paddle out


 やがて、夜と海が交わる東の果ての、淡いコバルトブルーの境界線に。  娘は、ずっと待っていたものを見つけました。  それは、薄明をちいさく切るような、かすかで細い、ナイフのような夜明けの月。  「あなたに会えて、よかった。」  娘は、人間の言葉を、そっと海風へと離しました。  やがて朔となり、また生まれかわる、二十七日の月に届くように。  「もう、いくね。」    夜明けに消え行く月と、幾重にも重なる波の歌に、明るく笑いかけて。  海の娘は、朝の輝きを受けてちらちらと手を振る、銀色の波の中を漕ぎ出してゆきました。    新しい、世界へと。                                      <Fin>                       Image of 『paddle out』/song by Mimori Yusa

danro