小人の娘は、少し小降りになってきた雨の中を、 黙って立ち尽くしていた。濡れたマントがひどく重 い。

 広場には、先程の、どこか懐かしい光景の面影は 既に無く、ただ古い鞦韆だけが、風に揺られて錆び た鎖をきしませていた。



(いったい、なんだったんだろう?)

 そんな想いに答えるものはなにもなく、ただ六月 の雨がゆっくりと時を進めるのみ。



 ここに来た目的を思い出し、娘はハーモニカを探 し始めた。それは、鞦韆の真下に、程なく見つかっ た。



(あれ、これは……。)

 娘は不思議そうに、ハーモニカを半ばほど覆って いた一枚の葉を拾い上げた。

それは、深紅に色付い た、楓の葉だった。



Fin.



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