったな。わかっているな、後でしっかりやっておけよ。」
「はい。」
「ああ、それとだな。毎年やっている正月のパーティー、今年もお前に弓道の試技を
やってもらうからそのつもりでいてくれ。」
「はい。では、失礼します。」

『ぶん!ぶん!』
 ああ、ついてないよなあ。まあいいか、遅れたのは竜之介と話してたからだし。
 そういえば、けっこう前になるけど竜之介が私の家に忍び込んだことがあったな。
確か池の鯉を捕まえようとしてて、警備装置に見つかってサーチライトで追いまわされ
てたんだよな。何とか帰れたみたいだったけど。
 でも、私以外は竜之介ってわからなかったんだ。おかげで親父に学校とか圧力を
かけられないで済んだけど。あのときはまだ竜之介のことよく知らなかったし、ただ
びっくりしてたんだよなぁ。
 しっかし、今日は何か竜之介にいいようにからかわれてただけだったような気がす
る。・・・竜之介のやつ、絶対私のこと男友達みたいに思ってるだろうなぁ。だから、
私もあんな風に話せるんだけど。
 「ふう、終わった・・・。」
 う、もう11時を回ってる。
「もうこんな時間か。早く寝ないと明日遅刻しそうだな。さぁ、寝よっと。」



 次の日の朝、思った通り。
「ああ、やばい。遅刻する!」

「て、天道先生おはようございます。」
「おはよう、いずみ君。」

「・・・ふう。なんとか間にあった。」
 あれ、なんだ竜之介のやつ、あきらにあたってる。・・・・・。あ、芳樹を殴った。
こんどは西御寺を殴った。なにやってんだ、あいつ。
「なんだ朝からあれてるじゃないか。」
「なんだ、いずみ今来たばかりか。」
「へへへ、結局昨日門限に遅れちゃって、遅くまで素振りさせられたんだ。危なかっ
たよ。もう少しで遅刻するところだった。」
「・・・そうか。」
「あ、片桐先生が来た。じゃあな。」

 どうしたんだろう、竜之介のやつ。まぁ、朝からまた天道先生と何かあったんだろ
うけどな。しっかし、天道先生も朝からよくやるよ。
 ・・・でも、竜之介があんなにあれるなんて久しぶりだな。よっぽどな事言われた
んだろうなぁ。

 結局、1日中竜之介の機嫌は悪かった。唯の様子もなんだか変で、いつものような
明るい表情は、ほとんど見られなかった。竜之介は、いつものように居眠りしていた
のかと思えばそうでもなく、ただ、時々心配そうな眼差しで唯を見ていた・・・。



 そして次の日。
「おはよう、友美。」
「おはよう、いずみちゃん。どうしたの?きょろきょろして。」
「な、何でもないよ。」
 竜之介のやつまだ来てないみたいだなあ。ふふ、今朝は天道先生とどんなやりとり
するんだろう。窓から見てるとするか。
「友美、また後でな。」
「なんかへんねぇ、いずみちゃん。」

 ・・・・・。
 まだ来ないなあ。あ、来た!
 ・・・・・・・・・・・!!
 り、竜之介のやつ、唯と手をつないで入ってきた!・・・っていうより唯に引っ張
られてきたみたいだな。あ、天道先生をほとんど無視して入ってきた。・・・・何か
竜之介のやつきょろきょろとまわりを気にしているのか?
 何やってんだか・・・・。そうだ!
「いずみ、なに百面相やってるんだ。」
「よ、洋子。な、何でもないよ。」
 びっくりした。洋子のやつ、いつ来たんだ?・・・ん?百面相?

