A Winter Book






 その言葉を残して、娘の細い体は、急に薄くぼやけてゆきました。

 まるで、闇の中に溶け込んでしまうように。


 そっと、少年にきれいな手を振って。


 「待って!」

 少年が叫んだその時、天上から、言葉が降りてきました。



 まだ月明かりが微かに残る夜空から、ひとつ、またひとつ。
 音を失って、冷たくて真白い、氷の結晶となって。

 後から、後へと、真夜中のささやかなおしゃべりのように。



 少年は、頬にあたるのも構わずに、ずっと降りてくる雪を見つめていました。

 どうしてだか、雪待鳥の少女のことを想いながら。


 雪になって舞い降りる、日々の何気ない言葉の中に交わされた、人々の想い。
 遠くに灯りがけぶる、少年の住む街に。やがて春が訪れるこの大地に。


 いつか、あまねく地上の生物達に染み透っていくように。


 音をなくして、ふわふわ、ふわふわと。










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