光の人






 翌日の晩、私達は、また『惑星館』へと足を運んだ。

 フィルタの調整が完了したのか、超新星の光は、夜天から消え去っていた。
 おそらく、さらに遠くの誰かに届くために、また独りで旅立っていったのだ、と思う。

 かつて、そこに恒星が存在した証を、誰かに届けるために。



 そして、あの人もまた独りで旅立ってしまっていた。

 『惑星館』の客席の中央、かつて星座を映す機械が在った場所。
 そこに、硝子のプレートが二枚、並べて置かれていた。


 一枚目は、おそらく姉宛てに残したと思われるプレートだった。

 双子、天秤、美しい女性、角の生えた古代の動物。
 開いたプレートからは、十二の星座の絵姿が、このドームの中に浮かび上がった。


 「ねえ、ばかみたいだけどね。」

 姉は、閉じたプレートを、その胸にそっと抱いて、ちょっと照れくさそうに言った。


 「私、いつかこの星座達の姿、作って残したいんだ。地上に降りてこれるようにね。」


 そしてもう一目は、約束通り、あの人が描いていたこの『惑星館』の絵。

 あの人に描かれた『惑星館』の天球には、数多の輝く星の中に、
 ただ一つの星座を機械が照らし出している。
 

 きんいろ、ぎんいろ、並んだ双つの星の、双子の星座。


 そして、その傍らに、星座と繋がるように。

 半分に欠けた、地球を廻る惑星が、優しく寄り添っていた。


 小さくて、真白くて、金色の光を照らす、「月」という名の惑星が。

                                 Fin.

挿入詞:『光の人』/zabadak より
作詞:原マスミ 作曲:吉良知彦

挿入詞:『Around The Secret』/zabadak より
作詞:覚和歌子 作曲:上野洋子

挿入詞:『星狩り』/zabadak より
作詞:覚和歌子 作曲:上野洋子





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