「おはよう、竜之介。
へへへーっ。」
「???。」
 竜之介のやつ、自分がやったことに気がついてないのかな?
「へっへっへっへっ。」
「な、なんだよ、いずみ。」
 む、無視しようとしてるな。
「へっへっへっへっ。」
「お前なぁ、俺が教室を見ようとしてるのに視界に割り込んでくるなよ。
 なんだよいずみ、頭に矢でも刺さっておかしくなったのか?」
「へっへっへっ、私見ちゃったぜ。」
「な、何を?」
「唯と腕を・・・。」
「しぃぃぃぃぃっ!!」
「3年間で初めてだ。あんな光景を見たのは。」
「しぃぃぃぃぃっ!!」
「何やってんだ竜之介。おしっこか?」
「しぃぃぃぃぃっ!!」
「おいおい、なに周りを気にしてるんだよ。」
「いずみがデンジャラスな事を言いそうだからだよ。」
「パフェでいいよ。」
「何がパフェだよ。」
「自分の家で喫茶店やってるだろ?」
「断る。俺はそういう脅しには屈しないのだ。」
「おーい、友美。」
「チ、チョコレートパフェでいいのか。」
「いや、ストロベリーパフェがいいな。
何だよその嫌そーな顔は。私でよかったんだぜ、見られたの。他の女どもに見られた
ら無条件で言いふらされてるよ。」
「確かに言いふらすかも知れないが脅す事はないと思うぞ。」
「おーい、あきら。」
「ほ、ほんとによかったよ。見られたのがいずみで。」
「うんうん、男は素直じゃないとな。素直なついでに、今の約束をちゃんとメモっと
けよ。」
「メ、メモるぅ!?」
「そうだよ、ノートの切れ端でもいいぜ。」
「ち、なんてやつだ。」
「竜之介の事だ、教科書やノートは、机の中に入れっぱなしだろ?
 早くしろよ。」
さらさらさらっ
「・・・これでいいだろ?」
「さんきゅーっ!!」

 ちょっとやりすぎたかなあ。まあこれぐらいなら竜之介も、うだうだ言わないだろ
う。だいたい、私の気持ちに気づきもしないで、唯と手をつないでなんか来る竜之介
が悪いんだ。
 それにしても明日で天道先生とのことも最後だってのに何やってんだか。昨日あれ
てたのと関係あるのかなあ。ま、何にしてもこれで冬休み中に竜之介に会う口実がで
きたし、と。あとはそれからどうするかだなあ。



 さて、今日で2学期も終わりか。終業式当日は、大抵竜之介と天道先生がひともめ
あったんだけど。
「おはようございます、天道先生。」
「はぁ・・・。」
「??」

 校門の前の天道先生何かおかしかったなあ。
「おはよう友美。竜之介のやつ来てるか?」
「ううん、まだよ。」
「いくら竜之介でも、最終日に遅刻してくるなんて事無いよなあ。」
「そんなに竜之介くんのことが心配?」
 友美のやつ、くすくす笑いながら言いやがる。
「ち、ちがうよ。」
「大丈夫でしょ。唯ちゃんもついてることだし。」
「あ、ああ。そうだな。」

 あ、来た来た。
「おめでとう、竜之介。」
「ふふん、正義は常に勝つんだ。」
 誰が正義なんだか。まあ細かいことは置いといてと。
「ところで、今日も唯と腕を組んで来たのか?」
「しぃぃぃぃぃっ!!」
「あははっ。冗談だよ。まあ、とにかく冬休みを天道先生に捧げなくてよかったな。」

 ふふふ、まにあったんだ。よかった。
 それにしても昨日のことちょっと言っただけなのに何かあわててたなあ。明日から
高校生活最後の冬休みか。ま、竜之介にストロベリーパフェおごってもらう約束がで
きたしっと。

 終業式が終わったあと私は、何となく如月町に足を向けた。今日の稽古は電話で母
さんに断ってもらった。
 如月神社。ここに来たのも久しぶりだなあ。前に来たのは秋祭りの時だったっけ。
そういえば、前に竜之介がこの近くに見晴らしのいい高台があるって言ってたなあ。
行ってみようかな。

 うわぁ、眺めがとってもきれいだ。夕暮れ時とか、夜景とか、あいつと一緒に見ら
れたらいいんだけどな・・・
「よう、いずみ。」
「り、竜之介。」
「何やってんだこんな処で?」
「ん、ちょっとな。りゅうのすけは?」
「ああ、言わなかったっけ?
 ここは、俺の一番好きな場所なんだ。」
 知ってるよ。前に聞いたのを思い出したから、ここに来てみる気になったんだ。
「ふうん、そうなんだ。
 私これから用事があるから。」
「そうか。じゃあな。」

 ふう、さて帰ろっかな。
「よろしかったらどうぞ。」
 如月駅の前でチケットを配ってた。二枚一組だったみたいだけど何のだろう。
 映画のチケットか。う、これホラー映画じゃないか。
 ・・・・・。
 どうしよう・・・。

(To Be Continued)


(1996. 5/25 sinto)

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