A Winter Book






 不意に、娘は楽器を奏でるのをやめて、ふわりと樹の根元に降り立ちました。

 夜風に、樹々の葉がさざめくような音をたてて。



 「もうすぐ、今年最後の言葉達が降りてくる。私の務めもあと一度でおしまい。」

 そっと、つぶやきを夜気に浮かべる娘。


 「もう、お帰りなさい。翼を持った娘さんが待っているから。」


 「どうして、ユキノのこと知っているの……?」
 少年は、娘の言葉に心底驚いて訊き返しました。


 そんな少年に、娘は優しく微笑んで、こう答えました。


 「だって、私は冬の間、ずっと雪を見ていたのだから。」











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